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異世界占い師・ミシェルのよもやま話  作者: Moonshine
モテない女には、具体的な理由があるものだ

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53/113

ミシェルは、急に知らない人から、いきない話しかけられて、固まってしまったのだが、リリーはさすがというか、現役のバリキャリだ。落ち着いて、しかもちょっと優しいトーンでこう、諭した。


「どちらの方かしら?お嬢さん。下着の話なんて、親しい友人との間でしかしないものなのよ」


あまりミシェルは隣のテーブルに誰がいるのかなんて気にかけなかったが、どうやらこのお嬢さん、隣の席で、一人で食事をしていたらしい。


このレストランには、ミシェルもリリーも、「未亡人の秘密」を楽しみに食べに来ていたのに、このお嬢さんは、普通のサンドイッチと、普通のアイスクリームを頼んでいた様子。

正直、こんな人気店でオーダーしなくても、どこでも食べられるセレクションだ。

なんだか、妙な人だ。


リリーにここは会話を任せて、ミシェルはこのお嬢さんを観察する事にした。

お嬢さんは、案外図太いらしい。悪びれずに、まっすぐリリーを見て、


「ええ、失礼かとは思ったのですが、私、いままで彼氏がいたことがなくて」


そういった。


ぶっちゃけ、リリーの時も、そんな事を聞いてびっくり仰天したのだが、リリーとは違い、このお嬢さんの場合は、ああ、そうかもしれないね、というのがミシェルの印象だった。


何というか、このお嬢さん、何一つ面白みがないというか、表情一つとっても、詰まらなさそうなのだ。

服装は地味で、色味がない。形も、この国の定番。無難で普通。

髪の毛も、まあ綺麗にまとめているが、つまらない。

お化粧もしているが、なんの、面白みもない。おそらく、本人も楽しんで化粧しているわけではなさそうだ。


リリーの時は、なんというか意気込みというか、気合と計算ががっつり感じられた残念感のあるタイプで、ちょっとそういう残念かわいさが魅力につながったのだが、どの角度から見ても、このお嬢さん、魅力が感じられないのだ。


リリーは、元・彼氏いない歴年齢だった事もあり、美しい眉をひそめて、相談にのってやるモードだ。

こういうお人よしで素直な所もやっぱり可愛いと、ミシェルは思う。


お嬢さんは淡々と、続ける。


「下着は私、黒しかもっていないので、少し耳にはいってきた会話が、興味深くて、声をかけさせていただいたんです。私に彼氏ができないのは、黒い下着のせいでしょうか」


どうやらこのお嬢さんなりに、真剣になやんでは、いる様子。


「ええと、下着が黒だから、っていうよりも、下着さえ黒い、っていう所がポイントなの」


ミシェルは傍観者になる予定だったのだが。


「きっと、貴方の家は、白い壁で、寝具は灰色か、白か、せいぜい紺なんでしょ?飲み物だって、柄の一つもない無地のカップで飲んでいるわよね、きっと。それに部屋に切り花の一つも置いてないとおもうわ」


あまり深く考えないで、ミシェルはそう、口にしてしまった。


そんな事より、「未亡人の秘密」最後の一口だ。この為に、リリーは残業を重ね、ミシェルも朝から朝食を半分しか食べてこなかったのだ。


最後の一口は、アイスクリームの中に隠された、温めた、小鳥の卵の卵黄のはちみつ漬け。これが、「未亡人の秘密」の「秘密」の部分らしい。

浸透圧の関係で、この卵黄ははちみつと同化して、えも言えぬ官能的な味になっているとか。

このふるふるの卵黄を咀嚼すると、ぷちん、とはちみつと同化した、温められた卵黄が口にあふれ、冷たいアイスクリームと混ざって、なんともいえないねっとりとした食感に仕上がるという、実にエロいデザートなのだ。


そうやって、あーん、と「秘密」をほうばったミシェルは、とつぜん目の前のお嬢さんに首根っこをつかまれて、ぶんぶんとゆさぶられ、折角の「秘密」は無残にもそのまま、舌を通過する事なく、ミシェルの食道に、吸い込まれていった。


「何で!わかるんですか!!!寝具は灰色です!!壁は白です!!花は、花瓶すら、うちにありません!!」


「ぎえええ!!ちょっと!!おちついて!!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 日本だとナチュラルな木目調の家具かなーて思って読みました(^^)
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