◆◆◆◆ 6-14 殿軍 ◆◆◆◆
【 ホノカナ 】
「……はぁっ……」
酒場を出て、帰路についた夜道。
先ほどまでの高揚ぶりはどこへやら、ホノカナはすっかり虚脱状態となっていた。
【 ミズキ 】
「ずいぶんと、足が重いようですね」
【 ホノカナ 】
「ううっ……だって……エキセンさんに、すごく怒られちゃったし……」
誤爆したのが閃光弾だったからよかったものの、そうでなければ大変なことになっていた。
火薬の類がいかに危険であり、慎重に扱わねばならないか――と、エキセンからさんざんお説教されたのだった。
【 ホノカナ 】
「ううう……わたし、どうしてさっきまであんなに元気だったんですかね……?」
【 ミズキ 】
「さぁ……?」
ゼンキョクの押したツボによって得られていた高揚感が切れ、逆に反動がきているのだろう――とミズキは推測したが、あえて言わずにいた。
【 ミズキ 】
「…………」
ふと、ミズキが街頭でぴたりと足を止める。
【 ホノカナ 】
「…………っ?」
【 ミズキ 】
「今なら――まだ、間に合います」
振り返り、ホノカナを冷徹な視線でじっと見つめる。
【 ホノカナ 】
「…………っ」
【 ミズキ 】
「宮城内は、ほどなく戦場――死地となるでしょう。今なら、別動隊に合流するという選択肢もあります」
【 ホノカナ 】
「……っ、ありがとうございます」
深々と一礼しつつも。
【 ホノカナ 】
「でも――わたしは、わたしにしかできないことを、やりたいので!」
【 ミズキ 】
「……わかりました」
顔を上げたホノカナの目を見て、ミズキは頷き、踵を返した。
【 ミズキ 】
「では――戻りましょう」
【 ホノカナ 】
「――ああっ!? ちょ、ちょっと待ってくださ……あわわわっ……!」
ふらつきながらもミズキを追うホノカナを、物陰からひそかに見送る影が三つ――
【 カズサ 】
「ふん……頼りないったらないわね! あんな調子で、陛下のお役に立てるのかしらっ……!」
【 ゼンキョク 】
「やれやれ……素直に励ましておけばよかったものを」
【 エキセン 】
「ククク……それができないのが、性分というもの……」
【 カズサ 】
「うるさいわね!? まったくっ……さぁ、殿軍はしっかり務めるわよ!」
抜刀したカズサの視線の先には、ホノカナらの後を追う妖しげな影――
【 エキセン 】
「ククッ……爆破しても、いいのかな……?」
【 ゼンキョク 】
「さすがに、騒ぎが起きてはまずいので……密やかに済ませるとしましょうか」
鍼を手にしたゼンキョクが、ゆるりと歩み出す。
【 カズサ 】
「言われずとも――大姐に害をなす者は許さないわっ! ……ついでに、あの小娘にもね!」
緋色の柄の刀を手に、カズサが駆け出す――
【 カズサ 】
「いざ――緋閃十文字斬り!(小声)」
夜の道は、あくまでも静かで。
剣戟の音はホノカナらに届くこともなく、静寂の中に消えていったのだった――
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