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異世界占い師・ミシェルのよもやま話  作者: Moonshine
創造するって事は

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光のさざめきは、暗い空間で作業をするオルフェウスの姿を見せる。


オルフェウスは一つ一つ、何か非常に頼りない材料を積み重ねて空へと続く階段を作り、遠く空のその高い場所にある小説の扉に到達しようともがいている。


積み重ねている頼りない何かとは、本で得た知識であったり、経験であったり、実態のないものだ。


その一方で詩の扉は、オルフェウスの真横で大きくあきっぱなしだ。

これはオルフェウスが生まれながらに与えられた素晴らしいギフトだ。これを、才能というのだろう。


(こんな素晴らしいギフトが与えられているのだったら、このギフトだけで満足すればいいのに)


そう思いながらも、実はオルフェウスの気持ちはよくわかるミシェルは苦笑いだ。


ミシェルは結構童顔なので、可愛い系のお洋服が良く似合うのだが、可愛い系ファッションはミシェルの好みではない。

ミシェル本人が着たいのは、モード系。

全くミシェルに似合わない大人っぽいエッジの効いたお洋服やメイクだ。


似合わないのはとことん分かっているが、スモーキーアイの大人っぽいメイクにボディラインを強調したかっこいいドレスが好きなのだ。


「可愛いが似合うんだからそれで満足しておけばいいのに」と、スモーキーアイが似合わな過ぎてタヌキみたいな顔になったミシェルを笑ってくれた友人たちをちょっと思い出す。

きっとオルフェウスも同じなのだろう。


映像は、残酷にもオルフェウスの努力が決して実らない事も見せている。

頼りない材料を一生懸命積み重ねて扉に到達しても、扉に合う鍵をもっていない。


開かない扉をがちゃがちゃやっているうちに積み重ねた階段は崩壊して、オルフェウスは地にたたきつけられる。いたそうだ。


オルフェウスは懲りずにまた、そこから頼りない材料をかきあつめて小説の扉への階段を何度も、何度も作っているのだ。


(これは努力の中でも、無駄な努力ね)


ミシェルはぼんやりと田舎の事をまた思い出していた。

田舎には根性論でなんでもできると考えている人間が一定数いたものだ。


高校時代のクラスメイトの柔道部の女子が、その類いの人間だった。

その女の子は果敢にも、同じ相手に、高校時代合計三回も告白しては毎回綺麗に玉砕しているたのだが、「決して諦めないの」と振られる度にほかのクラスの女子に宣言する彼女を、褒めそやかすほかの女子たちを尻目に、白い目でミシェルはみていたものだ。


折角振られた男に何度もチャレンジできるだけの努力と根性を持ちあわせているのなら、なぜ努力の方向性を変えて、その根性で自分を徹底的に磨いて美しい女の子になって、好きな男の子を振り向かせる努力をしないのだろう。


なぜうっすら生えている鼻の下の産毛すら剃らずに、相手の男の子に自分の気持ちを押し付けることばかりの努力に専念するのかと、他人事ながらなんだか腹が立ったものだ。


まあ風の噂によると、そんな彼女はもう早々にその彼とは違う他の男と結婚して、現在は3児の母だと聞いてたので、ミシェルの考え方が正しいわけでもなさそうなのだが。


ともかく、努力には無駄な努力というものが存在する。

オルフェウスはもう10年も同じ方向性の無駄な努力をしてずっと、ずっと失敗している様子だ。


(うーん・・努力の方向性がそもそも違うって事よね)


ミシェルは名前も思い出せない柔道部の努力の方向性を間違えていると思うクラスメイトだった女の子の事をぼんやり考えながら・・


そして気が付いてしまった。


「方向・・あ!」


「どうしましたか、ミシェルさん」


ミシェルはオルフェウスの問いかけを無視して、今まで全く注意を払っていなかった、映像の中のオルフェウスの足下に意識を集中してみた。


「あるじゃん! 下にも!」


暗い映像のオルフェウスは、上に、上にと頼りない階段をつくっていたのだが、よく見ると、オルフェウスの足元にはぽっかりと大きな穴があいていて、穴の奥にはオルフェウスが目指していたものと、まるっきり同じ扉が鎮座していたのだ。


「上からいけないなら下からいけばよかっただけじゃない!」




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