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異世界占い師・ミシェルのよもやま話  作者: Moonshine
創造するって事は

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81/113

あるときは高く、低く、切なく、愛おしく。抑揚のある声で、男は様々な歌を歌い上げた。


(なんて美しい歌声なの・・)


ミシェルは美しいものが大好きだ。美しい声にも心惹かれる。

おおよそ小一時間の道のりを、ミシェルの乗合馬車の面々は、ずっとこの男の歌声と共に、あった。


「あの・・素晴らしい歌を、ありがとうございます!」


小一時間の馬車の旅を終えると、皆それぞれ冬の海に飛び込むベストスポットに陣取りに行く。

ミシェルはおばあちゃんにさよならを告げると、陣取りなんぞ目もくれずに、まっしぐらにイケメン吟遊詩人の元に走っていった。


イケメンは、少し驚いた様子だったが、にっこりと笑って、


「楽しんでいただけて光栄です、美しいお嬢さん」


とスッと深く礼までするではないか。もうやられた。カッコいい。

ここはもう、反射神経のごとくミシェルのハンター本能が機能してしまう。


薄着なのをいいことに、寒そうに体をぎゅっと抱きしめて、自然に胸の谷間を強調させながらも、ゆっくりイケメンに近づいていきながら、ミシェルのハンティングの開始だ。


どうやらミシェルのようなハンターにあまり慣れていないのか、この線の細いイケメン、ミシェルが強調させた胸元に目が釘付けになっている。しめしめ。うまく引っかかった。


ミシェルはゆっくりと近づく。


「本当に素晴らしい歌でした。私心が洗われてしまって、海に飛び込まなくとも穢れが払われたような気がしたくらいでした」


「ほ、本当ですか、ありがとうございます!僕そんな事言ってもらえたの初めてで、いやあ、嬉しいなあ」


イケメンはパッと赤く、照れた嬉しそうな顔をミシェルに見せる。いい感じだ。

ミシェルは続けた。


「あの、もしや有名な吟遊詩人のお方なのですか?お名前をお伺いしても?」


「あ、私の名はオルフェウスと申します、失礼名前も名乗らずに。こほん、いいえ、吟遊詩人だなんてそんなそんな、とんでもありません。私の本職はアカデミーの古典詩の研究員です。時折吟遊詩人の真似事をする事もありますが、学問の一環といいますか。いやお恥ずかしい限りです。時折といいましても歌を披露するのは実は旅の時くらいで、旅と言ってもここ数年はこの新年の儀式に参加する馬車の中くらいでして・・・」


と照れたように色々言い訳をしながら頭を掻いて、胸元から出した眼鏡をかけた。可愛い。


(という事は、普段は研究員としてアカデミーで詩を研究してるから、あまり女っ気がない。だからの女に対してのこのウブな反応。でも歌を歌わせたらイケメン。でもイケメン本領発揮の歌を披露する機会はほぼ無し。これはかなり掘り出し物ではない・・?)


ミシェルの頭の中の、高性能の恋愛特化AIが自動計算を始める。

よく見ると髪型もちょっともっさりしているし、瓶底のような分厚い眼鏡をかけた姿は先ほどほどイケメンには見えない。

賭けてもいいが、今はみんなお揃いの白い服を着せられているが私服はダサいに違いない。


(つまり。磨けば光る原石ね)


キランとミシェルの目が光る。

AIが回答を弾き出す。

おそらくこの彼、まだ誰にも発見されていないイケメンの原石だ。

こう言うタイプは男慣れしているお姉さまが発見して食い散らかしていくのは時間の問題。


(こう言うタイプは、早い者勝ちよ)


この手のタイプの攻略法は知っている。

ミシェルは作戦を「可愛い女の子に頼られる僕」モードに決断、すぐに執行する。ミシェルも伊達に長いこと独身女をやっていない。


ミシェルはちょっと恥ずかしそうにうつ向きながら、きちんと胸元の谷間は男の視界にガッツリ入るように角度を調整しつつ、ウルウルと上目使いを駆使してお願いしたのだ。


「私、ミシェルと申します。実はこの式典に参加するのは初めてで、何にも分からなくて心細かったんです。よろしかったら、色々私に教えていただけませんか?」

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