◆◆◆◆ 2-3 仲裁者 ◆◆◆◆
あわや、ホノカナ一巻の終わり――と、思われたとき。
ヌッ……と、彼女の前に壁が現れた。
【 ホノカナ 】
(壁……?)
いや、壁ではない。
壁と見まがうばかりの、それは巨躯であった。
*巨躯……大きな体、巨体の意。
【 ヨスガ 】
「どけ、ランブ!」
【 ランブ 】
「――それはできませぬ」
見上げるほどの雄偉な体格の士が、ヨスガとホノカナの間に割り込んでいたのだった。
【 ホノカナ 】
(うわあ、大きい人……!)
緊急時でありながらも、ホノカナは思わず感嘆した。
【 ヨスガ 】
「その者は、我を罵り、辱めたのだぞ! 卿は咎人をかばうつもりか!」
*卿……君主が家臣を呼ぶ言葉。
【 ランブ 】
「むろん、この者に罪はあります。しかし、陛下おんみずから手をくだすなど、あってはならぬことです」
【 ヨスガ 】
「しかしだな……!」
【 ランブ 】
「陛下」
【 ヨスガ 】
「うぬ……」
落ち着いた声音で諭され、ようやくヨスガは矛を収めた。
しかし、それはいっときの激情から覚めただけのことであり、
【 ヨスガ 】
「それなる者を閉じ込めておけ。のちに、しかるべき罰をくだすであろう――」
今やすっかり冷徹の仮面を取り戻してそう宣言すると、刀をそばの者に押しつけ、背を向けて歩き去る。
巨体の人物も、その後を追っていった。
【 ホノカナ 】
「…………っ」
茫然と立ち尽くすホノカナ。
取り残された女官たちもまた、ことのなりゆきに唖然となり、声もないありさま。
そんななかで、
【 シキ 】
「ホノカナちゃん! なんて……なんてことを……」
シキがホノカナの袖にすがりつき、声を震わせている。
【 ホノカナ 】
「……ごめんね、シキちゃん。でも、わたし……」
黙っては、いられなかったのだ。
理不尽にさらされる者たちを、これまでたくさん見てきた。
ましてや、その片棒を担がされるなんて――
【 ミズキ 】
「ついてきなさい、ホノカナ」
【 ホノカナ 】
「――――っ」
女官長ミズキの声に、ホノカナは我に返る。
【 ホノカナ 】
「あ、あの、わたしっ……」
ホノカナの言葉に耳を貸さず、ミズキは歩き出す。
【 シキ 】
「ホノカナちゃん……」
【 ホノカナ 】
「……大丈夫、大丈夫だから」
ホノカナはシキをなだめ、その手をギュッと握ったあと、ミズキの後を追った。
大丈夫でないことなど、自身がいちばんよくわかってはいたのだけれど。
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