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軍師は何でも知っている  作者: タンバ
第二部 王国再建編
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第五章 遊軍6

王の間には玉座に座ったカグヤ様と、その右横に立つベイド。そして左右に並ぶ国の有力者たちが居た。

 ソフィアを保護した時点で、すぐにレンに報告させに行ったから、中々の面子が揃っている。まさしくここがヴェリスの中枢であり、意思を決定する場所だ。まぁ一人、俺が予想していた人物はいないけれど。居ないのは居ないで、想定通りと言えなくもない。できれば居て欲しかったが。

 俺はディオ様の少し後ろを歩いている。まずは俺の報告のあと、ソフィアが王の間に入ってくる手筈になっている。まぁ手筈を整えたのはベイドだが。


「ノックス総隊長、ユキト・クレイ。只今、戻りました」


 ディオ様がカグヤ様の左横に立ったのを確認し、俺は肩膝をついてそう帰還の挨拶を行った。


「ご苦労だった。さて、状況を報告してもらえるか? そなたの行動も含めて色々とな」


 カグヤ様は少しだけ目を細める。

 まぁ当然と言えば当然の反応だ。王城前まで独立部隊を入れたのだ。しかも、信頼の証である独立部隊の権限を使って、色々とカグヤ様は思う所があるだろう。申し訳ない事をしたという意識はすごくある。

 けれど、こうでもしなければ、俺の言葉は流されかねない。

 俺の覚悟を見せなきゃいけない。


「はっ。では、簡単ではありますが、現状を説明いたします。アルビオンは現在、ヴェリスとの戦争をするべきか、しないべきかで揺れており、戦争をするべきだという意見に傾きつつあります。そして、その後ろにはストラトスの影があるのは間違いないかと」

「ストラトス……。忌々しい名だ。それで? ストラトスの狙いは?」

「間違いないのはソフィア様かと。そして、おそらく大陸に争いの火種を生み出していく事も目的の一つかと」


 ストラトスの目的ははっきりしない。だが、確実なのはソフィアを狙っている事。そして、その行動が戦争に直結している事だ。あいつが意図してそうしているのかは知らないが、とりあえず、今は目的の一つに戦争を入れておいても問題ないだろう。


「なるほど。アルビオンが動けば大陸全土で戦いは起きるな。アルビオンをヴェリスに攻め込ませるのは効率的な戦争の起こさせ方だな」


 流石に軍事関連の話題だと尋常じゃなく頭の回転は早い。どうしてそれが普段に活きて来ないのかが不思議で仕方ないが、元々軍事特化の人だし、今は説明の手間が省けたから良しとしておこう。

 俺は大きく頷き、俺はソフィアについて説明を始める。


「その通りです。そして、その最悪の事態を防ぐ為に、ソフィア様はヴェリスにやってきました。アルビオンの内から発した声では人々に声が届かない可能性があります。だから外から声を発し、戦争を止める事があの方の目的です」

「そして、追われたか。他の三カ国は便乗したか、ストラトスに操られたかと言った所だろう」

「はい。こちらの国境守備は薄くなっていたのも原因かと。そのせいで我々は前に進む事も後ろに下がる事もできなくなってしまいました」


 暗に貴様のせいだと言いながら、チラリとベイドを見るが、ベイドはどこ吹く風で飄々としている。食えない男だ。バレバレの惚け方をする。

 今は相手にするだけ無駄か。とりあえず、邪魔をして来ない限りは無視するとしよう。


「そうだな……。だが、手がない訳ではない。他国と協力しさえすれば、戦争は回避する事ができるだろう。五大国の内、我らヴェリスとアルビオンを除いた三カ国。東のアイテール皇国、西のインペリウス帝国、北のルクルム共和国。その内、アイテール皇国とインペリウス帝国の使者はまだこの城に留まっている。小国連合の使者を焦って処罰していれば、すぐに祖国に帰っていただろう。その点で言えば、あの場を収めたそなたの功績と言える。そんなそなたが……」


