第245話新生ドーラス王国2
「失礼します」
「カティアちゃん迎えにきたよー?」
エリスとノーマンが部屋に入って来る。
そのすぐ後ろから来たミリアがノーマンの態度に何か言おうとするのを察してカティアは言う。
「ミリア、やめなさい」
カティアの言葉を聞いてミリアは押し黙る。
カティアは2人に対して口を開く。
「エリス様、それからノーマン。この様な高いところから申し訳ありませんがお久しぶりです。それでノーマン、私を迎えにと言うのは?」
ラグアが戻ってないならそれを口実に最悪突っぱねられる。
カティアもこの数十年でそれぐらいの交渉術は身につけていた。
だからこその言葉だった。
だが、その一縷の望みはノーマンの一言で粉々に打ち砕かれた。
「ラグア君がアルムスに帰ってきてカティアちゃんを迎えに行くメンバーに僕が立候補したんだよ?」
最悪だ。
ミリアなど今の話を聞いて真っ青を通りこして顔面蒼白になっている。
自分の腹心とは言え、まだ若いミリアは魔王ラグア・エルライドを神話の伝説でしか知らない。
彼女は第二次神魔大戦時にはまだ生まれてすらなかった。
カティアは考える。
目の前にいるエリスは見た目こそ変わっていないが、その気配はかつて見た時以上の化け物になっている。
その実力はセルナース様と協力した自分ですら、勝てるかどうか怪しい。
対してノーマンはよくも悪くも何の変化もない。
馬鹿さ加減も相変わらずだ。
ノーマンはどうにでもなる。
問題はエリスだ。
エリスを説得できればなんとかなる。
カティアはエリスに目標を絞って言う。
「しかし、エリス様。私もラグア様のところに戻りたいのは山々ですが、今や私も一国の主…皆を置いて行く事はさすがに…」
カティアは心の中でほくそ笑む。
完璧だ。
一応特別王族としてこちらの方が立場が上な以上、これでエリスも強く出れないはず…
だが、エリスは一瞬の迷いもなく言う。
「カティア様さえ宜しければ、すぐにラグア様が迎えにいらっしゃり、この国に森羅万象をかけた上でイグロシアル…アルムス近郊にラグア様が出現させた惑星までお越しいただけます。その際、少し諸事情によりその際エリローズ様とカティア様がお会いした事のない、もう一方がついて参りますが、お気になさらずにお願いします」
カティアはエリスの言葉を聞いて固まる。
森羅万象…
そう。
ラグアにはそんなふざけた能力があるのだ。
おそらくイグロシアルとか言う惑星を、無理矢理アルムス近郊に持ってきたのもその力だろう。
ダメだ。
これではイエス以外の選択肢はない。
イエスでもノーでもあのキチガイ…ラグアは来る。
しかもノーの場合はおそらく敵として…
そんな事になれば、自分に待っているのは、はじめてラグアに会った時見た、椅子に縛り付けられて苦悶の表情を浮かべながら絶命していた死体と同じ運命を辿るだろう。
「…わかりました。またラグア様のところでお世話になります」
カティアはそう答えるしかなかった。




