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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
161/421

◆◆◆◆ 6-66 燎氏の変(52) ◆◆◆◆

 ……………………


 …………


【 エキセン 】

「…………!」


 床に伏せていたエキセンが、顔を上げる。

 来るはずの爆風は抑えられていた。

 なぜならば――


【 エキセン 】

「っ! これは――」


 通路一杯を、なにかが埋め尽くしていた。


【 エキセン 】

「……っ、本……!?」


 そう、エキセンを爆発からかばったのは、数知れない書物で埋め尽くされた、本棚であった。

 よほど強固に補強されているらしく、あれだけの爆風を受けてなお、びくともしていない。

 あっけに取られるエキセンの耳に、声が響く。


【 セイレン 】

『聞こえますか……エキセン殿……聞こえますか……』


【 エキセン 】

「セイレン殿っ……!? これは、いったい……?」


【 セイレン 】

『先日、わけあって本にされたことがありまして……その感覚が、まだ残っていたのです……』


【 エキセン 】

「……本に、された……?」


【 セイレン 】

『そこで、本へと変化へんげして、防ぐことにしました……』


【 エキセン 】

「……????」


 賢明なる読者は、覚えておられることであろう。

 セイレンが書肆〈無限書廊むげんしょろう〉において礼を失したがために、罰として書物にされてしまった一幕(5-8 無限書廊)を。


【 セイレン 】

『どうやら……うまく、いったようですね……』


【 エキセン 】

「あ、ああ……助かったっ……こんな術を、使えたのだな……!」


【 セイレン 】

『いえ……ぶっちゃけ、ぶっつけ本番でした……うまくいって、なによりです……』


【 エキセン 】

「…………」


【 エキセン 】

「と、とにかく……そろそろ、元に戻ってはどうだ?」


【 セイレン 】

『ふふ……戻りたいのは、やまやまですけれど……』


【 セイレン 】

『……なにせぶっつけだったので、戻り方が……わかりません……!』


【 エキセン 】

「…………」


【 セイレン 】

『というわけで……しばらく戻れそうにありません……後のことは、お任せします……!』


【 エキセン 】

「……お、おう……心得たっ……」




【 セイレン 】

『…………』


 エキセンが、地上へと駆け去った後……


【 セイレン 】

『やれやれ……ようやく決着かと思えば……』


【 蟲のような異形 】

「……ギ……イイ……!!」


 耳障りな呻き声が通路に響く。

 爆発四散したはずの絡繰りが、他の絡繰りの残骸と融合し、再起動していたのだ。


【 セイレン 】

『一難去ってまた一難……やれやれ、やはり……こうなるさだめだったようです……!』


 本棚が、淡い輝きを放ち始める。

 それは先ほど果たせなかった、セイレンの自爆術――


【 セイレン 】

『おお……陛下……どうか、ご武運を! どうかときどき、私のことを思い出してください――そして困ったときには、「ああ、こんなとき、あの大軍師セイレンがいてくれたら!」と嘆いてもらえると、ちょっと嬉しいです……!』


【 セイレン 】

『それから、ホノカナ殿、あなたはもっと、自分を――』


【 セイレン 】

『――――っ!』


【 蟲のような異形 】

「グギィィ……!?」


 まばゆい光が、通路を満たした――

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