 何故、軍を王都に入れたのか。

 強い言葉。別に声を荒げたとか、大きかったと言うわけじゃない。ただ、よく通る声と射抜くような視線がそう思わせただけだ。

 だが、そう思っただけで十分だ。なにせそう思わせる意図がカグヤ様にあったというのが俺は分かった。分かってしまった。

 今、この人は俺を味方とは思っていない。敵とも思っていないだろうが、かなり敵に近いとは思っているだろう。答えを間違えれば、この場から退出させられる可能性が有り得る。いや、もっと拙い状況も有り得るだろう。

 ディオ様も少し顔がこわばっている。流石に今のカグヤ様はディオ様でも怖いらしい。ベイドは少し笑みを浮かべている。俺がカグヤ様の不興を買ったのが楽しくて仕方ないのだろう。こいつは完全に俺を敵と見ているな。本当に何なんだろうか。この国は。

 先王といい、ベイドといい、自分の欲望に忠実過ぎだ。周りの事を考えるという発想は無いんだろうか。

何故、ヴェリスの為に動いているのに疑いの目を受けねばならないのか。全くもって納得がいかない。いかないが、このまま誤解を受けたままでいる訳にはいかない。


「私が軍を王都に入れたのは、ソフィア様を守る為です」


 王の間が一瞬で凍りついた。幾つかの険しい視線が俺に注がれる。いや、そんなのは気にならない。問題なのは俺を見下ろす視線だ。


「私が……ソフィア・リーズベルクを害すると思っているのか……?」

「では問わせていただきます。アンナ・ディードリッヒ近衛隊長はどちらに居るのでしょうか?」


 俺が居て欲しいと願ったのはアンナだ。だが、居なかった。では、どこに居るのか。簡単だ。ソフィアの周りを固めているのだろう。


「ソフィア・リーズベルクの警護だが?」

「失礼を承知で言わせて頂きます……監視と隔離の間違いでは?」


 カグヤ様が目を釣り上げ、俺を睨んでくるが、俺はこの時、初めてカグヤ様と視線を合わせ、ぶつけた。


「ユキト……何が言いたい……?」

「国の為に利用するべきだと、進言を受け、受け入れましたね。そして、あなたが受け入れると思ったから、俺は自らの部隊を王都に入れました。あなたが過ちを犯しそうになったら、力づくでも止める為に」


 俺は片膝をついた状態から、膝を浮かして立ち上がる。カグヤ様の許可を得ていない無礼な行為だが、最初に無礼を働いたのはカグヤ様だ。


「俺を信じて独立部隊の権限をお与えしてくださったのだと思っていました。ですが、違ったようですね」

「ユキト……?」

「俺はソフィア様を守ると、助けると言い、ソフィア様はその言葉を、俺を信じてこの王都に来て下さいました。命と誇りをかけて、守ろうと思いました。この名に誓って、必ず助けようと思いました。けれど、俺の決意も誓いも、あなたは汲み取ってはくれないのですね」


 会話には主導権がある。先ほどまではカグヤ様にあり、今は俺の手に主導権はある。

 カグヤ様には申し訳ないが、今回は手加減無しだ。誇りや決意なんて、本当を言えば、どうでもいい。今、少しだけ燻っている怒りは、何故、進言を受け入れたのか、だ。

 近衛隊に囲まれるソフィアが何を思うのかと考えないのだろうか。ソフィアがもしもヴェリスを見限れば、戦争を止める事はできなくなるだろう。いや、激化の一途を辿るかもしれない。

 ソフィアの信頼は絶対に勝ち取らねばならないのに、何故、この人は愚かな選択をするのだろうか。

 この人はもっとできる筈なのに、もっとやれる筈なのに。

 少しの苛立ちと、大きな不信感を込めて、俺はカグヤ様を見つめる。


「俺に不信感を抱いたようですが、正しくは逆です」

「ユキト! 少し落ち着くんだ!」

「黙っていてください。これは俺の問題です」


 本当はノックスを王都に入れたのは牽制と最後の手段のつもりだった。だから、ノックスの部隊長にも王城の外で待機していることを命じた。王城の中で何かするつもりなど無い。そういう意思の現れだった。

