◆◆◆◆ 6-47 燎氏の変(33) ◆◆◆◆
【 ヒエン 】
「どこか、行く当てはあるのかよ?」
【 セイレン 】
「さぁ、どうでしょう。あるかもしれないし、ないかもしれませんねえ! まあ、自分探しの旅と洒落込むことにしましょう!」
【 ジンマ 】
「……これが永の別れかもしれぬゆえ、正直なことを言おう」
【 セイレン 】
「おや、やはり引き留めたくなりましたか? それも道理ですが!」
【 ジンマ 】
「いや、案ずるな。引き留める気はまったくない」
【 セイレン 】
「まったく!?」
【 ジンマ 】
「思えばセイジュの兄者は、お主をとても買っていた。だが……俺には、お主の凄さがわからぬ」
【 ショウキ 】
「奇遇だね。あたしもまるでわからん」
【 ヒエン 】
「ああ、俺もさっぱりわからねェよ」
【 セイレン 】
「急に一致団結しないでくれますかね!?」
【 セイレン 】
「……いやしかし、それは是非もないこと! 私は天衣無縫の大才ゆえ、使いこなせるのは明殿のごとき、類まれな大人のみなのです。皆さまも、もちろん大器ではありますがね!」
【 ジンマ 】
「……確かに、そういうものかもしれぬ。ゆえに、引き留めはせん。達者でな」
【 セイレン 】
「ええ、皆さまも! 次にお会いするときは、敵同士……ということにならねばいいのですがね! それでは、これにて御免! どうかご壮健で――」
言いたいことを言って、そのままセイレンは捧武庁を出ていった。
三人はしばし呆気に取られていたが、
【 ヒエン 】
「……ふん、最後の最後に、ためになることを言い残していったじゃねェか。そうだな、自分の道は、自分で選ばねェとな」
【 ショウキ 】
「あんたも、離れるつもりかい?」
【 ヒエン 】
「ああ、そうさせてもらう。それとも、引き留めるかい?」
【 ショウキ 】
「いいや。かくいうあたしも、離れようと思ってたところでね」
【 ヒエン 】
「おやおや、やっぱりそういう魂胆かよ。ちなみにだが……」
【 ジンマ 】
「……俺は、ここに残る。お主らは、好きにするがいい」
【 ヒエン 】
「だろうな。だったら、残ってる金や食糧は、三等分でいいな?」
【 ショウキ 】
「ああ。そういえば――」
バン! という音と共に扉が開いた。
【 三人 】
「――――っ?」
【 セイレン 】
「す、すみませんっ! あの~っ……路銀、分けてもらってもいいですかねぇ……?」
【 ショウキ 】
「…………」
【 ヒエン 】
「…………」
【 ジンマ 】
「…………」
ともあれ、この後。
烈・ショウキは、徒党を引き連れ峰北へと去り、〈北寇〉と称されるにいたった。
一方、進・ヒエンもまた、同志とともに山北へ向かい、〈西寇〉とうたわれた。
そして雷・ジンマは、残った仲間とともに交龍に割拠し、〈東寇〉と呼ばれることになったのである。
後世の歴史家は、本件についてこう述べることになる――
――明・セイジュの没後、地母会の残党はごく平和的に三勢力へと分裂したが、ことはそう簡単なものではなかった。
烈、進、雷の三者の力関係はほぼ互角であり、内訌を起こして争い合ったあげく、共倒れになっていてもおかしくはなかったのである。
彼らとて、もはや同じ道を歩くことはできず、分かれるべきだとは思ってはいたが、面子や義理もあり、易々とは切り出せなかった。
しかし、先んじて藍・セイレンが退去したことで、思った以上にすんなりと分かれることができたのである。
これは、地母会におけるセイレンの最大にして、唯一の功績であったかもしれない――
――以上、回想終わり。
【 セイレン 】
「えええっ!? 窮地って、路銀分けてもらいにいったときの話!? 確かに、だいぶ気まずかったけどっ!」
【 セイレン 】
「そもそも、私の回想短すぎません!? おまけに私の出番あんまりなかったじゃないですかぁぁぁ~っ!!」
【 異形の刺客 】
「――――っ」
【 セイレン 】
「~~~~っ!?」
絡繰り仕掛けの魔の手が、セイレンに迫る――
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