18話 商人がやってきた
今日、外から商人がやってきた。
どうやら、この街で魚を売りたいらしい。
確かにこの街には川がない。
だから、魚を食べるという風習はあまりない。
ーーでも、なぜこの街に?
他にもっと向いている街があるはずだ。
マルチェリオさんに意見を聞いてみることにした。
*
「マルチェリオさん、外から商人が来たんですけど…」
「この街にですか?珍しいですな」
「魚を売りたいとのことなんですけど、どう思いますか?」
マルチェリオさんは少し考え込んだ。
「……正直、少し引っかかります」
「引っかかる?」
「はい、この街には川がありません。
だから、この街で売るというのは納得が行きますが、わざわざ、この街を選ぶ理由がわかりません。
隣町に行くことでさえ、半日かかります。
とはいえ、商人を拒む理由もありません。一度、様子を見ましょう。
ルカ君、もし何か異変があったら、すぐに教えてください」
「わかりました!」
マルチェリオさんが言うなら安心だ。
街に入ることを許可すると、馬車を街に走らせていった。
それにしても魚かぁ。
俺も後で買いに行こう!
*
1日の仕事が終わり市場へ向かった。
市場では、見慣れない魚が並んでいた。
思ったよりも安く、街の人たちも興味深そうに集まっている。
俺も二匹買って、家に持ち帰った。
ちなみにルーペで買えたけど、換金はハーレンがなんとかしてくれたようだ。
さっすが!
「りーりゃ、ただいま!」
「おかえり」
「ねぇ、この魚。市場に売ってたんだ。
しかも、2ルーペ(約100円)安いよね?」
「安いね、わざわざ買ってきてくれたの!?
ありがとう!
夕食で食べましょう!」
俺たちは魚を主食に夕食とした。
*
そして、翌日、お腹を壊した。
俺は急いでトイレ(ほぼ野糞)に向かう。
トイレの扉を開けようとすると、想像もしたくないことが。
閉まっている。リーリャめ…
これは絶望ランキングTOP10には入るだろう。
仕方なく、家の外ですることにした。
話をまとめると、俺とリーリャのどちらもが腹を壊した。
昨日のことを振り返ると、魚のことを思い出した。
あの魚、一瞬変な臭いがした気が…
だけど、安かったからなぁ。
まさか、腐っていたのか?
だけど、病院は…
今まで考えていなかったことだ。
怪我をした人や、病気の人はどうしているんだろう。
そもそも、この世界に病院という概念はあるのか?
まあ、とりあえず街の人に聞いてみるしかない。
「すいません!」
「ああ、これは領主様。どうなされましたか?」
「この街の人って、怪我したらどうしてるの?」
「ああ、それでしたら広場の近くにポーションを売っている店がありますよ」
ーーポーションがあるのか!
さすが異世界だ。
「ありがとうございます!」
俺は言われたとおり、広場へ向かった。
すると、一つの看板に目が止まった。
そこには「薬草店」と書かれている。
――ここだな!
すると、店の前には行列が。
一つ前の人もお腹が痛くてきたらしい。
その人も魚を食べたようだ。
これは何かおかしい。
「すいません、前を通らせてください。」
俺は列をかき分けて、店主のところまで進んだ。
「すいません、店主!
ポーションを無料で配ってください。費用は俺が持ちます」
「本当ですか?すごくかかりますよ?」
「はい…」
俺は店を出た。
「みなさん、今回のことで、ご迷惑をおかけしました」
店の前に集まった人々に、俺は頭を下げた。
「ポーションは無料で配ります。そして、今後はこのようなことがないよう、商人の検査を厳しくします」
「領主様…」
「この街を、必ず守ります」
街の人々は、静かに頷いた。
ーー街の信用を落とすわけにはいかない。
俺は拳を握りしめた。
*
「マルチェリオさん、昨日の商人が売ってた魚、みんなお腹を壊したみたいなんです」
「えっ!?」
マルチェリオさんは目を大きく開いた。
「もしかしたら……まずいですぞ。
魚を売る時に全員が食中毒を起こすのは滅多にないはずです…」
「二つの可能性があります。一つは、魚が腐っていた。もう一つは…」
マルチェリオさんは言葉を濁した。
「もう一つは?」
「……意図的に、粗悪な魚を売りつけた可能性です
考えたくもないですが、今回はこちらの可能性の方が高いです。
値段が安かったことが特に怪しいです」
「なんで、そんなことを?」
「この街の信用を落とすため。『領主は変わったが、街は良くなっていない』と思わせるためかもしれません」
ーーそんな…
でも、まだ、噴水と井戸ができただけ。
警備隊も、商業ギルドも、始まったばかり。
「この街は良い」なんて、胸を張って言えるほど、まだ何もできていない。
「しかし、確証はありません。まずは、その商人を見つけましょう」
ーーそうだ。今、やるべきことをやる。
「マルチェリオさん、商業ギルドで警戒を呼びかけてください」
「わかりました」
俺は早急に対処するため、側近を集めることにした。
*
「ソルシダ、あの商人を探してくれ」
「承知しました」
「そして、ハーレン、魚を買った人のリストを作ってくれ」
「おう、任せとけ」
「あと、商業ギルドで新しいルールを作ろう」
「どんなルールだ?」
「外から来た商人は、まず商業ギルドに届け出る。商品の検査も行う」
「なるほど。それなら、こんなことは起きないな」
ーーこれで混乱はある程度、免れるだろう
「それで、マルチェリオさん。この事件、誰の仕業だと思いますか?」
マルチェリオさんは少し考えた。
「……この街を改革しようとしている人ですね
もしかしたら、あなたの両親か、その関係者の可能性もあります。
これは、始まりに過ぎないかもしれません。今後も、警戒が必要です」
ーー警戒か。
俺は周りを見渡した。
マルチェリオ、ソルシダ、ハーレン、リーリャ。
みんなが、真剣な顔で俺を見ている。
ーー俺は一人じゃない。
「みんな、ありがとう
大変なことになるかもしれないけど、一緒についてきてくれる?」
「もちろん!」
「任せとけって」
「私たちが、この街を守ります」
ーーそうだ。
俺たちなら、きっと大丈夫。
この街を、必ず守ってみせる。
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