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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
149/421

◆◆◆◆ 6-54 燎氏の変(40) ◆◆◆◆

【 侍衛 】

「くっ……よくもコウ侍衛長をっ!」


 憤怒に駆られた侍衛が、仇討ちとばかりに突っ込んでゆく――が、


【 さんの仙 】

「ふ――」


 ――ドカッ!


【 侍衛 】

「くはっ……!?」


 渾身の一撃をあっさりかわされ、回し蹴りの一閃であえなく返り討ちにされてしまう。


【 侍衛たち 】

「…………っ!」


 予想だにしない方士の手並みに、浮き足立つ侍衛たち。


【 ホノカナ 】

(あ、あんなに強いなんて……!?)


 ホノカナもまた絶句するが、そんな中で、


【 ヨスガ 】

ひるむな! 集結し、防御に専念せよ!」


【 侍衛たち 】

「……っ、ははっ……!」


 ヨスガの一喝で侍衛たちは統率を取り戻し、密集隊形を取る。


【 さんの仙 】

「ちいっ……味な真似をっ!」


 立て続けに包囲陣へ蹴りを見舞っていく。


 ――ズドッ! メキャッ……!


【 侍衛たち 】

「……っ、くうっ……!」


 勢いに任せて、一気に突き崩そうとしたさんの仙であるが、装備を固めた侍衛が守りに徹すれば、これはそう簡単に突破できるものではない。


【 さんの仙 】

「ええいっ、小賢しいっ……!」


【 ろくの仙 】

「フム……」


【 ホノカナ 】

「ぁ、あああっ……」


【 ヨスガ 】

「……なるほど、そういうことか」


【 ホノカナ 】

「えっ? な、なにが、どういうことなんですかっ?」


【 ヨスガ 】

「(そなた、〈空刀そらがたな〉は使えるようになったのだろう?)」


 小声で囁きかけてくる。


【 ホノカナ 】

「(あっ……は、はい、でも、威力は全然ですけどっ……)」


 ミズキとの猛特訓の末、ホノカナは空刀をほんの少しだけ、使えるようになっていた。

 先ほど女官の宿舎を脱出するさい、明かりを消して周りを混乱させたのはその一例であった。

 もっとも、その破壊力たるや本家には遠く及ばないもので、殺傷力は皆無であり、せいぜい小さなものを動かす程度が関の山。


【 ヨスガ 】

「(それでよい――あそこに、花瓶があるな? あれを床に落とせ!)」


 ヨスガが、部屋の奥にある花瓶を指す。


【 ホノカナ 】

「(わ――わかりましたっ!)」


 なぜそんなことを――と、迷うこともなく、


【 ホノカナ 】

「ぬぬぬっ……ぬうっ! ぬう~~んっ!」


 ――カシャァン!


 十二佳仙たちの背後で花瓶が倒れ、床に落下して砕けた。


【 ろくの仙 】

「――――っ」


 その音にビクリと身を震わせ、背後に目をやるろくの仙。


【 さんの仙 】

「…………!」


 と同時に、さんの仙の方も、なにやら動きが鈍った。


【 ヨスガ 】

「好機だ――かかれっ!」


【 侍衛たち 】

「はっ!」


 ――ドドドッ!!


【 さんの仙 】

「ぐっ!? はっ……ぐああっ……!」


 侍衛たちに一斉に打ちかかられて、さんの仙はあっけなく床に倒れ伏した。


【 ろくの仙 】

「…………っ!」


【 ホノカナ 】

「ええっ!? ど、どうしてっ……?」


 予期せぬに事態に、ホノカナは目をパチパチとしばたたかせるばかり。


【 ヨスガ 】

「後ろのあやつの方が、“本命”だったというわけだ」


 さんの仙は、ろくの仙から強化の方術で援護されていたのだ。

 ろくの仙の集中が途切れたため、術が乱れ、その隙を突かれた……という次第。


【 ホノカナ 】

「でも……どうしてわかったんですっ?」


【 ヨスガ 】

「ふん、あれほどの使い手にしては、足さばきがだいぶ怪しかったのでな。なにか仕掛けがあるのだろうと見たまでのことよ」


【 ろくの仙 】

「…………」


【 侍衛たち 】

「ここまでだ! 手向かいするならば――」


 術を破られてさんの仙が倒れ、ここまでかと思いきや……


【 ろくの仙 】

「――ククッ――」


 ――ドカッ! バキィッ!!


【 侍衛たち 】

「ぐうっ……あああっ!?」


 ゆらりと踏み出したろくの仙の放った拳と蹴りで、次々と倒れる侍衛たち。


【 ホノカナ 】

「!? え、えええっ!?」


【 ヨスガ 】

「む――」


【 ろくの仙 】

「クク……ククク……この私が、自分では戦えないとでも?」


 油断のない足さばきで、せせら笑うろくの仙。


【 ろくの仙 】

「これぞ、流派〈燃家拳ねんかけん〉――方術と武術を融合させた妙技なり!」

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