16話 噴水が完成したよ。みんな集まって!
今日は待ちに待った祭りの日だ!
噴水の前には、すでに人だかりができている。
水音とざわめきが混ざり合い、街が生きているみたいだった。
実は昨日の時点で噴水は完成していたんだけど、4つ目の循環と排水を調整するために1日、間を空けといたんだ。
いやー、昨日は大変だったなぁ。
ハーレンとリーリャに手伝ってもらったんだけど、ハーレンはふざけるし、リーリャよくわからんこと言うし。とか言っても俺も役に立たんし。
散々だったよ。
なんとか、大工の手伝いもあって完成したからよかったけどね!
よし、商人も屋台を出せたようだ。さあ、始めるとしよう。
「みなさーん、この街の領主、ルカ=フォルデンです!
今日は噴水の完成を祝って、噴水祭を開催します!
どうぞ楽しんでください!」
こうして、噴水祭が始まった。
商人たちは声を張り、街の人々は笑顔を浮かべている。
前に決めたルールもきちんと守られているようだった。
「リーリャ、一緒に回ろう!」
「いいよ!ルカ」
俺はリーリャと回ることにした。
祭りは、食べ物を出す店と商品を並べる店が半々くらい。まぁ、商人が出してるから、当然と言っちゃ、当然だ。
ザ・祭りって感じではないけれど、みんな楽しそうでよかった。
歩いていると、一際、目に留まるものがあった……
「すいません!これ二つください」
「はいよ、2ルーペです!」
ーーこれって、焼きそばだよな…?
この世界にもあるのか!
そんな好奇心に負け、恐る恐る口に運んだ。
見た目は完全に同じ。だが、味は少し違った。
それでも、口に残る後味がほんのりと焼きそばを思い出させる。
俺はどうしても話を聞きたかったので、もう一度その店を訪れることにした。
「すいません、この食べ物、あなたが考案したんですか?」
「えっと、これはですね、マルチェリオさんから教えていただきました。」
ーーマルチェリオさん…
心残りもあったが、この店を後にした。
祭りも無事に終わり、警備隊のおかげもあってか、スリなどは一件も起こらなかった。
俺は、祭りが終わった後、マルチェリオに焼きそばのことについて聞きに行った。
「ねぇねぇ、あそこの露店で売ってた麺って、マルチェリオさんが考案したの?」
「いや、あれはね。私が祖父の家に行くときによく作ってもらった料理だったんだよ。それが美味しかったから商品化をしようと思ってね」
「ん!?」
ーーマルチェリオさん、申し訳ないけど、頭を覗かせてもらうよ。
『おじいちゃんが作るあの麺美味しかったなぁ。
小麦粉を練って、野菜と炒めるだけ。
シンプルだけど、おじいちゃんの腕が良かったんだよな。』
ーーただの炒め麺か。
そう思い、俺は少し安心した。
だけど……
「あの、一つ質問いいですか?」
「どうしたんだい?」
「そのおじいちゃんって、どこにいますか?」
「……おじいちゃんはちょうど5年前に亡くなって…
だから、本家の味はもう楽しめないんだよ」
ーー5年前か…
「すいません、悪い思い出を……」
「いや、いいんだよ」
マルチェリオさんは優しく笑った。
ーー祭りをした後なのに、何してるんだ俺…
ふと顔を上げると、月明かりに照らされた噴水が、静かに水を湛えていた。
昼間の喧騒が嘘のように静まり返った広場で、水の音だけが優しく響いている。
罪悪感を抱きながら、後片付けを続けた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
少しでも「面白い」「続きを読んでみたい」と感じたら、下の☆から評価やブックマークで反応してもらえると励みになります。




