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異世界占い師・ミシェルのよもやま話  作者: Moonshine
幕の内弁当

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33/113

「リリーさん!!真ん中は、空洞じゃないと、車輪って動かないのよ、知ってた??」


「わかる?私のいいたい事!」


「ちょ、ちょっとまって、何言ってるのかわからない」


ミシェルに首元をつかまれて、ブンブン振り回されて、リリーは窒息寸前だ。


「あなた、何も入り込む隙がないのよ!だからなんにも、動かないのよ!」


びし!とリリーを指さすミシェルの鼻息は荒い。

ミシェルも悔しいのだ。あの努力はなんだったんだ、ちきしょう!


ミシェルがこんなに怒っているのは、ミシェルもうっかり勘違いしていた、「隙」の正体が、リリーのおかげでわかっちゃたからだ。


隙とは、余白だ。きっと何も自分の意図が、入っていない部分。何かの力が入り込める、余裕だ。

リリーは完璧に自分を演出しすぎて、後ろ髪のおくれ毛ですら、計算の元つくられていて、何の要素も入ってこれないほど、ぎっちぎちで、動けない状態だったのだ。


(そういやアメフトのルールは知らない方がいいって、先輩いってた!)


ミシェルは悔しくって、きー!となってしまう。

アメフト部との合コンの時は、ミシェルはガッツリルールから選手から先に勉強して話題を仕込んでから挑むのに、いつもキャプテンかっさらっていくのは、「ルール教えてください」とのたまう、何も知らない一年生のぽやっとした女の子だった事を思い出した。

お医者さんと結婚した先輩は、ミシェルより女子力は上手だったが、先輩の教えがいまやっと、ストンときた。


くそう、これが、隙だ。これが余白だ。


ミシェルは、上から下まで、がっつり頭の先から爪先まで、隙なく人の手が入ってた方が、絶対にいい女なんだと信じていた。話題も完璧、ファッションんも完璧。

それからいい女の方が、いい女じゃない女より、絶対に、モテルと思っていたのだ!


そして、ミシェルの声に呼応するように、さきほどまでぎっしりつまっていた、光の粒が形どっていた車輪の真ん中に空洞ができると、光の車輪は、そのまま動き出した。


きっと、隙というのは、車輪の真ん中のの空洞のように、エネルギーを前に進めるには、なくては、ならないもの。

何か力が入り込むだけの、余裕。リリーのエネルギーは、外からなにも入る余地がないくらい、ぎっちぎちに自分を固めていて、硬直状態だったのだ。


(がんばれはがんばるほど、リリーさん縁遠くなってたってわけだ・・)


どう考えても、リリーの状況が他人事ではないミシェルは、がっくりと肩を落とす。


「頭が悪い働きモノが一番始末が悪いわ」


そうため息をついていたのは、やっぱり、いつも正しいミシェルのおばさんだ。


畑の収穫バイトの高校生が、収穫した全部のネギに、間違えてニラの値札を張ってしまって、結局二度手間になって大変だった事があるのだ。

やたら勤勉な子だったため、他のバイトの子がまだ半分もおわっていないネギの値札付けを、一人で他の子の倍もおわらせちゃって、叱るに叱れなかった。ミシェルも値札はがしに手伝わされたのでよく覚えている。


(やっぱりおばさんはいつも正しいわ)


こんな所で自分のあまりモテない部分の理由と、やっぱりおばさんの正しさを骨身にしみて理解してしまい、なんだかミシェルが泣いてしまいそうだ。



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