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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
112/421

◆◆◆◆ 6-17 燎氏の変(3) ◆◆◆◆

 帝都〈万寿世春ばんじゅせいしゅん〉の中心にあるのが、皇帝の住居にして国政の要である宮城である。

 宮城を覆うようにして、内城、外城という二重の城壁が存在し、その合間に市街が広がっているのだ。

 今、その内城地域といわず外城地域といわず、あちこちから火の手が上がっていた。


【 セイレン 】

「もしかして、あの爆弾魔殿、やらかしたのでは!?」


【 ヨスガ 】

「いや、エキセンが先走るとは思えん――まして、こんな真似を……!」


【 ミズキ 】

「……っ、十二賊の仕業でしょうか?」


【 ヨスガ 】

「ありえぬことではない……が、このような手を打つ意味がわからぬ。そして、我影也からの知らせもなかったことを考えれば、これは――」


【 ランブ 】

「彼奴ら以外の、何者かがっ……?」


【 ヨスガ 】

「今はわからん。ともあれ――」


 ヨスガは、セイレンから強奪した菓子を口へ放り込んだ。


【 ヨスガ 】

「――長い夜に、なりそうだな」




【 シジョウ 】

「市中に火の手、だとっ……!?」


 報告を受けて、黄龍コウリュウ・シジョウは思わず声を上げた。


【 家臣 】

「はっ、内城の夜市や、外城の市街地……あちこちで轟々たる炎が立ち昇り、市中は混乱を極めています……!」


【 他の十二佳仙 】

黄龍コウリュウ老師っ! い、いかがいたしましょうっ……?」


 他の取り巻きたちも周章狼狽しゅうしょうろうばいしている。

 そう、彼らにとっても、この急報は寝耳に水だったのだ。


【 シジョウ 】

「…………」


【 シジョウ 】

(あの小娘……ここまでやるのか……!?)


 この時点で、まったく別の勢力が蜂起した……などという発想がシジョウに湧かなかったのは、無理もないことであろう。


【 シジョウ 】

(ならば……やられる前にやるしかない)


 ヨスガらが市中に火を放って混乱を引き起こし、その騒ぎに乗じて仕掛けてくる――そんな想像は、決しておかしなものではない。


【 シジョウ 】

「……予定を早める。このまま、ことを進めよ。〈木偶でく〉を出せ」


【 他の十二佳仙 】

「……っ、ははっ……!」


【 シジョウ 】

「…………」




 一方、外城にあっては――


【 カズサ 】

「ど、どうなっているの!? 勝負は明日だったはずではっ!?」


 路上に飛び出したセン・カズサが、思わぬ事態に狼狽していた。

 立ち昇る炎の柱、逃げ惑う人々の悲鳴……そこはもはや、戦場さながらの混乱をなしていた。


【 カズサ 】

「エキセン殿っ! まさか、あなたの仕業ではないでしょうねっ!?」


【 エキセン 】

「クク……俺の火薬なら、この程度ではすまない――クン、クン……この感じからして、油を使った付け火だな……」


【 ゼンキョク 】

「どうあれ、すでに大事だいじは始まったようです。我らも宮城に急がねばなりません」


【 カズサ 】

「そ……そうねっ! 不埒な逆徒どもっ、一人残らず叩き斬ってみせるわっ! 行くわよっ!」


 カズサたちは、逃げ散る群衆をかいくぐりながら、宮城へと駆け出していった――

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