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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
155/421

◆◆◆◆ 6-60 燎氏の変(46) ◆◆◆◆

【 戮仙劔君 】

「なるほど――な。先の太刀は、き餌であったか」


 ポタ……ポタ……と血が滴り落ちている。


【 ランブ 】

「……一瞬でも、貴様の動きを止めてくれれば、それでよかった」


 カズサがそれを果たすと信じて、ランブは投擲とうてきの体勢に入っていたのである。


【 戮仙劔君 】

「そこまで――この者に、信を置いたというのか?」


 力尽き、地に伏しているカズサに目を向ける。


【 ランブ 】

「…………」


 カズサが作った、ただ一瞬の好機。

 それに賭けて、ランブは腕が折れんばかりの勢いで斧を投げつけた。

 そして――


【 戮仙劔君 】

「フフ――借りを、返されたな」


 地に転がる、匕首を握った腕を見やって、薄笑いを浮かべている。

 そう、カズサとランブの連携は、見事、戮仙劔君の右腕を切り飛ばしたのだった。


【 戮仙劔君 】

「見事な――見事なものよ。冥府あのよから戻ってきた甲斐があったというものだ。なぁ、ひょうよ!」


 ふたたび背中に収めた太刀に呼びかけるその声は、無邪気なまでの悦びにあふれていた。


【 戮仙劔君 】

「さて――手負い同士、ここからが本番、と言いたいところだが……」


【 ランブ 】

「…………っ!?」


 ランブは目を疑った。

 切断された戮仙劔君の腕が、溶け始めていたのである。


【 戮仙劔君 】

「――どうやら、ここまでのようだ。ちと、きょうが乗り過ぎたとみえる――なにせ、病み上がりならぬ、死に上がりゆえな」


 見れば、落ちた腕のみならず、戮仙劔君の全身が、徐々に溶け崩れている。


【 戮仙劔君 】

「愉しかったぞ、ランブ! カズサにも伝えておくがよい。ぜひ、また真剣勝負と洒落込もう、とな――」


 戮仙劔君は木履きぐつを履くと、そのままきびすを返した。


【 ランブ 】

「どこへ――」


【 戮仙劔君 】

「なに、案ずるな。黄泉よみから舞い戻ったオレにも、帰る場所くらいは――ある――」


【 ランブ 】

「……貴公の、雇い主はっ……!」


【 戮仙劔君 】

「言ったであろう? オレにも浮世の義理があるとな――ではさらば! その匕首、くれてやろう――なかなかの業物わざものぞ――」


 ……カラン……カラン……カラ……


 木履きぐつの軽やかな音が、次第に遠ざかっていく。


【 ランブ 】

「……はあっ、はぁっ……ああっ……」


 さしもの豪勇ランブも、その場に膝をついた。


【 ランブ 】

「カズサ殿っ……無事……か?」


【 カズサ 】

「え、ぇぇ……ぶ……じ、で……す、と、もぉぉ……」


 地面に突っ伏したカズサが、息も絶え絶えに返答する。

 その身は無傷であったが、


【 カズサ 】

「い、いだい……からだじゅうが……いだいい……」


 限界を超えた動きの代償に、全身が悲鳴を上げているのだった。


【 ランブ 】

「……そのまま、休んでいてくれ」


 ランブは苦悶の表情を浮かべつつも立ち上がり、斧を拾い上げる。


【 ランブ 】

「私は……行かねばならぬ……陛下の、もとへ……!」


【 カズサ 】

「ぞ、ぞれはっ……わだしも……いっじょ……でずっ……!」


 強烈な痛みに襲われながらも、必死の形相で身を起こすカズサ。


【 ランブ 】

「うむ……ならば……ともに」


【 カズサ 】

「はい゛っ……う゛ううっ……息するだけで……いだいいぃ……」


 かくして、極龍殿正門の戦いは、終わりを告げたのだった――

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