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異世界占い師・ミシェルのよもやま話  作者: Moonshine
お水の神様がついているのに、お水にならないのは、不幸な事だ

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キラキラと輝く光は、二つのサイコロを包み、二つの数字を示した。


ミシェルは、祈るような気持ちで手元の歌詞集のページを繰る。


ページが指示したのは、ミシェルが、どの男とだったか、コンサートに行ったこともある、割と有名な歌手のヒット曲だ。ミシェルは、ゆっくりと歌詞を読んだ。


「人は泣いてばかりじゃない、貴女の涙が枯れ果てたら、そしたら一緒に海にいこう、海でおよぐ君はきれいだ」


「人魚のように自由に泳ぐ君はきれいだ」


「君はきれいだ」


そして、光の粒は、お酒に酔っているのだろうか、少し赤い顔をして、海際ではしゃぐ、人魚のように美しい女の姿をみせた。


女は晴れやかな顔をしていた。

自由を取り戻したように光り輝く女は、幸せそうだった。


そして多くの煌びやかな男たちが、波と戯れる女のその手を求めて、追っていた。

そして、そのしなやかに伸びる手には、たくさんの、剣ダコ。


ミシェルは、笑ってしまった。


後ろの光の粒は、妖艶にほほ笑むと、片目をつぶって、ミシェルの思考にはいりこんだ。


(なるほど。割と簡単な話だわ)


ミシェルは思考がゆったりと入り込んでくるのを心地よく受け取りながら、妙に納得してしまった。


アランの母は、アランと同じ水の神様の、強い祝福をもっていた。


だが、アランの母には、祝福を御するほどの、人間の器がなかったのだ。

祝福の引力の強さにに抗えずに、水の女神の祝福の衝動の元に、人生を歩いた。

アランの母は、水の女神の祝福の力に飲まれ、人生を支配され、祝福という名の呪いの、奴隷となったのだ。


祝福と呪いは、表裏一体のもの。


強すぎる祝福は、御す事ができなければ、呪いともなる。

アランの母は、その強大な祝福を御すだけの強い器を、もっていなかったのだ。


アランは違う。

アランはその母と同じ祝福を受け、生まれてきている。


だが、心優しい父と、そして兄の為に、自分を律し、己の魂と肉体を鍛え、その本質を封印し、強く生きてきた。


今、水の神の祝福を解放した所で、祝福の引力に、引きずられたりはしない。

人生を、飲み込まれたりしない。

アランは、水の神の祝福を、正しく祝福として受け取る事ができる大きな器を、手に入れているのだ。


(そうよ。アンジェリーナは、勝ったのよ。もう安全なのよ)


ミシェルの、いつも正しいおばさんは、宝くじを買ったり、しないといっていたな。

こんなところでまた、おばさんの事を思い出して、少し苦笑いだ。


「みちちゃん、大きな祝福には、税金がついてくるの。大きな幸福の後は、不幸が一緒についてくるっていうのよ。だから宝くじの高額当選者は、だいたい後で不幸になる事が多いのよ。だから堅実に生きるのが一番なの」


なんてつまらない考え方だ、と当時は感じていたものだ。

おばさんよりもう少し夢みているおじさんは、20枚ほどこっそり買っていたか。


アランとその母の受けた水商売の神からの大きな祝福の厄介さを思うと、やっぱりおばさんは、いつも正しい。


きょとんとしているアランに、ミシェルは先ほどまでの深刻な顔などどこかに行ったかのごとくカラカラと笑って、アランの肩を、ポンと叩いた。


父と兄に大切に作り上げられたアランという人物は、アンジェリーナという哀れな娘への呪いなのでは、なかった。

強力すぎる水の神の祝福を身に受けた、アンジェリーナを、守るための、騎士を、この娘の父は、作っていたのだ。


(愛されていたのね。水の神様からも、そしてご家族からも)


このアンジェリーナを愛してやまない父は、本能的にこの娘を祝福から守る方法を知っていたのだろう。

父の大きな、大きな愛の為す技だ。

素晴らしい、いい父ちゃんだ。本当に。


ミシェルは、ちょっとしんみりとして、それから、このアンジェリーナに付いている神様が、水商売のお姉さま方垂涎の、最強の水商売の神様だったことを思い出した。


ちぇ、ちょっとうらやましいじゃないか。


アランがアンジェリーナに戻った瞬間、本当に瞬間で、彼女を追い求めてやまない男たちが列をなすだろう。

水の祝福を正しく受け取り、御す事ができる器の持ち主であるアンジェリーナは、男たちを手玉に取って、自由自在に祝福を、使いこなすだろう。


ミシェルはちょっと物欲しげにアランの後ろの神様に視線を送ってみたが、神様はどうやらミシェルにはまるきりご利益をくれる気はないらしく、ちらっと目を合わせると、光の粒はさらさらと霧散して、さっさと姿をくらませた。


やれやれ、ミシェルへの用事は終わったらしい。現金な神様だ。


(ちょっとくらい私にも、水の祝福のおすそ分けほしかったところだわ)


ちぇ、と思うが、アンジェリーナを、このがちがちの近衛の騎士、アランの中から出してくる方が先だ。

これは正直、得意分野だ。いっちょ人肌脱いであげる事にする。


「大丈夫よ。もう大丈夫よ。アンジェリーナ、でておいで。今すぐ海辺の酒場で酔っ払って、いい男に追いかけてもらいましょう。大丈夫よ、アランがアンジェリーナの事は守ってくれるから、安心してでておいで!」




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