 けれど、この人は何も汲み取ってはくれない。

 俺は向けられた疑心の視線を思い出す。


「あなたは俺の忠誠を見極めるつもりだったかもしれませんが、俺もあなたを見極めていました」


 俺はゆっくり懐から短剣と取り出し、羽織っているコートを脱ぐ。

 この二つはディオ様から送られたモノだが、この二つが俺の今の権限を示すモノだと言っていい。

 つまり、これがヴェリス王国の独立部隊・ノックスの総隊長、アークライトの軍師と呼ばれる俺の全てだ。この二つを捨てれば、俺はただのユキト・クレイだ。


「あなたに仕えていて良いのかどうかを」

「……私が仕えるに足りない主だと……そう言うのか……?」

「少なくとも、今までの行動、言葉ではそうなる可能性は高いかと」


 その言葉を聞いたベイドがニヤリと笑って、俺を指差しながら告げる。


「あまりにも不敬だぞ! 衛兵! ユキト・クレイを捕らえよ!」


 そんなベイドの言葉に僅かに反応を見せ、俺に近づこうと一歩踏み出した衛兵を振り返って見て、俺はベイドを指差しながら告げる。


「あそこにいるのは主の胸を揉んだ不埒な男だが、捕らえなくていいのか?」

「な!?」


 カグヤ様が微かに顔を赤くしてそう叫ぶ。ベイドは顔を引きつらせている。俺との初対面の際に、おちゃらけさを前面に出して、油断させようとした行為だろうが、あれほどの不敬はなかなか無い。


「……それは事実か? 宰相殿」


 ディオ様がキレ気味でそうベイドに聞く。まぁそうなるよな。いつかの為にわざと言わなかったが、こんな所で言う事になるとは流石に思わなかった。


「さて、その件はまた後ほど。俺から聞くのは一つだけです。ソフィア様を利用しますか? 答えによっては」


 一人の臣下を失います。

 ある種の脅しを掛ける。かなり最低な行いだが、この人にはこれくらいしなければ伝わらないだろう。

 俺はこの人に愚かな選択を取って欲しくない。戦場を駆ける時のあの凛とした姿のまま、王座に座って居てほしい。王都を攻撃した時のように、正しい決断を迷わずに選んで欲しい。

 そんな願いを込めた俺の言葉に、少しカグヤ様が怯む。

 カグヤ様の瞳に映っているのは怯えや恐怖の類の感情だ。それがまた俺の苛立ちを募らせる。何故、怯える必要があるのか。正しい決断かどうかなんて明らかだ。

 今、考えられる戦争回避方法は、先ほど、カグヤ様が言った通り、他の大国と協力する事。そして、ただ交渉するのではなく、ソフィアにも一緒に交渉の場に行ってもらい、ヴェリスを支持する姿勢を見せてもらえば、他国のヴェリスへの印象は大分変わる。いや、ソフィアが居なければ、ヴェリスを支持する方向には持っていけない可能性は高い。それだけ先王の代のヴェリスは印象が悪い。

 だからソフィアをできるだけ尊重し、ソフィアが自発的にヴェリスに協力してくれるようにするのが大切だ。嫌々では見抜く人は見抜く。そして、今、ソフィアを近衛隊が警護の名目で、厳重そのものの監視をしていることは、他国に知られると思った方がいい。他国だって隠密を持っている。国境のいざこざを知れば、王都に隠密を派遣するくらいはするだろう。そして、そんな隠密に情報を売る者も居るだろうし、レンと同程度の技量があれば、王城への侵入は難しくない。

