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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
140/421

◆◆◆◆ 6-45 燎氏の変(31) ◆◆◆◆

 一方、その頃……


【 セイレン 】

「ぜぇ、ぜぇっ……!」


【 異形の刺客 】

「…………」


 極龍殿の地下にある、隠し通路においては。

 守りを任された〈幻聖魔君げんせいまくん〉ことアイ・セイレンが、絡繰り仕掛けの人形たちを迎撃していた。


【 セイレン 】

「くっ……この私の数々の策を潜り抜けるとは……なかなか大したものですね! 褒めてあげましょう!」


【 異形の刺客 】

「…………」


【 セイレン 】

「しかし! まだ勝負はついていませんとも! ええ、私には隠された秘中の秘たる、大秘策があるのですから!」


【 異形の刺客 】

「…………」


【 セイレン 】

「ちょっとぉ!? 私の相手、反応が薄すぎるんですけどぉ!?」


【 異形の刺客 】

「…………!」


 絡繰りたちが、一斉に動き始める。


【 セイレン 】

「…………!!」


 セイレンの脳裏に、かつて陥った窮地が蘇る――




 これより回想――さかのぼること、七年前。


 交龍こうりゅう(帝国東北部)……この地は、長らく盗賊の支配下にあった。

 盗賊といっても、こそ泥の類ではなく、半ば独立国家の主といった方が正しい大勢力である。

 盗賊たちは〈地母会ちぼかい〉と呼ばれるほう会(秘密結社)の一味であり、兄弟姉妹の契りを交わし、固い結束を誇っていた。

 だが、この世に永遠のものなどない。

 地母会もまた、今や、終焉のときを迎えていた……



【 隻眼の美女 】

「……ひとまず、区切りはついたね」


【 色白の優男 】

「ちょいと派手過ぎたかもしれんが……ま、大哥あにきは派手好きだったし、ちょうどいいんじゃねェか?」


【 鱗を持つ男 】

「……うむ……」


 地母会の幹部たちが集う〈捧武庁ほうぶちょう〉にて、三人の男女が顔を突き合わせている。

 いずれの顔にも疲労の色が濃い。

 それも道理で、つい先ほど、とむらいが終わったばかりであった。


【 隻眼の美女 】

「さて……これから、どうするね」


【 色白の優男 】

「そりゃあ、弔い合戦だろ! と言いたいところだが……そうもいかねェわな」


【 鱗を持つ男 】

「……そうだな。あの方は、それを望みはすまい」


【 色白の優男 】

「だからって、また官軍に尻尾を振ろうだなんて言わないだろ?」


【 隻眼の美女 】

「そりゃアそうさ。だが……盗賊に戻るにしたって、やりようってもんがあるからね」


【 色白の優男 】

「だったら、もう義賊商売は十分だろ? 賊は賊らしく、好き勝手にやろうや。なァ?」


【 隻眼の美女 】

「ま、あんたはそう言うだろうと思ってたよ、シンの坊や。もともとあんたは、義賊なんてガラじゃアなかったからね」


【 進 】

「ははっ! ま、そいつは否定できねェけどな」


 高笑いしたこの若者は、シン・ヒエン。

 若くして才覚を表した、地母会の幹部のひとりである。


【 ヒエン 】

「それを言うならあんただって同じだろ? レツの姉御」


【 烈 】

「はっ、あんたと一緒にするんじゃアないよ、坊や。あたしは、あんたみたいに強欲じゃアないのさ」


 そう言って鼻を鳴らしたのはレツ・ショウキ。

 やはり、地母会の幹部のひとりである。


【 ヒエン 】

「どうだかねェ! 俺には匂うぜ? きっぷのいい姉御ぶってるが、あんたみたいなのが一番厄介なんだよ、なァ、ライの兄貴」


【 雷 】

「…………」


 ライと呼ばれた男は、チラリと優男を見たが、すぐに目を閉じた。

 男の名はライ・ジンマ、これまた地母会の幹部である。


【 ヒエン 】

「だってさ。やっぱりあんたが一番ヤバいんだよ、〈烈風虎れっぷうこ〉さん」


【 ショウキ 】

「はア? ジンマはなんにも言ってねェだろ。そういう身勝手なところが気に食わないんだよ、〈白刧鬼はくごうき〉!」


【 ヒエン 】

「ああン? そういうあんただって――」


【 ジンマ 】

「……兄者であれば」


 ふいに、ジンマが口を開いた。


【 ジンマ 】

「……お前たちの口論のひとつやふたつ、軽く収めてみせるのだろう」


【 ジンマ 】

「だが、俺は兄者ではない」


【 ショウキ 】

「……ふん。ま、そりゃアそうだね。あんたは〈混海蛟こんかいこう〉であって、〈地侠元聖ちきょうげんせい〉じゃアない」


【 ヒエン 】

メイ大哥あにきがいてくれりゃあ……ま、今となっちゃ、仕方ねェか」


 幹部三人が話しているのは、つまり、これからの身の振り方であった。

 おのおの思うところはあるのだが、なかなか切り出せずにいる。

 三者の力量や人脈はほぼ互角であるだけに、今後誰が主導権を握るかは、重大な問題であった。

 しかし軽々しく口に出すこともできず、お互いの様子をうかがっていると……


【 ???? 】

「――やあやあ、皆の衆、お揃いで!」

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