表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/29

20話 体制を整えてーー二度と同じことを起こさないために

 俺は薬草を研究しようと思ったが、それよりもやるべきことがある。


 あの魚事件から体制を整えなくては。


 街中では、まだポーションを求める人々の列ができている。


 幸い、大きな混乱には発展していないが、市民の不安は消えていない。


 実際、目安箱に『腐った魚を売らせるなんて、領主を降りろ!』などの不満の声が少なからずあった。


 俺は再び側近を集めることにした。



「ソルシダ。あの商人の身元わかった?」


「それが、すいません。すでに逃げられていてわからなかったです…」


 ソルシダの報告を聞いて、俺は小さく息を吐いた。


「やっぱり、そう簡単には尻尾を掴ませてくれないか」


「申し訳ありません……」


「いや、ソルシダが悪いわけじゃない。相手が一枚上だっただけだ」


 警備隊を総動員して探したが、あの商人はまるで煙のように消えてしまった。


 名前も、顔も、行き先も、何もかもが不明。


「対策として、人の出入りできる場所に制限をかけよう。東西南北に1箇所ずつ。

 そこに、警備隊を配置して欲しい」


「なるほど、2人くらいでよろしいでしょうか?」


「ああ、頼んだよ」


 だけど、問題はここからだ。


「ハーおじさん。商人ギルドを通さずに商売している連中、今どれくらいいる?」


「正確な数は分からんが……少なくとも、外から来る商人の半分くらいは直接市場に出とるな」


 半分、か。


 思っていたより多い。


「急に義務化したら、反発も出るよね」


 リーリャが不安そうに言う。


「出るだろうな。特に、小さな商人ほどな。

 俺が事件の後に呼びかけたとき、『登録しても客が増えるわけじゃない』という反対意見もあったからな」


 ハーレンが腕を組んで頷いた。


「だが、今回みたいなことがまた起きたら、もっと酷いことになりますぞ」


 その通りだ。


 今回は魚の食中毒で済んだが、次は何が起こるか分からない。


 毒を混ぜられたら?


 病気を広められたら?


 考えただけで、背筋が寒くなる。


「それでも、やらなきゃいけない」


 俺は全員の顔を見回した。


「今回みたいなことがもう一度起きたら、今度こそ、この街の信用は致命的に傷つく」


「……そうですね」


 マルチェリオさんが頷いた。


「段階的にいこう」


 全員の視線が俺に集まる。


「まずは外から来た商人だけを対象にする。この街で元々商売している人たちは、今まで通りでいい」


「なるほど」


「登録料は最初の一ヶ月は無料。検査も簡易的なものから始める。臭いや見た目のチェック、あとは商人本人の身元確認は絶対だ」


「それだけなら、商人たちも受け入れてくれるかもな」


 ハーレンが頷く。


「その代わり、登録していない商人が問題を起こした場合は、即追放。例外なし」


 空気が、少し引き締まった。


「優しく見せて、締めるところは締めるってわけか」


 ハーレンがニヤッと笑う。


「でも、ルカ様」


 ソルシダが真剣な顔で言った。


「検査は誰がやるんですか?商人ギルドの人数は、まだ少ないですよね」


「それは……」


 確かに、そうだ。


 商人ギルドはできたばかりで、メンバーは数人しかいない。


 しかも、ほとんどがギルド嬢だ。


「私が手伝いますよ」


 マルチェリオさんが手を挙げた。


「魚や野菜の目利きなら、ある程度できます。それに、商人同士の繋がりもありますから、怪しい人物の情報も集めやすい」


「本当ですか!?」


「ええ。この街のためですから」


 マルチェリオさんは優しく笑った。


「ありがとうございます!」


「もし、怪しい人を見つけたら俺に教えてください!」


 そのときは【読心】を使わないとな…


「じゃあ、さっそく明日から始めましょう」


 ハーレンが立ち上がった。


「市場に看板を立てて、登録を呼びかける。俺が仕切るよ」


「お願いします」


 俺は拳を握った。


 魚事件は終わっていない。

 むしろ、ここからが本番だ。


 同じことは2度と起こさせないーー


*話し合い後*


 みんなが解散した後、俺はマルチェリオさんに相談することにした。


「マルチェリオさん、出入りを制限すると言っても、いろんな方法がありますよね?壁を作るとか、証明書を持たせるとか」


「ルカ君、そこにはデメリットが存在するんだよ。

 前者は街の規模を広げるのに制限がかかってしまうし、後者は時間がかなりかかってしまう」


 ーー今の状況だと待ってられるような時間がない。


 見た目上の措置でしかないが…


「……状況的に時間がないので、壁を作ります」


 マルチェリオさんは眉をひそめた。


「まぁ、それはいいんだけど、こんなに厳しくしたら、これからの商人が来づらくなるかも…」


「そうですよね…」


 厳しくしすぎるのも、市民に供給する機会を失ってしまう…


 安全を取るか、自由を取るか。


 その選択の重さが、胸に圧迫感となってのしかかる。


 それでも、俺は決めなくてはいけない。


 領主として。


 重い足取りで、大工ギルドへ向かった。

 ここまで読んでいただきありがとうございます!


 少しでも「面白い」「続きを読んでみたい」と感じたら、下の☆から評価やブックマークで反応してもらえると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