 そこまで思考し、俺はカグヤ様がこちらを縋るように見ている事に気付く。


「ユキト……そなたは私よりも……ソフィア・リーズベルクを取ると、そう言うのか……?」

「返答次第では。俺を失望させないでください。カグヤ様」


 失礼な物言いを咎める者は誰も居ない。ここに至って、ようやくこの場にいる全ての者が悟った。俺の本気を。

 今ここで、力ずくで俺を捕らえる事は難しくはない。むしろ面子を考えれば簡単だろう。だが、だれもが、その後を考えていた。外にいる俺のが部下たちが動くのではないか。俺が何か用意しているのではないか。そんな疑念は疑念を呼び、多くの者を縛り付けていた。その中にはベイドもいる。胸を揉んだなんて、アホな事を言ったが、俺は重大な事をまだ言ってはいない。

 いつでも殺せた。そうベイドは言った。そして、それを成す為の武器を今も装備しているだろう。カグヤ様の信頼を削ぐには十分な破壊力を持っている。ベイドとしてはそれは避けたいのだろう。

 この場で唯一、動ける可能性があるのはディオ様だが、ディオ様は俺が無策であるのを知っても動けないだろう。

 風の最高位の魔術師であるソフィアは、その気になれば遠く離れた場所の会話を拾える。

 それをディオ様は知っている。ここで迂闊な発言をすれば、聞かれるのを分かっているから、先ほどからディオ様は口を挟めない。ディオ様としてはカグヤ様に与したい所だろうが、それをするとソフィアを利用する側に回ると言う事だ。動くに動けないだろう。

 だから、この場を収められるのはカグヤ様だけだ。


「お答えください。利用するのか、しないのか。そしてしないのであれば、確約を。するのであれば、俺はお暇を頂かせてもらいます」


 ジッと俺はカグヤ様の目を見つめる。絶対に嘘は許さない。この場を逃れる為の言葉なら、絶対に見抜く。そういう強い意思はカグヤ様にも伝わっているだろう。

 既にものは卓上に出揃った。あとは、二つの選択のみだ。

 そう思った瞬間。

 王の間に優しい風が吹いた。誰もが一瞬、何が起きたか分からず、戸惑い、しかし、その風が妙に心安らぐモノだと感じた。

 俺は少し落ち着きを取り戻し、気付く。

 俺が見つめていた盤上の外。動くはずのない駒が勝手に盤上に乗ってきたのだと。そして、この場の主導権が俺から離れたと。


「安らぎの風。精神を安定させる効果があります」


 耳に心地よい声が王の間に響く。誰もが開かれた扉を見る。

 白いローブに青い肩掛け。至上の乙女の正装を身に纏い、煌びやかな宝石よりも、荒野に力強く咲く一輪の花よりも美しい姿をした女性。

 例えるなら太陽のように眩しく、月のように神秘的な美女。

 ソフィア・リーズベルクが王の間に入って来ていた。

 皆がその美しさに息を飲み、その姿に釘付けになった。


「お初にお目にかかります。カグヤ陛下。疾風のソフィア・リーズベルクです」


 カグヤ様はそれに答えれない。なにせ、ソフィアがここにいると言う事は、近衛隊が突破されたという事だ。だが、騒ぎは全く聞こえず、なにより報告も来てはいない。


「魔術を使い、抜け出して来ました。場が荒れているようだったので。皆様、落ち着かれましたか?」


 聖女のような笑みを浮かべながら、ソフィアは優雅な動作で俺の隣に並び、片膝をついた。


「事態は一刻を争います。それ故、勝手をしました。まずはそれを謝罪いたします」

「ソフィア様……」

「ディオルード様は私が遠くの声を拾える魔術を持っているのを知っておられますでしょうか?」

「……ユキトから聞いています」

「失礼を承知で、その魔術を使い、この場の会話を聞かせて頂きました。ですから、皆様が私をどう扱おうと思っているのか、これからどう動こうとしているのかは、分かっています」


 シーンと静まり返った王の間で、ソフィアの声だけが響く。

 ソフィアの魔術を知っていた俺とディオ様はともかく、カグヤ様やベイドは驚きを隠せないようだった。そして、チラリと俺を見たカグヤ様は、納得した表情を浮かべる。そして、すぐにそれは寂しげな表情へと切り替わる。

