第300話古き時代のアルムス8
「うわー、やってるねー。どうしよっか?」
プロトフィリアは眼前で量産型アンデットが紙くずの様に蹂躙されている状況を眺めながら言った。
「どうもこうもあるか。我々の使命はここを守る事だ。発動、王級スキル、精霊王」
その瞬間、プロトフィリムの前に三体の精霊が召喚される。
「いきなり全力って…プロトフィリムは真面目だねー?」
そう言いながらもプロトフィリアは王級スキル、妖精王を発動させる。
〜
私の名前はシルビア…
大魔王ラグア・ベルゼ・アルムス様の腹心、三元魔の1人、ソドム・グラファル様の配下で四天凶星の1人…
事の発端はアルムス中に放たれた大量のアンデットだ。
問題はそのアンデットの実力だ。
一言で言うなれば異常…
確かに幹部である自分達よりは実力は大きく劣る…
だが、雑兵としてみればかなり強いと言える。
ラグア様の元に向かったアンデット達は、数体の王級幹部達によって蹴散らされたが、不思議な事に一切の経験値は入ってこなかった。
未知の敵対勢力…
それが大魔王ラグア・ベルゼ・アルムスの結論だった。
だが、不幸な事に今は時期が悪すぎる。
現在は聖神フェルリカとの戦争の真っ只中…
相手は神級…
とてもなめてかかっていい相手ではない。
よって大魔王、そして邪神エリローズは動けない。
分散するリスクが高すぎる。
かと言って、三元魔は動けない。
大魔王と邪神が不在の中、現在の大魔王配下の指揮権は三元魔達に移行されている。
邪神派のテオレーム・クリムゾン…
大魔王派のソドム・グラファル…
中立派のロロ・ベアトリクス…
その中で大魔王不在時の本国の防衛を担っていたのは、大魔王派のソドム・グラファルだ。
先日のアンデット達もソドムの配下達によって駆逐された。
表立って争う事はないが、彼らの中は決してよくはない。
組織のトップ2人がいるからこそ、成立しているに過ぎない。
そんなソドムが防衛を放り出して自ら未知の敵対勢力のいる場所に赴くわけにはいかなかった。
そんな事をすれば、命令無視と言う大義名分を得たテオレームやロロとの戦闘は避けられないだろう。
ソドムがもう少しロロと友好関係を築いていたら…もしくは防衛を任されたのがロロだったら、蹴散らしたアンデットは帝級スキル、死霊帝によるものだということがわかったのだろうが、幸か不幸かソドムとロロは不仲な為、知る事はなかった。
シルビアがソドムから命令を受けたのはそんな状況下での事だ。
「偉大なる大魔王ラグア様の障害となる可能性のある勢力がいる。だが、儂は現在動けん。シルビア、アンデット達が来た方向に行け。偉大なるラグア様の為、可能なら排除、無理なら敵勢力を確認して来い。儂はお前の報告しだいでラグア様に進言する」
「はっ、四天凶星の名にかけて必ずやご期待に応えてみせます」
その後シルビアは自らの配下2人を連れてソドムの元を出た。
そしてシルビアは未確認の国に辿りつく事になるのだった。




