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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
147/421

◆◆◆◆ 6-52 燎氏の変(38) ◆◆◆◆

【 シジョウ 】

「うぬ……〈木偶でく〉が足止めされるとはな」


 〈遠見とおみ〉の術で地下の様子を探りつつ、シジョウは顔をしかめた。


【 他の十二佳仙 】

「い、いかがいたしましょう、黄龍コウリュウ老師っ……?」


 思いもよらぬ成り行きに、部下たちは狼狽を隠せずにいる。


【 シジョウ 】

「――っ、ここまで来て臆するでない……! 腹をくくれ! ことが為らねば、我らは族滅ぞくめつぞ……!」

 *族滅……一族皆殺しの意。


【 他の十二佳仙 】

「は、ははっ……!」


【 シジョウ 】

「いささか予定は狂ったが……これだけ宮城の結界が乱れれば、容易であろう。直接、手駒を送り込むべし」


【 他の十二佳仙 】

「では……?」


【 シジョウ 】

「うむ――〈千里行せんりこう〉を使う。支度はよいか?」


 シジョウの言葉に、二人の方士が進み出た。

 その覆面には、『さん』と『ろく』の数字が描かれている。


【 長身の方士 】

「は――支度は、万全にて」


【 小柄な方士 】

「必ずや、〈ぎょく〉をこの手に……!」


【 シジョウ 】

「うむ……これにて片をつける。ぬかるなよ」


【 二人の方士 】

「は――」


 恭しく一礼すると、両者は床に描かれた太極図に乗る。


【 シジョウ 】

「されば――ゆけい!」


 シジョウたちが印を結び、方術を発動させる。

 と、二人の姿は、その場から一瞬にして掻き消えた――




【 侍衛長 】

「どうかご安心ください! 我ら、ランブ様に代わり、陛下とホノカナ殿をお守りいたします!」


 そう意気込む侍衛長(厳密に言えば侍衛長はランブであるから、正しくは侍衛長代理)。

 彼女たちはランブ直属の部下であり、その多くはランブの父・ジンブが率いていた私兵の縁者で、いずれもランブほどではないにせよ、歴戦の精鋭ぞろいである。


【 侍衛長 】

「ランブ様には及びもつきませんが、我が身に代えても!」


 ランブ愛用の巨大な斧ではなく、両手にまさかりを構え、胸を張っている。


【 ホノカナ 】

「(す、すごく頼もしいですね、ヨスガ姉さま……!)」


【 ヨスガ 】

「(……いささか猪突猛進な面があるがな)」


 小声で囁き合うふたり。


【 ヨスガ 】

「……しかし、気に入らんな」


【 ホノカナ 】

「えっ? ま、まだ、遅れたこと怒ってるんですか……?」


【 ヨスガ 】

「たわけ、そうではない。十二佳仙の襲撃については、もとより予想していた。その他の刺客も、あるいは……と想定の内にあったことだ」


【 ヨスガ 】

「だが……それ以外の意思を感じる。まるで、誰かに試されているかのような……実に、気に入らん」


【 ヨスガ 】

「……そなた、なにか心当たりはないか?」


【 ホノカナ 】

「えっ? わたしですか? いえ、わたしは――」


 ――皇帝陛下を――


 ――きみの、その手で――

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