◆◆◆◆ 6-66 燎氏の変(52) ◆◆◆◆
……………………
…………
【 エキセン 】
「…………!」
床に伏せていたエキセンが、顔を上げる。
来るはずの爆風は抑えられていた。
なぜならば――
【 エキセン 】
「っ! これは――」
通路一杯を、なにかが埋め尽くしていた。
【 エキセン 】
「……っ、本……!?」
そう、エキセンを爆発から庇ったのは、数知れない書物で埋め尽くされた、本棚であった。
よほど強固に補強されているらしく、あれだけの爆風を受けてなお、びくともしていない。
あっけに取られるエキセンの耳に、声が響く。
【 セイレン 】
『聞こえますか……エキセン殿……聞こえますか……』
【 エキセン 】
「セイレン殿っ……!? これは、いったい……?」
【 セイレン 】
『先日、わけあって本にされたことがありまして……その感覚が、まだ残っていたのです……』
【 エキセン 】
「……本に、された……?」
【 セイレン 】
『そこで、本へと変化して、防ぐことにしました……』
【 エキセン 】
「……????」
賢明なる読者は、覚えておられることであろう。
セイレンが書肆〈無限書廊〉において礼を失したがために、罰として書物にされてしまった一幕(5-8 無限書廊)を。
【 セイレン 】
『どうやら……うまく、いったようですね……』
【 エキセン 】
「あ、ああ……助かったっ……こんな術を、使えたのだな……!」
【 セイレン 】
『いえ……ぶっちゃけ、ぶっつけ本番でした……うまくいって、なによりです……』
【 エキセン 】
「…………」
【 エキセン 】
「と、とにかく……そろそろ、元に戻ってはどうだ?」
【 セイレン 】
『ふふ……戻りたいのは、やまやまですけれど……』
【 セイレン 】
『……なにせぶっつけだったので、戻り方が……わかりません……!』
【 エキセン 】
「…………」
【 セイレン 】
『というわけで……しばらく戻れそうにありません……後のことは、お任せします……!』
【 エキセン 】
「……お、おう……心得たっ……」
【 セイレン 】
『…………』
エキセンが、地上へと駆け去った後……
【 セイレン 】
『やれやれ……ようやく決着かと思えば……』
【 蟲のような異形 】
「……ギ……イイ……!!」
耳障りな呻き声が通路に響く。
爆発四散したはずの絡繰りが、他の絡繰りの残骸と融合し、再起動していたのだ。
【 セイレン 】
『一難去ってまた一難……やれやれ、やはり……こうなるさだめだったようです……!』
本棚が、淡い輝きを放ち始める。
それは先ほど果たせなかった、セイレンの自爆術――
【 セイレン 】
『おお……陛下……どうか、ご武運を! どうかときどき、私のことを思い出してください――そして困ったときには、「ああ、こんなとき、あの大軍師セイレンがいてくれたら!」と嘆いてもらえると、ちょっと嬉しいです……!』
【 セイレン 】
『それから、ホノカナ殿、あなたはもっと、自分を――』
【 セイレン 】
『――――っ!』
【 蟲のような異形 】
「グギィィ……!?」
まばゆい光が、通路を満たした――
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