第266話魔王リーゼ・エルライド
トルワ公国の兵士を皆殺しにしたリーゼは次々と一般市民を虐殺する。
その虐殺した数が九千を超えた辺りの事だ。
「え?熱い。熱い熱い熱い。体が…なんで!?ダメージどころか一撃ももらってないのに!?ああぁぁぁぁぁぁ!!」
リーゼは突然苦しみだす。
「リーゼ様っ!?」
セリーが慌てて駆け寄り回復させようとするが効果はない。
当然だ。
これはダメージではなく進化なのだから…
もちろんセリーも人間から人魔になる時に経験しているのだが、それはセリーにとって20年近く前の事であるし自らの主人の1人娘であるリーゼがその様な状態に陥った事により、セリーは完全に気が動転していた。
「リーゼ様っ、お気を確かにっ!!発動、死霊帝、魔導帝、不滅の帝」
セリーは次々と帝級スキルを発動させる。
そんな中、徐々にリーゼは体の熱さが収まっていくのがわかった。
「………ありがとセリー、もう大丈夫」
リーゼはそう言って体の状態を確認する。
熱さを感じる前から比べて明らかに増大した力…
そして新たに獲得した王級スキル…
固有スキル、不老、魔王、MP無制限の獲得…
そして称号の魔王の獲得…
リーゼは全てを理解した。
なるほどこれが進化、そして魔王化か…
つまりパパも通ってきた道…
そう思うとこの痛みさえ愛おしく感じる。
リーゼはそんな事を考える。
「どうやら魔王化には成功したみたい。セリー、用事は済んだから帰ろうか」
リーゼは眼前に広がる阿鼻叫喚の地獄には目もくれずにそう言った。
「はっ、では…」
セリーが言いかけた時だ。
こちらに向かって転移してくる3つの強力な気配を感じる。
向かってくる3つの気配から感じる力はどれもリーゼを凌ぎ、その内1つはセリーさえも凌ぐ。
だが、その気配に敵意はない。
なぜなら…
「あちゃー。パパに見つかっちゃったみたいだね」
「……そのようですね」
セリーは転移してきた存在達を見ながら言った。
ライナー、フィリム、サウロス…
現れた三人はその場に跪く。
ライナーが代表して言う。
「リーゼ様、ご無事でなによりです。お迎えに参りました。ラグア様がお待ちです。城に戻りましょう」
「これたぶん…いや、絶対パパ怒ってるよね?」
「はい、かなり…」
それに答えたのはラグアに直接命令を受けたフィリムだった。
「帰るのやだ!!セリー助けて!!」
リーゼは先程までの阿鼻叫喚の地獄を作り出した存在とは思えない様子で、セリーに助けを求めるのだった。




