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長政記~戦国に転移し、家族のために歴史に抗う  作者: スタジオぞうさん
第五章 義兄の死

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八十 北美濃と東美濃の戦い

1571(永禄14)年3月下旬 越前国 一乗谷 遠藤直経

 近江の御屋形様から状況を知らせる使者が来た。

 織田家中は二つに割れたか。

 新九郎様がお方様と結婚された頃は、勢力を伸ばす織田に負けずに浅井も勢力を伸ばさねば、同盟国ではなく属国になりかねないと思っておったが。

 織田の当主が御屋形様に救援を依頼するとは、随分状況が変わったものだ。

 御屋形様からは、某は越前の兵を率いて別動隊として行動するようにとのことだった。

 別動隊を任せてもらえるのは信頼されている証。御屋形様のご期待に応えねば。

 高野瀬殿には2千の兵で国境を固めてもらい、一乗谷にも3千ほど兵を残した。

 某は敦賀の中島宗佐と合流して、越前の兵約1万5千を率いて美濃に向かった。


1571(永禄14)年4月上旬 美濃国 郡上八幡城 朝倉景鏡

 美濃の織田三郎信長が撃たれ、多くの者が蠢動しておる。

 儂には武田信玄から誘いがあった。

 武田は強い。越後の軍神と互角の戦いを繰り広げる一方、上野に進出し、さらに婚姻同盟を破棄して今川領に攻め込んだ。

 そして今川と北条の連合軍を退けて駿河を占領し、共に今川を攻めた徳川と手を切って、遠江も狙って居る。

 信玄は調略も得意だ。織田の家老である林と柴田を寝返らせおった。

 信玄が西上すれば、畿内の覇者となった浅井も危うい。

 朝倉家は浅井と織田の連合軍の前に敗れたが、今こそ捲土重来の好機だ。

 儂が動くとすれば一乗谷を攻めると浅井は思っているだろう。

 だから儂は北美濃を攻めることにした。まず郡上八幡城を獲り、柴田と林と呼応して岐阜城の織田信忠を討ち、その後に一乗谷を攻める手筈だ。

 浅井が美濃の織田を救援すれば、武田が我らの後詰をすることになっておる。

 此度の戦は朝倉家復興のために負けられない。大野郡から出せる限りの兵を集め、6千の軍勢で攻め入った。

 郡上八幡の兵は2千もおるまい。

 城主の遠藤慶隆は籠城したようだが、こちらは3倍の兵がいる。力攻めでも何とかなろう。

 そう考えを巡らせておると、伝令が血相を変えてやって来た。

 「殿、後方から軍勢がやって参ります。」

 「後方からだと。どこの軍勢だ。」

 「それが、三つ盛り亀甲に花菱の旗印が見えます。浅井家の軍勢です。」

 「なにい!なぜ儂がここを攻めると分かったのだ。」

 ここに浅井の軍勢が来るはずはない。

 浅井の援軍は岐阜城に行くはずだ。もし一乗谷から郡上八幡に援軍が来るとしても、半月はかかると思っておった。

 その前に城を落とし、迎え撃つ準備をできると考えておったが。

 「敵の数はいかほどか。」

 「それが、1万5千ほどのようです。」

 「何だと!」

 一体どうなっておるのか。

 これでは、とても勝ち目がない。


美濃国 郡上八幡城 遠藤直経

 城を囲んでおった朝倉勢は6千ほど。大野郡から出せる兵はすべて連れてきたようだが、こちらは1万5千。しかも城を包囲していた敵の後ろを突いた。

 援軍の到来に士気の上がった城兵も門を開いて出て、挟撃する形になった。

 敵兵には無理に徴用された農民も多かったようで、戦いらしい戦いにならず、一方的な殲滅戦になった。

 朝倉景鏡は、浅井に降伏しようとした家臣に討たれた。

 あまり後味の良い戦ではなかったな。酷い形相の景鏡の首を確認すると、某は瞑目して合掌した。

 朝倉を退けたところで、城主の遠藤慶隆殿は九死に一生を得たと我らに深く感謝を述べた。

 誰が美濃の主かよく分かったとも言っていたな。おそらく事が一段落したら、北美濃は浅井に臣従するだろう。

 恐るべきなのは、橘内殿の配下の忍びたちの情報を得る力だ。

 御屋形様が忍びを重用した正しさを痛感させられた。

 もう大野郡にはろくに兵は残っておるまい。この後は中島宗佐が3千の兵を率いて大野郡の接収をする予定だ。2千の兵は一乗谷に戻す。

 某は1万の兵を率い、美濃でもう一つやることがある。


1571(永禄14)年4月下旬 美濃国 岩村城 遠山景任

 家老の林佐渡と柴田権六が兵を挙げた。

 ついに織田家は二つに割れたようじゃ。

 勘九郎殿は優れた若者だが、先代と比べることは酷というものだ。

 林や柴田は先代の三郎様にも逆らったことがある。

 信孝殿を担いだというが、この機に織田家の実権を握ろうと考えておるのだろう。

 さて、遠山家はどう行動したものか。筋から言えば勘九郎殿を支えて戦うべきじゃが、隣の南信濃は武田の領国だ。林や柴田の背後には信玄がいる。

 南信濃は国境に兵を集め始めている。

 どう振舞えば、遠山家を存続させることができるじゃろう。

 考えておると、家臣が慌ててやってきた。

 「殿、大変でございます。」

 「どうしたのじゃ。」

 「西から大軍が近づいております。その数は約1万でございます。」

 「何と。そのような大軍、どこから湧いてきたのじゃ。」

 「旗印は三盛り亀甲に花菱。浅井家の軍のようです。」

 「浅井の援軍が来るとすれば岐阜城の勘九郎のところだろう。何かの間違いではないか。」

 やがて城の前に現れた浅井軍は近江ではなく越前の軍勢だった。

 指揮は一乗谷を任されておる遠藤喜右衛門殿がとっておった。

 「遠山殿。我が主は東美濃を重視しております。もし武田が攻めてきたら、遠山殿を助けて戦うようにという指示を受けて参りました。」

 これは参った。岐阜城に援軍を出して、なお東美濃に1万もの兵を出す力が浅井にはあるのじゃな。

 南信濃との国境には武田の兵がいったん集まったが、こちらの体制を見て、何もしてこなかった。

 武田が東美濃に出せる兵はせいぜい3千か4千くらいだから、当然のことではあるな。

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