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第347話ダミーエルライド王国防衛戦9


〜ダミーエルライド王国、エリローズ私室〜


「ふふっ、ふふふっ…」


室内にフィアナの笑い声が響く。


「なんだ?早々に突破されておかしくなったのか?約束だ。ここからは私が…」


「逆だよリリス。ここまで上手くいくなんて予想外だよ」


フィアナはリリスが言い終わる前に口を挟んだ。


「どうゆう事だ?」


リリスの頭には疑問符が浮かぶ。


「プロトエミリー、プロトサウロス…。よくやったよ。お前達の犠牲は無駄にしないよ。プロトセリー、第3防衛ラインの隊長は、確かプロトシオンだったね。副官のプロトタリスと3億の量産型アンデットを残して第4防衛ラインまで撤退するように指示を出して」


「はっ」


プロトセリーはすぐに命令の遂行にとりかかる。


「それからリリス、約束は守るよ。ラグア様の分体は使う。それから動ける準備をしといて。私達も出るよ?」


「訳がわからない説明しろっ!!」


ついにリリスは声を荒げた。


「ラグア様の分体は使うよ。ただし使うのは第3防衛ラインでもなければ、第4防衛ラインでもない。第2防衛ラインだよ」


「そうか。奇襲か」


そこまでフィアナの言葉を聞いて、ようやくリリスも理解する。

化け物2人は配下達を第2防衛ラインに置いたまま先行した。

ならばそれを化け物2人がいない間に叩く。

それが今回の状況を見てフィアナが即興で考えた作戦だった。


「だが、それはダミーエルライド王国を捨てる事になる。いいのか?」


理屈ではわかる。

だが、ラグアに対する忠誠心の塊の様なプロトクローンであるコイツがそんな作戦を使うとはリリスには信じられなかった。


「ふふふっ、ダミーエルライド王国か…」


リリスの言葉にフィアナは自嘲気味に笑い出す。


「リリスも本当はわかってるでしょ?ラグア様にとってダミーエルライド王国も、プロトクローンも、そして私やリリスも…壊れたらいくらでも代わりのきく玩具に過ぎないんだよ。それはある意味では当然だよ。私達には王級から上の成長は望めない。そんな連中はラグア様の配下にはごまんと居る。でもね?そうじゃないんだよ」


フィアナはそこで一度言葉を切る。


「私はプロトクローンであると同時にラグア様の幹部、フィアナなんだよ。私にはラグア様のお役に立てる戦闘力なんてありはしない。でもそんな運命なんて私は嫌だ。私はフィアナだ。量産されて壊れたら代わりのきく人形じゃない。私は認めてもらうんだよ。ラグア様が私を必要って言ってくれるようにね?」


フィアナの言葉は熱がこもっていた。

プロトクローンはベースの性格は同じでも、かなりの個体差がある。

フィアナの様なプロトクローンは極少数派だ。

それでもフィアナはプロトフィリアではなく、フィアナとしての人格を確立していた。


「リリス、プロトセリー、プロトリル。準備して。たぶん第3防衛ラインは一瞬で抜かれる。勝負は初代ラグア達が第4防衛ラインにさしかかった時だよ。ラグア様見てて下さい。私達がラグア様のお役に立てるところをお見せします」


フィアナは玉座の間にいる分体ラグアではなく、イグロシアルの方向を見上げながら言ったのだった。


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