◆◆◆◆ 6-42 燎氏の変(28) ◆◆◆◆
【 刺客の頭目 】
「お、おのれっ……化け物め……!」
ミズキひとりに次々と配下を討たれ、頭目は呻き声をこぼす。
気づけば、生き残った手勢は十人を切っていた。
【 他の刺客 】
「頭目っ……いかがなさいます……!?」
他の者も、動揺の色を隠せずにいる。
いずれも過酷な鍛錬を重ねてきた手練れ揃いではあるが、これほどの大敵と遭遇するのは初めてのことであった。
【 刺客の頭目 】
「――っ、ここで退けるものかっ……この機を逃せば、我らが世に名を馳せる機会はもはやない……!」
【 他の刺客 】
「し、しかしっ……このままでは……!」
【 刺客の頭目 】
「ただひとりでも突破すれば、それでよい――〈断髄陣〉で仕掛ける!」
【 他の刺客たち 】
「――はっ……!」
頭目の命令一下、刺客たちが一斉に体勢を整える。
犠牲をいとわず一気呵成に突破しようという、骨を切らせて髄を断つ、捨て身の陣であった。
しかし……
【 刺客 】
「…………」
ひとりだけ、命に従わずに立ち尽くしている者がいた。
【 刺客の頭目 】
「――――っ? どうした、なぜ従わぬ! 臆したか!」
【 刺客 】
「ふ……ふ……」
頭目の叱責に、その男は小刻みに身を震わせ、
【 刺客 】
「フウウウー……ウウウ……フフフ……」
奇怪な声を漏らしはじめた。
戦いの恐怖に、正気を失ったのかもしれない。
【 刺客の頭目 】
「うぬっ……乱心者めっ! 始末せよ!」
【 他の刺客たち 】
「はっ……!」
ドスッ! ザシュッ!
他の刺客たちが、棒立ちの男に斬りかかり、その身を刃で貫く。
間違いなく、致命傷の一撃であった。
――にも、かかわらず。
【 刺客 】
「……フフ……フッフフ……」
【 刺客の頭目 】
「……っ!?」
男の笑い声は止まらず、いや、それどころか。
【 刺客 】
「フフフ……アハッ……アハハハハ……!!」
甲高い高笑いを張り上げる。
【 ミズキ 】
「――――っ!」
その笑声に、ミズキは肌が粟立つのを覚えた。
【 ミズキ 】
「離れなさいっ、“それ”からっ!」
【 他の刺客たち 】
「……っ!?」
【 刺客 】
「アハハ……ハハハハハハッッ!!」
――ブシュッ!
【 他の刺客たち 】
「ぎゃっ……ああっ!?」
【 刺客の頭目 】
「な――」
【 ミズキ 】
「…………っ!!」
ミズキは慄いた。
全身を刃で貫かれた男の身から幾本もの腕が突き出て、囲んでいた刺客たちの身を深々と貫いていたのだ。
【 刺客だったもの 】
「ハハハハハ……アハハハハ……ハハ! ハハハ!!」
男の肌が裂け、いくつもの口が浮かび上がり、耳障りな高笑いを上げる。
その異様な姿を、ミズキは、知っていた。
視界に入るだけでも怖気が走る、あれは。
【 ミズキ 】
(ここに……現れるとは……!)
妖魔が、眼前に顕現していた――
*顕現……顕かに現れる。はっきりと姿を見せるの意。
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