第289話ラグアとレオン
さて、残った問題はゴミ処理だが…
俺は転生者の男を見据えて言う。
「よお。形成逆転しちまったみてえだな?もちろん死ぬ覚悟はできてんだよなあ?」
「ああ、儂の負けだ。やれ」
転生者の男、レオンはそう言った。
は?
何コイツ?
もっと足掻けよ。
無様に命乞いしろよ。
何受け入れて、やれる事は全てやった悔いはないって顔してんだよ?
ムカつくわ。
俺は殺気を全開にする。
ムカつくわ。
殺す前に絶対泣かせてやる。
俺はそう思って言う。
「俺は危うく死ぬとこだった。殺す前にたっぷり遊んでやるよ。まずは神格エネルギーとスキルを封じて気の済むまで爪に俺の触手の針をぶち込んでやる。それが終わったら今度は足だ。1ミリずつゆっくり刻んでやるよ。体がどんどん小さくなるぞ?知ってるか?痛みのあまり失神できなかったヤツも大勢いるんだぜ?その他にも素敵なアトラクションが満載だ。お願いだから殺してくれと何度言われたか。なあ?楽しみだろ?」
だが、レオンはそんな俺の言葉に対して薄く目を閉じると言う。
「その程度儂には甘すぎる罰だ。お前の前世は詳しく知らないが、お前の言動を見る限りろくな事をやっていないのはわかる。お前もそして儂も殺し過ぎた。いずれ報いは受ける。それが早いか遅いかだけの話だ」
コイツマジでなんなんだよ?
「あ?お前の予想通り俺の前世は、日本国内最悪の連続殺人鬼と呼ばれた死刑囚だった。だがそれがどうした?お前は肉を食うか?それともベジタリアンか?どっちでもいいが、生きていく上でなんらかの命は奪っているだろう。ある国では犬を食う。またある国では最近まで食人文化があったと言う。その差はなんだ?俺にはわからねえ。俺は一般人が飯を食うように人を殺さなければ生きられねえ。お前にこの気持ちがわかるか?拘置所の中で殺人ができない状況で部屋に沸いた虫の足を一本一本引きちぎりながら耐える俺の気持ちがわかるのか?おい!!」
俺はレオンを怒鳴りつけた。
だが、レオンは俺を哀れなものを見るような目で見つめるだけで何も言わない。
俺は今にもレオンを触手で八つ裂きにしそうになるのを必死に堪えながら言う。
「てめえなんとか言えやっ!!」
レオンは俺を真っ直ぐに見据えて言う。
「確かに価値観は人それぞれだ。お前にはお前の儂には儂の価値観がある。儂はお前には負けるかも知れんが、前世で多くの人々を殺した。確かに殺したのにはそれなりの理由があった。それが国の為であったり、同胞食いの人としての禁忌を犯した者を処刑するなどといったものだ。だが、儂とお前は人を殺すという行為自体を正当化していた事は何も変わらない」
「あ?人間が特別か?カラスが増えたら減らしましょう。パンダが減ったら増やしましょう。人間が増えたら増やしましょう?お前の言っているのはそういう事だぞ?」
「………どうやらお前と儂は分かり合える事はないようだ。どちらが正しいのかは儂が知る事は無さそうだがな…」
レオンは自嘲気味に笑った。
俺はレオンの言葉に対してニヤリと笑い、亜空間転移を発動させる。
「だったら見ろよ?俺の作る理想郷を…それが証明された日を見てから死ね」
「儂を殺さないか…。お前の理想郷ができるような事があればこの世に神などいなかったと証明されるか」
レオンはそう言いながら俺の亜空間に消える。
「黙れ。神は俺だ。俺は俺の生きやすい世界の神になるんだよ」
俺は誰もいない焼け野原に向かって呟いた。




