◆◆◆◆ 6-56 燎氏の変(42) ◆◆◆◆
【 ホノカナ 】
「……っ!? こ、これって……」
陸の仙を一蹴した我影也であったが、その身から白い煙が上がり、ホノカナたちを困惑させていた。
【 ヨスガ 】
「燃えている……わけではないな。これは――」
【 我影也 】
「…………っ」
しばしののち、煙が晴れると……
【 ホノカナ 】
「あっ……あれっ!?」
【 我影也? 】
「……はぁっ、ふぅっ、ふぅぅ……」
そこにうずくまっているのは、小柄な少年であった。
背はヨスガよりも低く、年のころは十二、三というところか。
【 ホノカナ 】
「ちっちゃくなってる!? 甲冑もなくなって……これって、いったい……?」
【 ヨスガ 】
「ふむ、先ほどの姿は仮初のもの、といったところか。そなた――」
【 我影也? 】
「……ひっ、うっ……!」
ヨスガに声をかけられた少年はビクリと身を震わせると、パッと飛びすさり、深々と平伏する。
【 我影也? 】
「し、失礼、いたしましたっ、失礼いたしましたっ……! ぼ、ぼくは、本当に、未熟でっ……申し訳ございません!」
何度も頭を下げる姿に、ヨスガもホノカナも呆気にとられてしまう。
【 ヨスガ 】
「いや……詫びることはない。そなたは我らを救ってくれたのだからな。我が知りたいのは――」
【 我影也? 】
「も、もったいない、もったいないお言葉……あわ、わわ、あわわ……!」
すっかり縮こまり、頭も上げられない有り様である。
【 ホノカナ 】
「そ、そんなに緊張しなくても……確かに陛下は威圧感があって態度が大きくて、ちょっとした混世魔王ですけど、取って食べたりはしませんよ?」
【 ヨスガ 】
「はぁ~っ? 誰が混世魔王だっ!」
【 我影也? 】
「も、申し訳ございませんっ! 大変、申し訳なくっ……!」
【 ヨスガ 】
「そなたに怒っているのではないっ!」
【 我影也? 】
「~~~~っ! は、はいぃぃ……申し訳ございません……!」
ぺこぺこと頭を下げるばかりで、まるで会話にならない。
【 ヨスガ 】
「むむむ……仕方ない、おい愚妹よ、そなたが話してみるがよい」
【 ホノカナ 】
「はぁ……でも、この調子だと、わたしでも無理そうですけど……えっと、あの、大丈夫ですか……?」
【 我影也? 】
「…………」
【 ホノカナ 】
「? あの……聞こえて、ます?」
【 我影也? 】
「――当方は帝室に使える者。庶人と交わす言葉はござらん」
少年は顔を上げると、先ほどまでの動揺ぶりはどこへやら、そっけなく応じてみせた。
【 ホノカナ 】
「は、はぁ~っ!? 確かにわたしは庶人ですけどぉっ! 陛下に対する態度と違い過ぎません!?」
【 我影也? 】
「当方の身は帝室に捧げたものなれば、それ以外はすべて些事なり――」
淡々と返す姿は年齢以上に大人びていて、ある種の威厳すら感じさせるものがある。
【 ヨスガ 】
「では、我の問いには答えてくれような?」
【 我影也? 】
「~~~~っ、も、もったいないっ、ぼ、ぼくのような未熟者が、陛下と直接言葉を交わすなどっ……ふわわわわ!!」
うってかわって、顔を伏せて小刻みに震えてしまっている。
【 ホノカナ 】
「この人、極端すぎるんですけどぉ!?」
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