◆◆◆◆ 6-45 燎氏の変(31) ◆◆◆◆
一方、その頃……
【 セイレン 】
「ぜぇ、ぜぇっ……!」
【 異形の刺客 】
「…………」
極龍殿の地下にある、隠し通路においては。
守りを任された〈幻聖魔君〉こと藍・セイレンが、絡繰り仕掛けの人形たちを迎撃していた。
【 セイレン 】
「くっ……この私の数々の策を潜り抜けるとは……なかなか大したものですね! 褒めてあげましょう!」
【 異形の刺客 】
「…………」
【 セイレン 】
「しかし! まだ勝負はついていませんとも! ええ、私には隠された秘中の秘たる、大秘策があるのですから!」
【 異形の刺客 】
「…………」
【 セイレン 】
「ちょっとぉ!? 私の相手、反応が薄すぎるんですけどぉ!?」
【 異形の刺客 】
「…………!」
絡繰りたちが、一斉に動き始める。
【 セイレン 】
「…………!!」
セイレンの脳裏に、かつて陥った窮地が蘇る――
これより回想――さかのぼること、七年前。
交龍(帝国東北部)……この地は、長らく盗賊の支配下にあった。
盗賊といっても、こそ泥の類ではなく、半ば独立国家の主といった方が正しい大勢力である。
盗賊たちは〈地母会〉と呼ばれる幇会(秘密結社)の一味であり、兄弟姉妹の契りを交わし、固い結束を誇っていた。
だが、この世に永遠のものなどない。
地母会もまた、今や、終焉のときを迎えていた……
【 隻眼の美女 】
「……ひとまず、区切りはついたね」
【 色白の優男 】
「ちょいと派手過ぎたかもしれんが……ま、大哥は派手好きだったし、ちょうどいいんじゃねェか?」
【 鱗を持つ男 】
「……うむ……」
地母会の幹部たちが集う〈捧武庁〉にて、三人の男女が顔を突き合わせている。
いずれの顔にも疲労の色が濃い。
それも道理で、つい先ほど、弔いが終わったばかりであった。
【 隻眼の美女 】
「さて……これから、どうするね」
【 色白の優男 】
「そりゃあ、弔い合戦だろ! と言いたいところだが……そうもいかねェわな」
【 鱗を持つ男 】
「……そうだな。あの方は、それを望みはすまい」
【 色白の優男 】
「だからって、また官軍に尻尾を振ろうだなんて言わないだろ?」
【 隻眼の美女 】
「そりゃアそうさ。だが……盗賊に戻るにしたって、やりようってもんがあるからね」
【 色白の優男 】
「だったら、もう義賊商売は十分だろ? 賊は賊らしく、好き勝手にやろうや。なァ?」
【 隻眼の美女 】
「ま、あんたはそう言うだろうと思ってたよ、進の坊や。もともとあんたは、義賊なんてガラじゃアなかったからね」
【 進 】
「ははっ! ま、そいつは否定できねェけどな」
高笑いしたこの若者は、進・ヒエン。
若くして才覚を表した、地母会の幹部のひとりである。
【 ヒエン 】
「それを言うならあんただって同じだろ? 烈の姉御」
【 烈 】
「はっ、あんたと一緒にするんじゃアないよ、坊や。あたしは、あんたみたいに強欲じゃアないのさ」
そう言って鼻を鳴らしたのは烈・ショウキ。
やはり、地母会の幹部のひとりである。
【 ヒエン 】
「どうだかねェ! 俺には匂うぜ? きっぷのいい姉御ぶってるが、あんたみたいなのが一番厄介なんだよ、なァ、雷の兄貴」
【 雷 】
「…………」
雷と呼ばれた男は、チラリと優男を見たが、すぐに目を閉じた。
男の名は雷・ジンマ、これまた地母会の幹部である。
【 ヒエン 】
「だってさ。やっぱりあんたが一番ヤバいんだよ、〈烈風虎〉さん」
【 ショウキ 】
「はア? ジンマはなんにも言ってねェだろ。そういう身勝手なところが気に食わないんだよ、〈白刧鬼〉!」
【 ヒエン 】
「ああン? そういうあんただって――」
【 ジンマ 】
「……兄者であれば」
ふいに、ジンマが口を開いた。
【 ジンマ 】
「……お前たちの口論のひとつやふたつ、軽く収めてみせるのだろう」
【 ジンマ 】
「だが、俺は兄者ではない」
【 ショウキ 】
「……ふん。ま、そりゃアそうだね。あんたは〈混海蛟〉であって、〈地侠元聖〉じゃアない」
【 ヒエン 】
「明の大哥がいてくれりゃあ……ま、今となっちゃ、仕方ねェか」
幹部三人が話しているのは、つまり、これからの身の振り方であった。
おのおの思うところはあるのだが、なかなか切り出せずにいる。
三者の力量や人脈はほぼ互角であるだけに、今後誰が主導権を握るかは、重大な問題であった。
しかし軽々しく口に出すこともできず、お互いの様子をうかがっていると……
【 ???? 】
「――やあやあ、皆の衆、お揃いで!」
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