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第78話ミュラとテオレーム


アルムスのエルライド王国跡地にいるのは、テオレーム1人だ。

唯一の主人であるエリローズの命令は、彼にとって絶対であった。

暇だ。

テオレームは思う。


少しの間じっとしていると、こちらに全速力で飛んでくる影が見える。

ミュラ・ゾフィスである。


二人は相対する。

先に声をかけたのはテオレームだった。


「よお?ミュラ。数万年ぶりだな。まあ、ゆっくりしてけよ?俺はエリローズ様の命令でこの場で待機だ。ちょうど話相手もいなくて暇していたところだ。」


「テオレーム様、お久しぶりです。申し訳ございませんが私はミグを止めなくてはなりません。ミグはどこに?」


「そっちは諦めた方がいい。既に二代目ラグア殿と共に別空間に転移した。さっき魔王の総数が減ったからソドムかミグのどちらかは死んだな。もう1人も時間の問題だ。お前が敵じゃないなら諦めてここで俺とのんびり雑談でもしないか?」


「テオレーム様、そうゆう訳には行きません。バカやったヤツを止めるのは友の役目なので。」


「あ?悪いがここにいるなら待機命令を受けているから手出ししないが、エリローズ様や二代目ラグア殿の邪魔をするって言うなら話は別だ。お前を殺さなきゃなんねーな。」


テオレームから強烈な殺気が発せられる。

ミュラの表情が一気に引き締まる。


「悪く思うなよ?上が自由にやれるように過ごしやすい環境を作るのが下の役目なんだよ。」


「いや、バカやった下のケツを拭くのが上の役目だ。」


「「!?」」


唐突に声がした。

その方向にテオレームとミュラが同時に振り返る。

現れたのは金髪、長髪の美青年。


「ロロ…。」


「ロロ様っ!?」


「ミュラ、お前は戻れ。ミグのバカは俺が回収してくる。」


「しっしかし…」


「はあ?勝手に話進めんじゃねーよ。通すとでも思ってんのか?」


「発動、不滅の帝、無限分裂。」


ロロの体が無数に分裂する。


「けっ、分体ごときで俺に勝てるとでも?」


その時、空間が裂けた。

中から出てきたのは分体とは比べものにならない程の禍々しいオーラを放った存在。


「分体の方はお前の時間稼ぎだ。俺の方はラグアを追う。発動、時空の神、空間接合。」


ラグアとミグのいる亜空間にゲートが繋がる。


「なっ!?、野郎が出てくるなんて、神魔大戦以来じゃねーのか?それほどあのガキが大事か?」


ロロの本体は常に自らの神級スキルで作り出した亜空間にいる。

普段活動しているのは分体である。

それは普段からロロが、絶対の安全マージンを取っているためである。

それが、数百万年ぶりに出てきたのだ。

テオレームが驚くのも無理はない。


テオレームは言う。


「だが分体ごとき時間稼ぎにもならねーよ。どれだけ数を揃えようが俺の神級スキルの前では無意味。お前も本当はわかってるんだろ?」


「わかってないのはお前だ。テオレーム。こんなところでお前が神級スキルを出したら間違いなくアルムスが崩壊する。それは二代目ラグアとの敵対、ひいてはエリローズ様の邪魔をする事になる。お前にできるのか?」


「それは…。なら、場所を移動して分体を始末してやるまでだ。どっちにしてもお前の負けだ。」


「それは好きにしろ。その間に俺はミグを連れて帰る。」


「クソがぁぁぁぁぁぁっ、ならせめてコイツは殺す。」


テオレームがミュラに突っ込むが………。


ミュラの体はテオレームが到達する前に消える。


「そう来ると思って、ミュラは先に亜空間に逃がした。何度も言うが、お前の負けだ」


「クソがクソがクソがぁぁぁ、エリローズ様、申し訳ございませんー。」


エルライド王国跡地にテオレームの声がこだまする。



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