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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
103/421

◆◆◆◆ 6-8 先遣隊 ◆◆◆◆

【 高飛車そうな娘 】

「おーっほっほっほっ! 人呼んで〈緋閃剣ひせんけん〉とは、誰あろう、このわたしのことよ!」


 二振りの剣を引っ提げた娘が、高笑いする。


【 あやしげな男 】

「クククク……〈霹靂匠へきれきしょう〉とでも、呼んで、貰おうかな……クク……」


 痩せぎすの男が、小ぶりな弾弓だんぐうをまさぐりつつ、薄笑いをうかべる。

 *弾弓……弾丸を飛ばすための弓。ここではパチンコの意。


【 かげのある美女 】

「世間では〈救神双手きゅうしんそうしゅ〉などと呼ばれております。お見知りおきを――」


 両手を手袋で覆った、落ち着いた雰囲気の女性が、一礼する。


【 ホノカナ 】

「あっ、は、はいっ、よろしくお願いします……!」


 ――帝都のはずれの、小ぢんまりとした酒場の片隅にて。

 夜を待ってひそかに城を抜け出してきた リン・ホノカナは、奇妙な一団と卓を囲んでいた。


【 緋閃剣 】

「それで? あなたはなんと仰るのかしら?」


【 ホノカナ 】

「え、えっ? わ、わたしは、その――」


 ホノカナは一介の女官であるから、当然ながら気の利いた異名など持っているはずもない。


【 ホノカナ 】

「――え、えっと、そう、〈小万勇しょうばんゆう〉でお願いします……!」


 とっさに、先祖とされる神祖の功臣〈万勇騎ばんゆうき〉ことリン・ハルカナにあやかった異名をでっちあげる。


【 緋閃剣 】

「あら、リン大将軍にゆかりがあるのかしら? さぞかしあなたも、見かけによらず腕が立つのでしょうねぇ――?」


【 ホノカナ 】

「そ、それはっ……」


【 ミズキ 】

センの……いえ、緋閃剣殿、無駄話はほどほどに」


【 緋閃剣 】

「ええ、ええ、わかっていますわ、〈紅雪華こうせっか〉殿! さぁどうぞ、お話を!」


【 ミズキ 】

「では……今後の方針について、〈天侠大聖てんきょうたいせい〉からの指令を伝えにまいりました」


 紅雪華こと、女官長ミズキが告げる。

 隣に座ったホノカナが、そんなかっこいい綽名あだなあるなんて知らなかった……と言いたげな視線を向けるが、気にしたそぶりもない。


【 救神双手 】

「ふむ……いよいよ、“国を治す”とき……これは、大がかりな手術となりそうですね」


【 霹靂匠 】

「ククッ……ククク、なにを爆破すればいいんですかぁ……?」


【 緋閃剣 】

「いよいよですね! このわたしが! 邪魔する者はことごとく討ち倒してみせます! ええ、我らが盟主のために!」


【 ホノカナ 】

「~~~~っ……」


 なぜホノカナが、このあやしげな面々と同席する羽目に至ったのかというと――




【 ヨスガ 】

「これからミズキとともに城外に出て、同志と会ってこい」


 発端はいつものごとく、ヨスガの命であった。

 夜になってミズキの部屋を訪ねるなり、ホノカナはそう告げられたのである。


【 ホノカナ 】

「同士……って、あっ、宝玲山ほうれいざんの?」


【 ヨスガ 】

「そうだ。本隊は、もっか帝都に接近中だが……市中に潜伏している先遣隊だな」


 皇帝ヨスガのもう一つの顔……

 それが、天侠大聖と呼ばれる遊侠の徒である。

 *遊侠……仁義を守る任侠の意。


 宝玲山は帝都の北方にある険しい山で、古来より山賊の住処として知られていた。

 現在も、千人を超える武装集団が立てこもっているが、その正体はただの賊ではなく、いわばヨスガの私兵である。


【 ホノカナ 】

(それにしても……)


 なぜヨスガが遊侠の士を名乗っているのか、なぜ宝玲山なのか……といった疑問はいまだにある。

 それについては、話すと長くなるからおいおい語るとしよう――と、言われてはいるのだけれど。


【 ヨスガ 】

「連中と接触して、我からの指示を伝えよ」


【 ホノカナ 】

「ヨスガ姉さまの御名代として……ですよね?」


【 ヨスガ 】

「いや、そういうわけではない」


【 ホノカナ 】

「えっ? そ、そうなんですか?」


【 ヨスガ 】

レイ将軍の時と違って、相手はいわば身内だ。そなたと連中の顔合わせという意味もある。気負う必要はない」


【 ホノカナ 】

「あ……なるほど」


 ホノカナは、内心で胸を撫でおろした。

 ここ最近、不安な日々を送っていることもあり、外に出られるなら、それだけでも少し気が晴れるだろう。


【 ホノカナ 】

「わかりました! じゃあわたし、皆さんと仲良くなってきますねっ!」


【 ヨスガ 】

「おお……そうか。健闘を祈る」


 いつになく、ヨスガは微妙な顔で頷いてみせた。


【 ホノカナ 】

「…………?」

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