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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
165/421

◆◆◆◆ 6-70 燎氏の変(56) ◆◆◆◆

 そして、極龍殿の奥の間に目を向けると――


【 ミズキ 】

「――ただいま戻りました、陛下」


【 ヨスガ 】

「うむ……大儀であった」


 ミズキの一礼に、ヨスガが頷いてみせる。


【 ホノカナ 】

「女官長さま! ご無事でよかった……!」


【 ミズキ 】

「ええ……留守にしている間に、いろいろとあったようですね」


【 ヨスガ 】

「そちらこそ、な」


【 ミズキ 】

「……ところで、そちらの御仁は?」


【 ヨスガ 】

「ん? ああ、こやつはだな……」


【 ホノカナ 】

「ほら、シラクサさん、見られてますよ! 挨拶! はやく挨拶して!」


【 シラクサ 】

「あ、あわわわわ……! む、無理無理、無理ですっ……!」


 ホノカナの背後に隠れて、カタカタと震えているサツ・シラクサ。


【 ミズキ 】

「あなたは……なるほど、我影也しのびのものですね?」


【 シラクサ 】

「ひいっ! は、はっ、はいいぃぃっ……!」


【 ヨスガ 】

「いささかクセがあるが……危ういところで救ってくれた、恩人だ」


【 ミズキ 】

「そうでしたか……感謝いたします」


【 シラクサ 】

「~~~~っ、と、ととっ、とんでもないぃ……ひいぃぃ……!」


【 ミズキ 】

「……ずっとこんな感じなのですか?」


【 ホノカナ 】

「ずっとこんな感じですね……あっ、そういえば、ゼンキョクさんも一緒だったんじゃ?」


【 ミズキ 】

「ああ、あの御仁なら――」




【 ゼンキョク 】

「――いかがです? ここは……」


 アン・ゼンキョクは、ヨスガたちそっちのけで怪我人の治療に専念していた。


【 侍衛長 】

「ううううっ……!?」


【 ゼンキョク 】

「ここなら――どうです?」


【 侍衛長 】

「あっ、それ、ダメ……ひいぃんっ!?」


【 ゼンキョク 】

「折れてはいないようですね、それなら……こう……」


【 侍衛長 】

「んんんんん~~!?」


【 ゼンキョク 】

「ふふ……ふふふ……」




【 ヨスガ 】

「……愉しそうでなによりだな!」


【 ミズキ 】

「それで、他の面々は?」


【 ホノカナ 】

「……っ、それが……」


 と、話しているところへ。


【 カズサ 】

「おーーーーっほっほっほっ! 真打ちっ!! 登場ですわ~~~~っ!!!」


 渾身の高笑いとともに駆けつけたのは、セン・カズサであった。


【 ヨスガ 】

「おお――久しいな、カズサ!」


【 カズサ 】

「……あっ……はい、どうもです……」


【 ホノカナ 】

「もう力尽きてます!?」


【 カズサ 】

「仕方……ない、でしょうっ……ううっ、全身が……ひっうっ……ガタガタ……でっ……」


【 ヨスガ 】

「お、おお……大儀であったな」


【 カズサ 】

「な……なんの……これし、きっ……うふ……うふふ……も、もう……気を失って、しまいそう……」


【 ホノカナ 】

「虚勢を張る元気すらなくなってる……!?」


【 カズサ 】

「……っ、そ、そんなこと、よりっ……ランブ、大姐おねえさまをっ……!」


【 ヨスガ 】

「――――っ」


 大斧を引きずるようにして、巨躯が姿を見せた。


【 ランブ 】

「陛下――ご無事で、なによりです」


 ひざまずき、手を重ねて一礼しようとしたが……その左手は、肘から先がなかった。


【 ヨスガ 】

「――ゼンキョク!!」


【 ゼンキョク 】

「は――」


 ヨスガに呼ばれる前に、すでにゼンキョクはランブの元へ参じていた。


【 ゼンキョク 】

「ほう、これは……見事な切れ味――」


 などと感心しつつも、手際よく止血をほどこしていく。


【 ヨスガ 】

「よくぞ――」


 しばし、言葉に詰まってから。


【 ヨスガ 】

「……よくぞ、帰ってきたな」


【 ランブ 】

「は、これもすべて、カズサ殿の助太刀のおかげにて……」


【 ヨスガ 】

「うむ……見事であった、カズサ!」


【 カズサ 】

「……………………」


【 ホノカナ 】

「立ったまま失神してますー!?」

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