◆◆◆◆ 6-57 燎氏の変(43) ◆◆◆◆
【 ヨスガ 】
「……らちが明かんな。では――こうしよう。このホノカナを我の名代とする。そう心得てこやつに接せよ。それならよかろう?」
【 我影也? 】
「は、ははっ、はいいいっ……!」
【 ヨスガ 】
「まずは名を尋ねてみよ」
【 ホノカナ 】
「あっ、はい、え~っと……あなたはいったい、どなたなんですか?」
【 我影也? 】
「……は、当方の名は〈颯・シラクサ〉。颯氏の一門にて――」
【 ヨスガ 】
「ほう、颯氏の者だったか! まだ生き延びていたとはな……!」
【 ホノカナ 】
「え、え~っと……すみません、そんなに有名なんですか?」
【 ヨスガ 】
「いや、表向きにはほとんど知られてはおらぬ。なにせ、忍びの者ゆえな」
【 ヨスガ 】
「神祖以来、代々帝室に仕えていたものの、いつしか姿を消したと聞いていたが……?」
【 ホノカナ 】
「……そこのところ、どうなんですか?」
【 シラクサ 】
「は――我が一族は、一時的に職を解かれたこともございましたが、ここ数百年はふたたび帝室の隠密としてお仕えしてまいりました」
【 シラクサ 】
「一族の中で、特に手練れの者が宮城に潜み、あらゆることに耳を澄ませ、天子様をお守りしております。その存在を知るのは、ただ代々の天子様のみにて――」
【 ヨスガ 】
「……そういうことか。皇帝とは直接接触しない、というのがそなたたちの掟なのだな?」
【 ホノカナ 】
「……どうなんですか?」
【 シラクサ 】
「は――いえ、そのようなことは、特になく……」
【 ヨスガ 】
「はあっ? どういうことだっ?」
【 ホノカナ 】
「ど、どういうことなんですか?」
【 シラクサ 】
「その――当方、幼き頃より人里離れた山中にて修行に明け暮れたせいか、すこぶる人見知りでありまして、陛下と直接言葉を交わすなど、思いもよらず――」
【 ヨスガ 】
「……そっ、そう……か」
脱力した様子のヨスガ。
怒る気もなくしたという風情である。
【 ホノカナ 】
「……あれっ? でも、わたしとは普通に話せてる……というか、むしろ上から目線ですけど……?」
【 シラクサ 】
「確かに……身内以外では、およそありえぬこと。恐らくは、人としての魂の位に差があるがゆえに、緊張もせぬのかと――」
【 ホノカナ 】
「はあああぁ~~っ!?」
【 ヨスガ 】
「……まぁ、そんなことはさておき」
【 ホノカナ 】
「そんなことって何ですか~!?」
【 ヨスガ 】
「文句はのちほどたっぷり聞かせてやれ! それより、他の者たちの様子はどうなっておる?」
【 シラクサ 】
「――――っ」
シラクサは耳をそばだてて、各所の様子を探る――
ブックマーク、ご感想、ご評価いただけると嬉しいです!




