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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
109/421

◆◆◆◆ 6-14 殿軍 ◆◆◆◆

【 ホノカナ 】

「……はぁっ……」


 酒場を出て、帰路についた夜道。

 先ほどまでの高揚ぶりはどこへやら、ホノカナはすっかり虚脱状態となっていた。


【 ミズキ 】

「ずいぶんと、足が重いようですね」


【 ホノカナ 】

「ううっ……だって……エキセンさんに、すごく怒られちゃったし……」


 誤爆したのが閃光弾だったからよかったものの、そうでなければ大変なことになっていた。

 火薬の類がいかに危険であり、慎重に扱わねばならないか――と、エキセンからさんざんお説教されたのだった。


【 ホノカナ 】

「ううう……わたし、どうしてさっきまであんなに元気だったんですかね……?」


【 ミズキ 】

「さぁ……?」


 ゼンキョクの押したツボによって得られていた高揚感が切れ、逆に反動がきているのだろう――とミズキは推測したが、あえて言わずにいた。




【 ミズキ 】

「…………」


 ふと、ミズキが街頭でぴたりと足を止める。


【 ホノカナ 】

「…………っ?」


【 ミズキ 】

「今なら――まだ、間に合います」


 振り返り、ホノカナを冷徹な視線でじっと見つめる。


【 ホノカナ 】

「…………っ」


【 ミズキ 】

「宮城内は、ほどなく戦場――死地となるでしょう。今なら、別動隊に合流するという選択肢もあります」


【 ホノカナ 】

「……っ、ありがとうございます」


 深々と一礼しつつも。


【 ホノカナ 】

「でも――わたしは、わたしにしかできないことを、やりたいので!」


【 ミズキ 】

「……わかりました」


 顔を上げたホノカナの目を見て、ミズキは頷き、踵を返した。


【 ミズキ 】

「では――戻りましょう」


【 ホノカナ 】

「――ああっ!? ちょ、ちょっと待ってくださ……あわわわっ……!」




 ふらつきながらもミズキを追うホノカナを、物陰からひそかに見送る影が三つ――


【 カズサ 】

「ふん……頼りないったらないわね! あんな調子で、陛下のお役に立てるのかしらっ……!」


【 ゼンキョク 】

「やれやれ……素直に励ましておけばよかったものを」


【 エキセン 】

「ククク……それができないのが、性分というもの……」


【 カズサ 】

「うるさいわね!? まったくっ……さぁ、殿軍しんがりはしっかり務めるわよ!」


 抜刀したカズサの視線の先には、ホノカナらの後を追う妖しげな影――


【 エキセン 】

「ククッ……爆破しても、いいのかな……?」


【 ゼンキョク 】

「さすがに、騒ぎが起きてはまずいので……密やかに済ませるとしましょうか」


 鍼を手にしたゼンキョクが、ゆるりと歩み出す。


【 カズサ 】

「言われずとも――大姐おねえさまに害をなす者は許さないわっ! ……ついでに、あの小娘にもね!」


 緋色の柄の刀を手に、カズサが駆け出す――


【 カズサ 】

「いざ――緋閃十文字斬り!(小声)」


 夜の道は、あくまでも静かで。

 剣戟の音はホノカナらに届くこともなく、静寂の中に消えていったのだった――

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