◆◆◆◆ 6-17 燎氏の変(3) ◆◆◆◆
帝都〈万寿世春〉の中心にあるのが、皇帝の住居にして国政の要である宮城である。
宮城を覆うようにして、内城、外城という二重の城壁が存在し、その合間に市街が広がっているのだ。
今、その内城地域といわず外城地域といわず、あちこちから火の手が上がっていた。
【 セイレン 】
「もしかして、あの爆弾魔殿、やらかしたのでは!?」
【 ヨスガ 】
「いや、エキセンが先走るとは思えん――まして、こんな真似を……!」
【 ミズキ 】
「……っ、十二賊の仕業でしょうか?」
【 ヨスガ 】
「ありえぬことではない……が、このような手を打つ意味がわからぬ。そして、我影也からの知らせもなかったことを考えれば、これは――」
【 ランブ 】
「彼奴ら以外の、何者かがっ……?」
【 ヨスガ 】
「今はわからん。ともあれ――」
ヨスガは、セイレンから強奪した菓子を口へ放り込んだ。
【 ヨスガ 】
「――長い夜に、なりそうだな」
【 シジョウ 】
「市中に火の手、だとっ……!?」
報告を受けて、黄龍・シジョウは思わず声を上げた。
【 家臣 】
「はっ、内城の夜市や、外城の市街地……あちこちで轟々たる炎が立ち昇り、市中は混乱を極めています……!」
【 他の十二佳仙 】
「黄龍老師っ! い、いかがいたしましょうっ……?」
他の取り巻きたちも周章狼狽している。
そう、彼らにとっても、この急報は寝耳に水だったのだ。
【 シジョウ 】
「…………」
【 シジョウ 】
(あの小娘……ここまでやるのか……!?)
この時点で、まったく別の勢力が蜂起した……などという発想がシジョウに湧かなかったのは、無理もないことであろう。
【 シジョウ 】
(ならば……やられる前にやるしかない)
ヨスガらが市中に火を放って混乱を引き起こし、その騒ぎに乗じて仕掛けてくる――そんな想像は、決しておかしなものではない。
【 シジョウ 】
「……予定を早める。このまま、ことを進めよ。〈木偶〉を出せ」
【 他の十二佳仙 】
「……っ、ははっ……!」
【 シジョウ 】
「…………」
一方、外城にあっては――
【 カズサ 】
「ど、どうなっているの!? 勝負は明日だったはずではっ!?」
路上に飛び出した閃・カズサが、思わぬ事態に狼狽していた。
立ち昇る炎の柱、逃げ惑う人々の悲鳴……そこはもはや、戦場さながらの混乱をなしていた。
【 カズサ 】
「エキセン殿っ! まさか、あなたの仕業ではないでしょうねっ!?」
【 エキセン 】
「クク……俺の火薬なら、この程度ではすまない――クン、クン……この感じからして、油を使った付け火だな……」
【 ゼンキョク 】
「どうあれ、すでに大事は始まったようです。我らも宮城に急がねばなりません」
【 カズサ 】
「そ……そうねっ! 不埒な逆徒どもっ、一人残らず叩き斬ってみせるわっ! 行くわよっ!」
カズサたちは、逃げ散る群衆をかいくぐりながら、宮城へと駆け出していった――
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