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そういう訳で、折角の女子会の数日後。
「いらっしゃい、ビュリダンさん」
ほぼ諦め顔のミシェルが迎えたのは、先日ミシェルが楽しみにしていたデザートを、台無しにしてくれた、お嬢さん。ビュリダンさん、というらしい。
リリーによると、ビュリダンは、この領地の、教育局の事務方をしているとか。
キャリアは可もなく、不可もない、課長補佐くらいのレベルだとか。
「お前が公共の場で、大声で下品な話をしているからだ」
二時間もならんだデザートの、一番楽しみにしてた部分を堪能できず、ミシェルはくやしくて、くやしくて、聞きてを求めてダンテに話をしたのに、事のあらましを聞いたダンテは取り付く島もなく、あきれてそう、ミシェルを見捨てた。
下着屋にいくという一般会話のどこか下品な話なのよ!
そもそも、ただ悔しいという気持ちを、誰かに聞いてほしかっただけなのにと、ミシェルはご立腹だ。
ただこんなつまらない話でダンテと喧嘩になったとは、さすがにカロンには言えず、なんとなく先日は一日、ダンテのいる本館にはよりつかずに、離れの仕事場の整理なんかをしてみてたのだ。
ビュリダンには、リリーが、ミシェルは占い師だから、本当にアドバイスが欲しいのなら予約を取って、鑑定の依頼を出しなさい、ときちんとたしなめてくれて、その後正式な依頼を受け、今日にいたる。
正直、このおさわがせな子が原因でデザートは台無しになったし、またこの子が原因でダンテとしょうもない喧嘩したしで、あまりこの相談には乗り気ではないが、乗りかかった船だ。
「ミシェル、頼むわ。一人でも不幸な女の子が減るように、私からもお願いする」
そんな口では優しい事をいいながら、「未亡人の秘密」の最後の一口はちゃっかり自分で全部堪能したリリーからのお願いもある事だ。
ミシェルは、ビュリダンを部屋に招き入れて、鑑定の準備にはいった。
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「それで?ビュリダンさんはなにをみてほしいの?」
仕事は仕事だ。
ミシェルもあまりやる気が起こらなかったが、聞く体制に入る。
「ええ、なんか毎日つまらなくて。どうやったら他の人みたいに、彼氏ができたりするのか、教えてほしいとおもったんです。みんな私と同じような暮らしをしてるはずなのに、どうして彼氏ができるのか、どこにそんなチャンスがあるのか、不思議に思って」
たしかに、ビュリダンは本当につまらなそうだ。
今日のビュリダンの装い一つ取っても、可もなく、不可もなくだ。
白いブラウスに、紺のスカート。銀のアクセサリー。
だれが見ても、可もなく、不可もない。
顔の造形は悪くない。特徴のない顔つきだが、化粧映えする顔だ。
だが、「義務で化粧しています」という雰囲気満々の化粧の仕方をしている。
ミシェルが化粧する時は、ちょっとでも目が大きくみえるようにだとか、顔の凹凸がはっきりするように、だとか、春っぽい感じの演出、だとか、素敵な色のリップを纏いたかったから、とか、何かの目的があって、それを体現するために化粧をする。
だがこの娘の化粧からは、何も感じない。
この若さで、なぜこんなつまらなさそうなのだろう。
まあ、いい。
「そうね、ビュリダンさんは、どんな彼氏がほしいの?」
とりあえず、この子の理想を聞いてから、鑑定に入ろうかな、そう思っていたミシェルなのだが。
ビュリダンは、少し考えて、それからもう一度考えて、
「・・?さあ?」




