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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
13/421

◆◆◆◆ 2-3 仲裁者 ◆◆◆◆

 あわや、ホノカナ一巻の終わり――と、思われたとき。

 ヌッ……と、彼女の前に壁が現れた。


【 ホノカナ 】

(壁……?)


 いや、壁ではない。

 壁と見まがうばかりの、それは巨躯きょくであった。

 *巨躯……大きな体、巨体の意。


【 ヨスガ 】

「どけ、ランブ!」


【 ランブ 】

「――それはできませぬ」


 見上げるほどの雄偉な体格の士が、ヨスガとホノカナの間に割り込んでいたのだった。


【 ホノカナ 】

(うわあ、大きい人……!)


 緊急時でありながらも、ホノカナは思わず感嘆した。


【 ヨスガ 】

「その者は、我を罵り、はずかしめたのだぞ! けい咎人とがびとをかばうつもりか!」

 *卿……君主が家臣を呼ぶ言葉。


【 ランブ 】

「むろん、この者に罪はあります。しかし、陛下おんみずから手をくだすなど、あってはならぬことです」


【 ヨスガ 】

「しかしだな……!」


【 ランブ 】

「陛下」


【 ヨスガ 】

「うぬ……」


 落ち着いた声音でさとされ、ようやくヨスガは矛を収めた。

 しかし、それはいっときの激情から覚めただけのことであり、


【 ヨスガ 】

「それなる者を閉じ込めておけ。のちに、しかるべき罰をくだすであろう――」


 今やすっかり冷徹の仮面を取り戻してそう宣言すると、刀をそばの者に押しつけ、背を向けて歩き去る。

 巨体の人物も、その後を追っていった。


【 ホノカナ 】

「…………っ」


 茫然と立ち尽くすホノカナ。

 取り残された女官たちもまた、ことのなりゆきに唖然となり、声もないありさま。

 そんななかで、


【 シキ 】

「ホノカナちゃん! なんて……なんてことを……」


 シキがホノカナの袖にすがりつき、声を震わせている。


【 ホノカナ 】

「……ごめんね、シキちゃん。でも、わたし……」


 黙っては、いられなかったのだ。

 理不尽にさらされる者たちを、これまでたくさん見てきた。

 ましてや、その片棒を担がされるなんて――


【 ミズキ 】

「ついてきなさい、ホノカナ」


【 ホノカナ 】

「――――っ」


 女官長ミズキの声に、ホノカナは我に返る。


【 ホノカナ 】

「あ、あの、わたしっ……」


 ホノカナの言葉に耳を貸さず、ミズキは歩き出す。


【 シキ 】

「ホノカナちゃん……」


【 ホノカナ 】

「……大丈夫、大丈夫だから」


 ホノカナはシキをなだめ、その手をギュッと握ったあと、ミズキの後を追った。

 大丈夫でないことなど、自身がいちばんよくわかってはいたのだけれど。

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