 俺が言質を取ろうとした理由が分かったのだろう。ソフィアにその言葉を聞かせる為だ。

 一度、口にした言葉を国王は簡単には取り消せない。そう思っての行動だったのだが、色々とぶち壊しだ。


「ユキト。あなたの思いは嬉しいです。けれど、私はこのヴェリスに不和を招くために来た訳ではありません。あなたがカグヤ陛下と対立すれば、利を得る者は、戦争を望む者です。どうか、そのコートと短剣を、元に戻してはくれませんか?」


 そう言われて、俺はしばらく迷ったあと、短剣を懐に戻し、コートをまた羽織った。既に計画はめちゃくちゃだ。ここはソフィアに任せた方が良いだろう。


「カグヤ陛下。ユキトの行いを許して頂けますか?」

「……ここまでされて、もう一度変わらぬ信を置けと? 今のユキトはまるであなたの臣下だ」

「ユキトの真意を見抜けませんか? お教えしなければわかりませんか?」


 ソフィアが少しだけ言葉を強めに発する。

 片膝を付き、見上げる形のソフィアだが、その姿はとても大きく見える。これが至上の乙女としてのソフィアの姿なんだろう。


「無論、私を正そうと動いたのは分かる。だが、私の為と言うよりは、それはあなたの為であろう?」

「違います。ユキトは……カグヤ陛下に正しくあって欲しかったのですよ。自らに唯一勝った相手に、強く、気高く居て欲しかった。それがユキトがカグヤ陛下に求める王としての姿で、それから逸れたから、ユキトはカグヤ陛下と対立したのです。大陸に名が響く、アークライトの軍師。ご自分では扱えぬと思いになるのなら、私の臣下として是非、頂きたいと思います」


 挑戦的な目をソフィアはカグヤ様に向ける。それがカグヤ様の何かに火をつけたのか、カグヤ様をその目を睨み返して告げる。


「余計なお世話だ! ユキトは私の軍師だ! あなたにはやらぬ!!」

「では許すと?」

「無論だ! 私はそこまで小さい王ではない!」


 カグヤ様は玉座から立ち上がり、そう言い放つ。それを聞いて、ソフィアは笑みを浮かべる。


「では安心です。この話は終わりといたしましょう。私は戦争を止めたいと願っています。それが実現するなるなら、利用されようと構いません。カグヤ様は戦争を回避するおつもりだと判断いたしましたが?」

「私は好き好んで人や国と争う気はない。それが国民を巻き込むなら尚更だ……」

「では、私はヴェリスに協力いたしましょう。ただし、ユキトを変わらず軍師として重用する事をお約束ください。ユキトが居なければ、おそらく他国との交渉も纏まらないでしょう。そして私も協力は致しません。お約束して頂けますか?」


 既にこの場はソフィアに飲まれている。勿論、カグヤ様もだ。手の平で転がされてると言った方が良いだろうか。

 俺は自分の立場を使って、カグヤ様にソフィアを利用しないように突きつけた。ソフィアは自分が利用される事を、敢えて自分から良しとした上で、俺の安全を約束させようとしている。

 結局の所、結果はあまり変わらない。利用されていても、戦争さえ起きなければ良いとソフィアが思っている以上、大事なのはヴェリスが戦争回避に動く事。その一点だ。

 ソフィアが利用される事を避ける為に俺は頑張ったつもりなのだけど、あっさり本人が受け入れるのを見ると、何とも言えない気分になる。なんというかブルーだ。

 それに、こうもあっさり交渉を自分の思った通りに運んでいく姿を見ると、ちょっとソフィアと言う少女への評価を改めなければいけない。


「……分かった。ユキトには今まで通りの立場を保証するし、私も同じく信を置こう」

「では、交渉成立です。私を受け入れて下さり、感謝します。カグヤ陛下。そしてヴェリスの皆様方」


 そう言って立ち上がったソフィアの姿は、太陽のように眩しかった。


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