◆◆◆◆ 6-44 燎氏の変(30) ◆◆◆◆
【 ミズキ 】
「はっ! ――せいっ!」
――ザシュッ! ブシャッ!!
気合とともに、無数の〈空刀〉の一撃を打ち込んでいくミズキ。
【 妖魔 】
「オ――オフウ――ンムウウ――」
妖魔はなすがままで、ただただ身をくねらせるばかり。
【 ミズキ 】
(あまりに、無抵抗すぎるっ……)
【 ミズキ 】
(もしや、まるで効いていないのでは……!?)
ミズキの内心に戸惑いが生まれた、そのとき。
【 妖魔 】
「――――っ」
妖魔の無数の口から、舌が伸びる。
その先には、剥き出しの目玉がついており――
――カッ!!
【 ミズキ 】
「うっ……!?」
妖魔の数多の眼球に睨まれたミズキは、全身が硬直するのを覚えた。
【 ミズキ 】
(躰が……動かない!?)
冷たい汗が、背筋を走る。
【 ミズキ 】
(しまったっ……あの目に、呪力がっ!?)
そう悟っても、もはや後の祭り。
【 妖魔 】
「――フフ――ハハッ……アハハハハッ……!」
せせら笑いとともに、触手がミズキに迫る――
【 ミズキ 】
「…………っ!!」
――ドスッ!!
【 ミズキ 】
「ぐっ!? ……うううっ!」
――間一髪。
ミズキは妖魔の一撃を躱して、跳びすさっていた。
【 ミズキ 】
「……っ、はぁっ、はぁあっ……!」
その太股には、一本の鍼が突き立っている。
おかげで金縛り状態から解放され、直前で逃れられたわけだが……
【 ???? 】
「どうやら、まだ生きていたようですね。なによりです」
【 ミズキ 】
「助かりました――が、荒療治にもほどがあるでしょうっ、晏老師!」
【 ゼンキョク 】
「申し訳ない。なにせ、あれが相手ではね……鍼が効くようには見えなかったので」
そう言って微笑んだのは、ミズキらの同志たる〈救神双手〉、晏・ゼンキョクであった。
【 ゼンキョク 】
「妖魔を治療したことはないのですが……すこぶる興味深いですね」
【 ミズキ 】
「……あの舌先の目を見ると、金縛りに遭います。ご注意を」
【 ゼンキョク 】
「ふむ……一時的に視力を封じる経穴でも押して差し上げましょうか?」
【 ミズキ 】
「遠慮しておきます。あなたのことだから、しばらくこのままでもいいでしょう? などと言って、放っておきかねないので」
【 ゼンキョク 】
「ふふ……まさか」
【 妖魔 】
「――クフ――フフフ! ウフフ……フッフフゥ……」
異様な笑声を放つ妖魔。
それに対峙するミズキとゼンキョク。
【 ミズキ 】
「妖魔を討つには、心臓を破壊せねばなりません――どこにあるか、見定められそうですか?」
【 ゼンキョク 】
「そうですね……少しばかり、時をいただければ」
【 ミズキ 】
「ならば――稼ぎましょう、その時を」
ミズキは単身、妖魔との間合いを詰めていった――
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