第846話迷宮宇宙22
「明らかな挑発です。まともに掛け合ってはいけません」
リーゼのその言葉にシャドウラルファは即座に答えた。
リーゼはシャドウラルファを見据える。
「へぇ?シャドウは全滅したと思ってたんだけど、こんなところに生き残りがいたんだ?ならついでに教えておいてあげる。今からだいたい1万7000年前だったかな?シャドウ計画の発案はリーゼだったりするんだよ?」
「…そうですか。何も感じませんが…」
「嘘だね?若干心に揺らぎが出たよ。へぇ?壊れた人形のくせにまともな感情を持つようになったんだ?本物の妹は未だに無感情のままなのに…」
リーゼの心を見透かす能力…
そこには確かにシャドウラルファのリーゼに対する不快な感情が僅かに受け取れた。
「ラルファ。退がれ。お前の言う通りだ。コイツとまともに会話するのはダメだ。それに何より全部を見透かしてるようなコイツの態度が気に食わない。俺がやろう」
言いながらロロが一歩前に進み出るが…
その瞬間、ロロは真っ二つになる。
これにはさすがのミグも驚愕する。
何をしたのかはわかる。
だが、それは本来ありえる事ではない。
「まあまあ、もうちょっとお話しよーよ?それに一対一でお前ごときが勝負になんてなるわけないでしょ?バカなんだからさー?」
「時間と座標を完全指定した上での神格エネルギーを込めた天刃の概念の発動…。これがオリジナルですか…」
ラルファはリーゼの今の行動を正確にそう分析した。
それはいつからかはわからないが、ロロが一歩踏み出すタイミングを完全に予測してはじめてできる所業だった。
相当格下ならまだしも、とてもオリジンゴッド同士の戦いでできるものではない。
「さあ、話を戻そうかな?あ、何かしようとしても無駄だよ。所詮お前らバカの考えなんか全部リーゼの手の平の上だよ。ねえ?ミグ?お前の実力ならここでリーゼを倒すのは簡単だよ。でもそれだけだよ。リーゼを倒したところで何も変わらない。所詮はこの集団はお前一人のワンマンチームなんだよ。ここまではいいかな?」
「………」
リーゼのその言葉に誰もが何も言わない。
当然だ。
たった今、目の前で神格エネルギーや技術とは全く違う力をまざまざと見せつけられたのだ。
たしかにリーゼ単体にはミグが戦えば勝てるだろう。
アラウザルゴッドの絶対の力の前にはリーゼの小細工など通用しない。
だが、それはミグが相手の場合だけだ。
「さあそんな君達に朗報だよ。今からリーゼ対ミグを除くみんなで戦うチャンスをあげるよ。パパとやる前の前哨戦だよ?悪い提案じゃないと思うけどどうかな?」
リーゼは薄く微笑むとそう言ったのだった。




