表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
111/421

◆◆◆◆ 6-16 燎氏の変(2) ◆◆◆◆

【 ミズキ 】

「……余裕しゃくしゃくですね」


 夜食を奪い合うヨスガとセイレンの姿に、女官長ミズキは嘆息した。


【 ヨスガ 】

「ふん、腹が減ってはなんとやら――だ。むしゃむしゃ……」


【 ミズキ 】

「しかし、〈我影也しのびのもの〉からの知らせでは……」


【 ヨスガ 】

「うむ、外廷に動きはないな。やはり、動くなら明日か……ごくん」


 と、セイレンから強奪した肉を呑み込むヨスガ。


【 セイレン 】

「ううっ、さらば我が肉……そういえば、以前からちょっと気になってはいましたが」


 などと乾し肉を嘆きつつ、


【 セイレン 】

「その我影也っていうのは、いったいなんなんです?」


【 ヨスガ 】

「なんだ、聞いていなかったのか? 帝室付きの忍びの者だ。宮城に潜み、あれこれ目を光らせておる。なにかあれば、我にのみ報告してくるのだ」


【 セイレン 】

「ははぁ……? 見かけたこともなかったですなぁ」


【 ヨスガ 】

「当たり前だ。我ですら、その姿を見たことはないからな」


【 セイレン 】

「へぇ……!? それでどうやって連絡を?」


【 ヨスガ 】

「いろいろだな。朝、起きると枕元に書状があったり、食後に皿を見たら伝言が記してあったりする。ま、一見しただけではわからぬ符牒ふちょうになっているが」

 *符牒……合言葉、隠語の意。


【 セイレン 】

「ええ~……? 本当ですかぁ?」


 にわかには信じがたい、という様子のセイレン。


【 ヨスガ 】

「嘘だと思うなら、見てみるがいい。そなたが買ってきた肉の包みを」


【 セイレン 】

「んん……? これは――」


 そこには、いくつかの線が規則的に記されていた。


【 ヨスガ 】

「それが符牒だ。訳すならば『外廷に異状なし』ということになる」


【 セイレン 】

「ええ……!? い、いつの間に……」


【 ヨスガ 】

「そなたが宮城に戻ってきて、ここに来るまでの間であろう。恐るべき使い手ではある」


【 セイレン 】

「ひぇぇ……でも、そんな便利な者がいるなら、東の宮の様子も探ってきてもらえばいいのでは?」


【 ミズキ 】

「それが、そうもいかないのです」


 と、ミズキが口を挟む。


【 ミズキ 】

「どうやらあの者は、ヨスガさまというより、帝室そのものに仕えているようなので」


【 ヨスガ 】

コウ太后については、なんの知らせもよこさぬ。その手下である十二佳仙どもにはあれこれ報告してくるがな」


【 セイレン 】

「は、ははぁ~……でも、そんな者が保証しているなら、今宵は安全ですな! さっさと寝て、明日に備えるべきでは?」


【 ヨスガ 】

「……それが無難ではあろう。しかし、万一ということもある」


【 セイレン 】

「結局、寝られないのですね……はぁ、仕方ない、香糖菓子でも食べよう……ポリポリ」


【 ヨスガ 】

「こやつ、まだ仕込んでおったかっ……それもよこせい!」


【 セイレン 】

「い、嫌ですう~! 甘いものは頭脳労働に欠かせぬのですぅ~っ!」


【 ミズキ 】

「宝玲山の本隊も、明日には到着とのこと。城外に展開している八白ハチハク閣下の軍をどう突破するかが問題ですが……」


 ヨスガとセイレンの菓子争奪戦を尻目に、淡々と告げるミズキ。


【 ヨスガ 】

「ふん、あの大将のことだ、それくらいはなんとでもしてみせるさ……そりゃああっ!」


【 セイレン 】

「あああっ!? せっかくの菓子が~っ!」


【 ミズキ 】

「……そうですね。心配するだけ無駄でしょう。たったひとりでも城壁を乗り越えてやってきそうなくらいです」


【 ヨスガ 】

「やりかねんな、あの御仁ならば――」


 などと、話していた矢先。


【 ランブ 】

「――っ、陛下っ!」


 ランブが、いつになく焦った様子で、部屋に飛び込んできた。


【 ヨスガ 】

「――外廷が、動いたか?」


 先ほどまでの緩んだ空気が一変する。


【 ランブ 】

「いえ――とにかく、ご覧ください……!」


 ランブにうながされ、宮殿の外に駆け出ると、


【 ヨスガ 】

「――っ! これはっ……」


 天に向かって、幾筋もの黒煙が立ち昇っている。

 その源は……帝都の市中。


 これこそ、後世において〈りょう氏の変〉として呼ばれる大事件の、はじまりの合図であった――――

ブックマーク、ご感想、ご評価いただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