◆◆◆◆ 6-52 燎氏の変(38) ◆◆◆◆
【 シジョウ 】
「うぬ……〈木偶〉が足止めされるとはな」
〈遠見〉の術で地下の様子を探りつつ、シジョウは顔をしかめた。
【 他の十二佳仙 】
「い、いかがいたしましょう、黄龍老師っ……?」
思いもよらぬ成り行きに、部下たちは狼狽を隠せずにいる。
【 シジョウ 】
「――っ、ここまで来て臆するでない……! 腹を括れ! ことが為らねば、我らは族滅ぞ……!」
*族滅……一族皆殺しの意。
【 他の十二佳仙 】
「は、ははっ……!」
【 シジョウ 】
「いささか予定は狂ったが……これだけ宮城の結界が乱れれば、容易であろう。直接、手駒を送り込むべし」
【 他の十二佳仙 】
「では……?」
【 シジョウ 】
「うむ――〈千里行〉を使う。支度はよいか?」
シジョウの言葉に、二人の方士が進み出た。
その覆面には、『参』と『陸』の数字が描かれている。
【 長身の方士 】
「は――支度は、万全にて」
【 小柄な方士 】
「必ずや、〈玉〉をこの手に……!」
【 シジョウ 】
「うむ……これにて片をつける。ぬかるなよ」
【 二人の方士 】
「は――」
恭しく一礼すると、両者は床に描かれた太極図に乗る。
【 シジョウ 】
「されば――ゆけい!」
シジョウたちが印を結び、方術を発動させる。
と、二人の姿は、その場から一瞬にして掻き消えた――
【 侍衛長 】
「どうかご安心ください! 我ら、ランブ様に代わり、陛下とホノカナ殿をお守りいたします!」
そう意気込む侍衛長(厳密に言えば侍衛長はランブであるから、正しくは侍衛長代理)。
彼女たちはランブ直属の部下であり、その多くはランブの父・ジンブが率いていた私兵の縁者で、いずれもランブほどではないにせよ、歴戦の精鋭ぞろいである。
【 侍衛長 】
「ランブ様には及びもつきませんが、我が身に代えても!」
ランブ愛用の巨大な斧ではなく、両手に鉞を構え、胸を張っている。
【 ホノカナ 】
「(す、すごく頼もしいですね、ヨスガ姉さま……!)」
【 ヨスガ 】
「(……いささか猪突猛進な面があるがな)」
小声で囁き合うふたり。
【 ヨスガ 】
「……しかし、気に入らんな」
【 ホノカナ 】
「えっ? ま、まだ、遅れたこと怒ってるんですか……?」
【 ヨスガ 】
「たわけ、そうではない。十二佳仙の襲撃については、もとより予想していた。その他の刺客も、あるいは……と想定の内にあったことだ」
【 ヨスガ 】
「だが……それ以外の意思を感じる。まるで、誰かに試されているかのような……実に、気に入らん」
【 ヨスガ 】
「……そなた、なにか心当たりはないか?」
【 ホノカナ 】
「えっ? わたしですか? いえ、わたしは――」
――皇帝陛下を――
――きみの、その手で――
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