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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
142/421

◆◆◆◆ 6-47 燎氏の変(33) ◆◆◆◆

【 ヒエン 】

「どこか、行く当てはあるのかよ?」


【 セイレン 】

「さぁ、どうでしょう。あるかもしれないし、ないかもしれませんねえ! まあ、自分探しの旅と洒落込むことにしましょう!」


【 ジンマ 】

「……これがながの別れかもしれぬゆえ、正直なことを言おう」


【 セイレン 】

「おや、やはり引き留めたくなりましたか? それも道理ですが!」


【 ジンマ 】

「いや、案ずるな。引き留める気はまったくない」


【 セイレン 】

「まったく!?」


【 ジンマ 】

「思えばセイジュの兄者は、お主をとても買っていた。だが……俺には、お主の凄さがわからぬ」


【 ショウキ 】

「奇遇だね。あたしもまるでわからん」


【 ヒエン 】

「ああ、俺もさっぱりわからねェよ」


【 セイレン 】

「急に一致団結しないでくれますかね!?」


【 セイレン 】

「……いやしかし、それは是非もないこと! 私は天衣無縫の大才ゆえ、使いこなせるのはメイ殿のごとき、類まれな大人たいじんのみなのです。皆さまも、もちろん大器ではありますがね!」


【 ジンマ 】

「……確かに、そういうものかもしれぬ。ゆえに、引き留めはせん。達者でな」


【 セイレン 】

「ええ、皆さまも! 次にお会いするときは、敵同士……ということにならねばいいのですがね! それでは、これにて御免! どうかご壮健で――」


 言いたいことを言って、そのままセイレンは捧武庁を出ていった。

 三人はしばし呆気に取られていたが、


【 ヒエン 】

「……ふん、最後の最後に、ためになることを言い残していったじゃねェか。そうだな、自分の道は、自分で選ばねェとな」


【 ショウキ 】

「あんたも、離れるつもりかい?」


【 ヒエン 】

「ああ、そうさせてもらう。それとも、引き留めるかい?」


【 ショウキ 】

「いいや。かくいうあたしも、離れようと思ってたところでね」


【 ヒエン 】

「おやおや、やっぱりそういう魂胆かよ。ちなみにだが……」


【 ジンマ 】

「……俺は、ここに残る。お主らは、好きにするがいい」


【 ヒエン 】

「だろうな。だったら、残ってる金や食糧は、三等分でいいな?」


【 ショウキ 】

「ああ。そういえば――」


 バン! という音と共に扉が開いた。


【 三人 】

「――――っ?」


【 セイレン 】

「す、すみませんっ! あの~っ……路銀、分けてもらってもいいですかねぇ……?」


【 ショウキ 】

「…………」


【 ヒエン 】

「…………」


【 ジンマ 】

「…………」




 ともあれ、この後。

 レツ・ショウキは、徒党を引き連れ峰北ほうほくへと去り、〈北寇ほっこう〉と称されるにいたった。

 一方、シン・ヒエンもまた、同志とともに山北さんほくへ向かい、〈西寇せいこう〉とうたわれた。

 そしてライ・ジンマは、残った仲間とともに交龍こうりゅう割拠かっきょし、〈東寇とうこう〉と呼ばれることになったのである。

 後世の歴史家は、本件についてこう述べることになる――


 ――メイ・セイジュの没後、地母会の残党はごく平和的に三勢力へと分裂したが、ことはそう簡単なものではなかった。

 レツシンライの三者の力関係はほぼ互角であり、内訌うちわもめを起こして争い合ったあげく、共倒れになっていてもおかしくはなかったのである。

 彼らとて、もはや同じ道を歩くことはできず、分かれるべきだとは思ってはいたが、面子や義理もあり、易々とは切り出せなかった。

 しかし、先んじてアイ・セイレンが退去したことで、思った以上にすんなりと分かれることができたのである。

 これは、地母会におけるセイレンの最大にして、唯一の功績であったかもしれない――



 ――以上、回想終わり。


【 セイレン 】

「えええっ!? 窮地って、路銀分けてもらいにいったときの話!? 確かに、だいぶ気まずかったけどっ!」


【 セイレン 】

「そもそも、私の回想短すぎません!? おまけに私の出番あんまりなかったじゃないですかぁぁぁ~っ!!」


【 異形の刺客 】

「――――っ」


【 セイレン 】

「~~~~っ!?」


 絡繰り仕掛けの魔の手が、セイレンに迫る――

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