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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
18/421

◆◆◆◆ 2-8 方士セイレン ◆◆◆◆

 薄暗い通路を抜けて出た先は、


【 ホノカナ 】

「これって――」


 ホノカナは息を呑んだ。

 そこは明らかに、宮城の外だったのだ。


【 セイレン 】

「ふふふ、驚きのあまり声もないようですな!」


 セイレン、まるで自分の手柄のように胸を張っている。


【 セイレン 】

「宮城は四方の門のほかは出ることは不可能! しかもその門は夜のうちは閉ざされているとなれば、夜に市中に出向くなど無理な注文! されど――」


【 ヨスガ 】

「無駄口は大概にせよ。置いていくぞ!」


 ヨスガと、その影にように寄り添うミズキがずんずん先行する。


【 ホノカナ 】

「あ、あわわ……」


 慌てて後を追うホノカナ。

 それにしても、


【 ホノカナ 】

(夜なのに、こんなに明るいだなんて……!)


 もうとっくに夜ふけだというのに、煌々と明かりが灯っており、道を歩くのに支障はない。

 タイシンと帝都〈万寿世春ばんじゅせいしゅん〉に来たときは昼間だったし、それ以降、城から出たことはなかった。

 まるで不夜城のごとき様子に、ホノカナは感嘆しきりだった。

 いや、それ以上に、


【 ホノカナ 】

(まさか、陛下が街の中を出歩くなんて……!)


 およそありえないことだということは、ホノカナにもわかる。


【 セイレン 】

「驚きの連続で、まるで頭が回っていないようですな。いや、無理もない!」


 ホノカナに歩調を合わせながら、セイレンが話しかけてくる。


【 セイレン 】

「ですが、今はあれこれ考える必要はありません。ただただ、目の前の事態に対処するだけでよろしい。そう! “一歩一考の計”というものです」


【 ホノカナ 】

「……なるほど!」


 確かに、あれこれ考えていても仕方はなかった。


【 ホノカナ 】

「あの、アイ老師――」


【 セイレン 】

「いやいや、そんなごたいそうな! どうか私のことは、セイレンとお呼びください、リン大将軍の裔たる御方!」


【 ホノカナ 】

「え――」


 ホノカナはどきりとした。


【 ホノカナ 】

「どうして、わたしのご先祖のことを……?」


【 セイレン 】

「なに、リン氏の人々は、みなそう称しておりましょう?」


【 ホノカナ 】

「そ、それはまぁ……」


 リン大将軍――すなわち〈リン・ハルカナ〉。

 ちゅうの建国の祖である〈神祖武烈替天皇帝しんそ・ぶれつたいてんこうてい〉に仕え、その覇業を支えた功臣である。

 もっとも、いかんせん三千年も昔のことであるから、その実像は定かではないし、実在の人物かどうかすら怪しい――と見る歴史家もいるほどだ。

 リン氏は北方、なかでも峰東には珍しくない氏姓であり、ホノカナが大将軍の末裔を名乗っても、別に叱られもしないが、さほどありがたがられもしない――というのが実情である。


【 ホノカナ 】

「もしかして……アレですか? わたしが本当に大将軍の先祖かどうか、星占いとかでわかったりするんでしょうか……!?」


【 セイレン 】

「さぁ、それはどうでしょう! ……おっ、陛下たちが脇道に入っていきますよ!」


【 ホノカナ 】

「えっ? あっ……!」


 薄暗い路地へと入っていったヨスガたちを、ホノカナは泡を食って追いかけていった。

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