◆◆◆◆ 6-54 燎氏の変(40) ◆◆◆◆
【 侍衛 】
「くっ……よくも虹侍衛長をっ!」
憤怒に駆られた侍衛が、仇討ちとばかりに突っ込んでゆく――が、
【 参の仙 】
「ふ――」
――ドカッ!
【 侍衛 】
「くはっ……!?」
渾身の一撃をあっさり躱され、回し蹴りの一閃であえなく返り討ちにされてしまう。
【 侍衛たち 】
「…………っ!」
予想だにしない方士の手並みに、浮き足立つ侍衛たち。
【 ホノカナ 】
(あ、あんなに強いなんて……!?)
ホノカナもまた絶句するが、そんな中で、
【 ヨスガ 】
「怯むな! 集結し、防御に専念せよ!」
【 侍衛たち 】
「……っ、ははっ……!」
ヨスガの一喝で侍衛たちは統率を取り戻し、密集隊形を取る。
【 参の仙 】
「ちいっ……味な真似をっ!」
立て続けに包囲陣へ蹴りを見舞っていく。
――ズドッ! メキャッ……!
【 侍衛たち 】
「……っ、くうっ……!」
勢いに任せて、一気に突き崩そうとした参の仙であるが、装備を固めた侍衛が守りに徹すれば、これはそう簡単に突破できるものではない。
【 参の仙 】
「ええいっ、小賢しいっ……!」
【 陸の仙 】
「フム……」
【 ホノカナ 】
「ぁ、あああっ……」
【 ヨスガ 】
「……なるほど、そういうことか」
【 ホノカナ 】
「えっ? な、なにが、どういうことなんですかっ?」
【 ヨスガ 】
「(そなた、〈空刀〉は使えるようになったのだろう?)」
小声で囁きかけてくる。
【 ホノカナ 】
「(あっ……は、はい、でも、威力は全然ですけどっ……)」
ミズキとの猛特訓の末、ホノカナは空刀をほんの少しだけ、使えるようになっていた。
先ほど女官の宿舎を脱出するさい、明かりを消して周りを混乱させたのはその一例であった。
もっとも、その破壊力たるや本家には遠く及ばないもので、殺傷力は皆無であり、せいぜい小さなものを動かす程度が関の山。
【 ヨスガ 】
「(それでよい――あそこに、花瓶があるな? あれを床に落とせ!)」
ヨスガが、部屋の奥にある花瓶を指す。
【 ホノカナ 】
「(わ――わかりましたっ!)」
なぜそんなことを――と、迷うこともなく、
【 ホノカナ 】
「ぬぬぬっ……ぬうっ! ぬう~~んっ!」
――カシャァン!
十二佳仙たちの背後で花瓶が倒れ、床に落下して砕けた。
【 陸の仙 】
「――――っ」
その音にビクリと身を震わせ、背後に目をやる陸の仙。
【 参の仙 】
「…………!」
と同時に、参の仙の方も、なにやら動きが鈍った。
【 ヨスガ 】
「好機だ――かかれっ!」
【 侍衛たち 】
「はっ!」
――ドドドッ!!
【 参の仙 】
「ぐっ!? はっ……ぐああっ……!」
侍衛たちに一斉に打ちかかられて、参の仙はあっけなく床に倒れ伏した。
【 陸の仙 】
「…………っ!」
【 ホノカナ 】
「ええっ!? ど、どうしてっ……?」
予期せぬに事態に、ホノカナは目をパチパチとしばたたかせるばかり。
【 ヨスガ 】
「後ろのあやつの方が、“本命”だったというわけだ」
参の仙は、陸の仙から強化の方術で援護されていたのだ。
陸の仙の集中が途切れたため、術が乱れ、その隙を突かれた……という次第。
【 ホノカナ 】
「でも……どうしてわかったんですっ?」
【 ヨスガ 】
「ふん、あれほどの使い手にしては、足さばきがだいぶ怪しかったのでな。なにか仕掛けがあるのだろうと見たまでのことよ」
【 陸の仙 】
「…………」
【 侍衛たち 】
「ここまでだ! 手向かいするならば――」
術を破られて参の仙が倒れ、ここまでかと思いきや……
【 陸の仙 】
「――ククッ――」
――ドカッ! バキィッ!!
【 侍衛たち 】
「ぐうっ……あああっ!?」
ゆらりと踏み出した陸の仙の放った拳と蹴りで、次々と倒れる侍衛たち。
【 ホノカナ 】
「!? え、えええっ!?」
【 ヨスガ 】
「む――」
【 陸の仙 】
「クク……ククク……この私が、自分では戦えないとでも?」
油断のない足さばきで、せせら笑う陸の仙。
【 陸の仙 】
「これぞ、流派〈燃家拳〉――方術と武術を融合させた妙技なり!」
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