第342話ダミーエルライド王国防衛戦4
「まだ用意できていないのか?ラグア様から使用許可はもらってるはずだぞ!?」
リリスは言葉を濁したフィアナに若干動揺しながら言った。
「確かに許可は降りたんだけどさ…。上は今はそれどころじゃないみたいで…。今日はたぶん無理だから使えるのは明日かな?」
現在イグロシアルでは改革の為の会議に特別幹部以上のメンバーは総動員されている。
さすがにそれに口を挟める程、ただの幹部…
それもなりたての上、本国の幹部ですらないフィアナは偉くはなかった。
「ふっふざけるなっ!?オリジンゴッド…いや、神級相手に私達だけで1日もたせるだと!?できるわけない!!」
リリスは声を荒げて言った。
「大丈夫だって。恐れ多くてやりたくないけどラグア様の特別仕様の分体は使えるし、まあ、最悪は玉座の間で決戦になるけど…」
そう今回のフィアナ達が預けられたラグアの分体は普通の分体ではない。
「バカか?そんなところまで侵入を許した時点で既に私達はこの世にいないだろ?」
「だからそれは最後の手段だって。それにラグア様の特別仕様の分体は、切り札だから極力敵には見せたくないし、何より私達ごときが分体とは言え、ラグア様の力をかりるなんてしたら、あとで上の方々に何を言われるかわかったもんじゃないよ。なんとか量産型アンデットとプロトクローンだけで頑張りたいよね?」
フィアナはイグロシアルを見上げながら言った。
「だったらなおさら…」
「だからその為にこの2人がいるんじゃん。頼んだよ?プロトリル、プロトセリー」
リリスが言い終わる前にフィアナはプロトリルとプロトセリーを見ながら言った。
「「はっ」」
プロトリルとプロトセリーは揃って返事をする。
「まあ、とりあえず第1防衛ラインのコンセプトはあわよくば休戦。ダメなら嫌がらせができれば十分。勝負は第2防衛ラインからだよ」
「第2防衛ラインのコンセプトは確か時間稼ぎだったか。フィアナ、もし第2防衛ラインもすぐに抜かれるような事があれば私は迷わず切り札を切るぞ?」
リリスの言う切り札はもちろん特別仕様のラグアの分体…
現在フィアナ達が使える特別仕様のラグアの分体は二体。
何が特別仕様かと言うと、玉座の間にいる分体とは違いラグア本体や玉座の間にいる分体との接続を完全に遮断してある。
そこには通常の分体の様な意思はないし、然るべき手順で指示を出さない限りは、動く事すらできない。
何故そんなめんどくさい事をしたのか…
それはさすがにそのまま自分の人格が残っている状態では使いにくいだろうというラグアの配慮だった。
「………わかったよ。第3防衛ライン到達時に帝級アンデットが間に合わなかったら帝級アンデットの代わりにラグア様の分体を使ってもいい」
フィアナとリリスの立場は対等…
序盤の作戦はフィアナが舵をとっている以上、ここらへんが落としどころだろうとばかりにフィアナは言ったのだった。




