◆◆◆◆ 6-70 燎氏の変(56) ◆◆◆◆
そして、極龍殿の奥の間に目を向けると――
【 ミズキ 】
「――ただいま戻りました、陛下」
【 ヨスガ 】
「うむ……大儀であった」
ミズキの一礼に、ヨスガが頷いてみせる。
【 ホノカナ 】
「女官長さま! ご無事でよかった……!」
【 ミズキ 】
「ええ……留守にしている間に、いろいろとあったようですね」
【 ヨスガ 】
「そちらこそ、な」
【 ミズキ 】
「……ところで、そちらの御仁は?」
【 ヨスガ 】
「ん? ああ、こやつはだな……」
【 ホノカナ 】
「ほら、シラクサさん、見られてますよ! 挨拶! はやく挨拶して!」
【 シラクサ 】
「あ、あわわわわ……! む、無理無理、無理ですっ……!」
ホノカナの背後に隠れて、カタカタと震えている颯・シラクサ。
【 ミズキ 】
「あなたは……なるほど、我影也ですね?」
【 シラクサ 】
「ひいっ! は、はっ、はいいぃぃっ……!」
【 ヨスガ 】
「いささかクセがあるが……危ういところで救ってくれた、恩人だ」
【 ミズキ 】
「そうでしたか……感謝いたします」
【 シラクサ 】
「~~~~っ、と、ととっ、とんでもないぃ……ひいぃぃ……!」
【 ミズキ 】
「……ずっとこんな感じなのですか?」
【 ホノカナ 】
「ずっとこんな感じですね……あっ、そういえば、ゼンキョクさんも一緒だったんじゃ?」
【 ミズキ 】
「ああ、あの御仁なら――」
【 ゼンキョク 】
「――いかがです? ここは……」
晏・ゼンキョクは、ヨスガたちそっちのけで怪我人の治療に専念していた。
【 侍衛長 】
「ううううっ……!?」
【 ゼンキョク 】
「ここなら――どうです?」
【 侍衛長 】
「あっ、それ、ダメ……ひいぃんっ!?」
【 ゼンキョク 】
「折れてはいないようですね、それなら……こう……」
【 侍衛長 】
「んんんんん~~!?」
【 ゼンキョク 】
「ふふ……ふふふ……」
【 ヨスガ 】
「……愉しそうでなによりだな!」
【 ミズキ 】
「それで、他の面々は?」
【 ホノカナ 】
「……っ、それが……」
と、話しているところへ。
【 カズサ 】
「おーーーーっほっほっほっ! 真打ちっ!! 登場ですわ~~~~っ!!!」
渾身の高笑いとともに駆けつけたのは、閃・カズサであった。
【 ヨスガ 】
「おお――久しいな、カズサ!」
【 カズサ 】
「……あっ……はい、どうもです……」
【 ホノカナ 】
「もう力尽きてます!?」
【 カズサ 】
「仕方……ない、でしょうっ……ううっ、全身が……ひっうっ……ガタガタ……でっ……」
【 ヨスガ 】
「お、おお……大儀であったな」
【 カズサ 】
「な……なんの……これし、きっ……うふ……うふふ……も、もう……気を失って、しまいそう……」
【 ホノカナ 】
「虚勢を張る元気すらなくなってる……!?」
【 カズサ 】
「……っ、そ、そんなこと、よりっ……ランブ、大姐をっ……!」
【 ヨスガ 】
「――――っ」
大斧を引きずるようにして、巨躯が姿を見せた。
【 ランブ 】
「陛下――ご無事で、なによりです」
ひざまずき、手を重ねて一礼しようとしたが……その左手は、肘から先がなかった。
【 ヨスガ 】
「――ゼンキョク!!」
【 ゼンキョク 】
「は――」
ヨスガに呼ばれる前に、すでにゼンキョクはランブの元へ参じていた。
【 ゼンキョク 】
「ほう、これは……見事な切れ味――」
などと感心しつつも、手際よく止血をほどこしていく。
【 ヨスガ 】
「よくぞ――」
しばし、言葉に詰まってから。
【 ヨスガ 】
「……よくぞ、帰ってきたな」
【 ランブ 】
「は、これもすべて、カズサ殿の助太刀のおかげにて……」
【 ヨスガ 】
「うむ……見事であった、カズサ!」
【 カズサ 】
「……………………」
【 ホノカナ 】
「立ったまま失神してますー!?」
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