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第263話トルワ公国3


リーゼとセリーは奴隷商の中に入る。

すると野太い声が聞こえてくる。


「誰でぇ?客かぁ?女とガキぃ?なんでぇ?自分から商品になりに来たのかぁ?」


その男の言葉にセリーは攻撃を開始しようとするが、リーゼはそれを止めて言う。


「うん。リーゼ達はお客さんだよ。商品見せてよ。不潔なおじさん」


リーゼの言う通りその男はお世辞にも清潔とは呼べない外見をしていた。


そんなリーゼの言葉に男は殴りかかろうとするが、リーゼとセリーの姿を見て考えを改める。


ガキの方は清潔で高級感漂う服…

どこかの貴族の令嬢か?

後ろの女の服はどこかの国の軍服か?

女の胸についてるエンブレムに似たものは、遠い昔どこかで見た気がするが、少なくともあんな真っ金金に輝いてはなかった。

これはひょっとするとかなり身分の高い連中なんじゃ…

そう考え男はリーゼに対する態度を変える。


「これはこれは失礼しました。貴族のお嬢様。ウチの商品が見たいんでしたっけ?さっ、こちらへ」


「うん。それとリーゼは貴族じゃなくて王族だよ?」


リーゼはニコニコしながら男の後に続き言った。

もちろんその後にはセリーが続く。


「それはまたご冗談を…王族様がこんな何もない国にそれどころかこんな場末の奴隷商なんかに来る訳がないじゃないですか」


男は愛想笑いしなが言った。


「王族だもん。リーゼは嘘ついてないよ」


歩きながら話している為、商品達が見えてくる。


「へえ、ではどこの国の王族でぇ?」


男は軽い調子で言ったが次の瞬間そんな事を聞いたのを後悔する事になる。


「うーんっと、エルライド王国、王族、リーゼ・エルライド。パパ…ラグア・エルライドの1人娘だよ」


「………は?」


男は硬直する。




男は思い出す。

あれはまだ自分が子供の頃で父親がまだ生きていた頃だ。

あの頃は自分がスラム街で奴隷商をやるなどとは夢にも思っていなかった。


ある日父親と一緒に大通りにいた時だ。

道のど真ん中に1人の男が歩き、大通りにいた人々が皆跪く。

父親もそれにならった。

自分は意味が分からずその場に佇む。


「ほらっ、早くお前も跪けっ!!」


父親の怒声で跪く。


「おい?誰だ?そのガキは?俺を魔王ラグア様直属、四天王の1人、セリー様の忠実なる配下ジャン様だと知って突っ立ってたのか?」


「めっ滅相もございませんっ!!」


「ならいいが。にしても何もねえ国だな。ラグア様が放置したのも頷ける」


男はそう言って大通りを進んで行った。

男が何をしにきたのか分からないが、男の胸にブロンズの杖をかたどったエンブレムが光っていたのを覚えている。



男が硬直から立ち直るとそんな男を無視して話す、リーゼ達の会話が聞こえる。


「ねえセリー。どっちがいいと思う?リーゼ的にはあっちのピンクの髪の女の子か向こうの目つきが悪い男で迷ってるんだよね?」


「私ごときがリーゼ様に進言するのは恐縮ですが、ピンクの髪の方は成長すれば私と同様のタイプになるかと…目つきの悪い方はエリス様…いえ、ライナーのようなタイプになる可能性が高いかと…」


「うーん、迷うな。両方買っちゃおう。おじさん。2人共ちょうだい。あれ?おじさん?」


男は再び硬直していたのだった。

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