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長政記~戦国に転移し、家族のために歴史に抗う  作者: スタジオぞうさん
第四章 越前侵攻と上洛

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六十八 上洛前の諸国の情勢

1568(永禄11)年十二月 近江国長浜城 浅井長政

 浅井と織田の連合軍で上洛することにしたが、ここで周辺諸国の状況を確認しておきたい。

 領地が広がったことで、浅井が気を配るべき勢力は増えた。

 しかも、このところ武田や上杉、北条を巡る情勢は大きく動いている。

 橘内も忍びを各地に派遣して、広く情報を集めている。

 

 まず、軍神上杉謙信だが、このところ、越中で苦労している。

 武田信玄が姻戚関係のある本願寺を動かして、越中の一向門徒を反上杉で行動させたのが大きい。

 謙信は、信玄に調略された椎名康胤を討伐すべく越中に出兵するが、椎名だけではなく越中門徒とも戦うことになり、決着は付かなかった。

 世にいう「放生津の戦い」だ。

思えば、あの軍神の上杉謙信と引き分けたのだから、やはり門徒の一揆は強い。

 しかし、見方を変えれば、本願寺顕如は武田にいいように利用されているようにも見える。

 うちも三条西卿を通じて本願寺に働きかけることはできる。

 越中門徒と上杉謙信の和睦を仲介するかどうか、半兵衛と橘内と検討した。

だが、軍神の謙信が越中から動けなくなることは、浅井にとって悪い面ばかりではないので、当面見守ることにした。

 もし、謙信が越中だけではなく、加賀の門徒とも和睦して将軍を上洛させるために北陸を西進しようとすると面倒なことになる。


 上杉謙信を越中に足止めした武田信玄は、この頃は徳川家康と組んで、今川領を攻めている。

 どうやら駿河を武田が獲り、遠江を徳川が獲るという密約が交わされているようだ。

 後に武田に侵略され、三方ヶ原の戦いなどで窮地に陥る徳川家は、この時期は武田家と協調している。まさに昨日の友は今日の敵であり、乱世らしい。

 そして武田は徳川と組むだけではなく、東の北条にも一緒に今川領に攻め込もうと誘ったようだ。

 しかし、北条はこれを断る。

 北条氏康は武田の誘いを断ったばかりか、劣勢の今川を救援するために出兵する。

 損得だけで考えれば信玄のやり方が合理的かもしれないし、意見の分かれるところだが、俺は氏康のスタイルの方が好きだ。

 裏切りが横行する乱世にあって、北条のように信義を重視した行いは輝きを放っていると思う。

北条家は税が四公六民であったことも有名で、民を大切にする点も特徴的だ。

 もちろん綺麗事だけ言っていて滅んでは身も蓋もない。

 だが、北条氏康は優しいだけの大名ではない。関東における北条の領地を拡大する、やり手という面もある。

 このときも武田との同盟を切るだけではなく、それまで敵対していた上杉謙信と同盟を組んでいる。

 いわゆる越相同盟の成立だ。長年対立していた上杉と組むのは、周囲が驚いたと思う。

 いずれ浅井が武田とぶつかるときには、ぜひ外交において義理固く、内政において民に優しい北条と同盟を組みたい。


 俺は美濃の義兄上とは連絡を取り合い、来年の春の田植えの時期に上洛する方向で準備を進めている。

 織田からは丹羽が何度も近江に来ている。歴史では滝川一益が外交を担当したとも言われるが、ここまでの成り行きから、浅井との交渉は丹羽長秀が担当になっているようだ。

 歴史ではこの頃に信長の嫡男の信忠と信玄の娘の松姫が婚約するが、ここでは婚約は行われていない。

 歴史とは異なり、六角も朝倉も浅井が滅ぼしているので、織田の周囲の敵は少ない。

同盟しても裏切る可能性のある武田と無理に同盟する必要は薄い。

 さらに、信長は西進できない場合に備えて、東に進む選択肢を保持しておこうと思ったのかもしれない。

 西に勢力を張っている浅井との同盟を重視するなら、織田は東に向かうほうが自然ではある。


 河内の三好義継とも連絡をとりあっている。

 浅井・織田両軍の上洛にあわせ、義継と久秀には三好三人衆を挟撃してもらい、一気に畿内を制圧したいと考えている。

 最近の義昭や側近たちは、浅井と織田の大軍を引き連れて上洛すると吹聴しているようだ。自分の軍勢でもないのに大軍を率いて上洛すると言う感覚が俺にはよく分からない。

 朝廷は、空位だった将軍が決まったと思ったらすぐに病死して困惑しているようだ。

 義昭が上洛して三好三人衆を畿内から追い出すなら、将軍宣下を受けることはできそうな感触だ。


 各国の状況を整理して、今後の対応を考えていると気持ちが荒んでくる気がする。

 最近は、そんなときは娘の顔を見に行くことにしている。

 茶々は一歳半くらいになり、少しあぶなっかしいが、自分の足でとことこと歩くようになった。

 まだ何を言っているかよく分からないときが多いが、会いに行くと嬉しそうにいろいろ話してくれる。

 抱き上げて頬ずりをすると髭が痛いと嫌がられるが、そんな時間に幸せを感じる。

 お市からは、息子のときにはここまで可愛がらなかったのにと笑われている。

 息子にも愛情は感じているんだが、そろそろ五歳になるので、しっかり武芸も学問も学ばせたいと思い、つい厳しくなっているかもしれない。



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