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異世界占い師・ミシェルのよもやま話  作者: Moonshine
幕の内弁当

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35/113

7

ミシェルは、リリーに、次の週から、仕事が終わったらまっすぐ、ミシェルの元を訪れる事を要求した。

いきなりマニュアル人間が、非マニュアル化など、自力ではできないのだ。

ミシェルは腹をくくって、このリリーの面倒を見てやる事にしたのだ。


「ねえ、ミシェルさん、こんな事するために、大切なゾーハ語のレッスンを休ませたのですか?」


リリーは毎日毎日ぎっしり、王宮外での人脈構築だのキャリアに必要な知識だのを深めるなんたら、王宮の人間関係を円滑にするためのパーティー出席だの、ともかく役にたつことばかり、しているのだ。


「そうよ、リリー、貴女に一番必要なのは、余白よ。こっちをがんばりなさい」


涼しい顔をして、ミシェルは目の前のミカンを並べる。

ちなみにゾーハ語は、隣国の共通言語らしい。

これが上手に使えると、外交に有利だとかなんだとかで、かなり重要なレッスンらしいのだが、ミシェルのしったこっちゃない。この不器用な行き遅れ気味のリリーの幸せの方が、国家事項より大切だ。


今二人で、一生懸命にやっているのは、ミカンによく似た果物を、どちらが早く高く積めるかの、競争。

ちょっとコツがあるのだが、これはミシェルは子供時代から、なぜだか得意なのだ。


ミカンの塔を倒したら、しっぺ。

いとこ達とあそんだ素朴な遊びだが、絶対にミシェルに勝てないので、ミシェルは殿堂入りして、いとこ達の競争を眺めていたものだ。だれにでも妙な特技はあるものだ。


リリーにはこの、絶対にこの先の人脈構築にもキャリアにも、美容にも何一つ役に立たない遊びを、押し付けている。


「なんでもするわって言ったのはリリーじゃない。リリーが私に勝つまでは、付き合うって話よ」


そう、ミシェルは涼しい顔して、リリーに毎日遅くまでつきあわせて圧勝しているのだ。このしょうもないゲームに。


 その後、愚かなまでに真面目なリリーは、こんなくだらない事でもうんうん頑張ってしまって、ミシェルに負けるのが悔しくて、夜までがんばって、それでも勝てないもんだから自主練しようと、なんとミカンの山をうんうん持って寮に帰っている所でミカンをぶちまけてしまって、夜勤だったちょっといい感じの騎士に助けてもらったらしい。


騎士に大真面目で、こんな夜におおきなミカンの山を一人ではこんで寮に帰る理由を説明した所、爆笑されてしまって、面白がって今度一緒に練習につきあってくれるって、と頬を赤らめて報告してくれた。


ーリリーさんは近寄りがたい完璧な美人だとおもっていたけれど、こんなお茶目な一面もあるんですね


そう騎士は言っていたとか。

クマみたいな見かけだし、身分も子爵の次男だし、騎士としては普通なんだけどね、優しいし、一緒にいて楽しいのよ。べ、別に


そうリリーは、頬をそめていた。

まだミカンを積む練習を一緒にするだけの余白だし、ちょっといい感じの雰囲気の友人ができただけだが、こうやってすこしずつ、余白を広げていけばいい。

広がった余白が大きくなれば、するり、と余白に、だれかが入ってくれるだろう。


そうミシェルは、やっぱりミシェルに勝てずに癇癪を起しているリリーを温かい目で見守った。




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