第229話九天大戦20
俺はただひたすらに防戦を続ける。
「いい加減に…」
シオンが言いかけた時だ。
唐突に感じる…
これはエリローズの領域展開…
そしてその影響で、俺の神の千里眼が遮断された。
つーか、あのクソアマ、明らかにオーバーキルだろ?
これ討伐クエストじゃねーぞ。
捕獲ミッションだからな?
あのクソアマわかってんのか?
俺はそう思い舌打ちをする。
「!?っオリジンゴッド…なぜこんなところにっ!?」
シオンは驚愕しながら言った。
そんなシオンに対して俺は言う。
「おい、あんまり時間をかけられなくなった。具体的に言うとこれからすぐ戻る。早くしねーと餌がなくなる。選べ、降伏か死か?」
ぶっちゃけどっちでもいい。
もうコイツを餌にするって選択肢はなくなった。
確かにエリスやフィローラ達を呼んで時間をかけて袋叩きにすれば勝てるだろう。
だが、そんな事をちまちましてたらメインディッシュがなくなりかねない。
ちなみに戦闘を選んだ場合は、本体を使って速攻で潰す。
どっちでもいいから早くしろ。
それが俺の本音だ。
そんな俺の祈りが通じたのか、シオンの答えも即答だった。
「降伏っ、降伏するわっ!!いえ、降伏しますっ!!ラグア様っ!!」
「わかった。何回も言わなくていい。話は後だ。軍をまとめとけ。俺は城に戻る」
俺はそう言って転移する。
〜〜〜
ダミーエルライド城に戻った俺が見たのは、意識を消滅させられているゼオンともう1人の神級クラスのアナシスタ…
そして全ての元凶であるクソアマだ。
「おや?ラグア様?随分とお早いお戻りですね?」
エリローズは悪びれずに言った。
とりあえず最悪の事態は避けられた様だが、クソアマなめてんのか?
俺は言う。
「てめえっ、何考えてんだっ!!領域展開なんか使いやがって!!」
「こっちの方が簡単だったので、ラグア様は何を怒ってるのですか?」
「お前のせいで上級神クラス1匹配下するしかなくて食えなくなったんだよっ!!」
「そんな事ですか。今から戻って殺せばいいじゃないですか?」
ん?それもそうか。
いや、ダメだ。
「一回降伏受け入れたヤツを理由もなく殺したら、せっかく最近内乱ねーのに、またクーデターに悩まされてウゼーだろうがっ!!てめえ、マジで何してくれてんだよっ!!」
俺はクソアマに向かって叫んだ。
武力制圧を繰り返して大きくなった俺の国は新しい国を統合するたびに大なり小なり必ずクーデターが起こる。
これはもう決定事項だ。
起こらなかった事はない。
そして降伏しようとしているヤツを殺した事はあるが、降伏を受け入れてから殺した事はない。
そんな事をしたら本国のエルライド王国までクーデターが起こりかねない。
情報操作をするにも数が多すぎる。
相手はイグロシアルの約半分を支配する大魔王ゼオン陣営だ。
シオンは今頃、俺に降伏した事を配下に説明しているだろう。
エルライド王国を森羅万象に入れてる今、情報が漏れる事は今のところないが、森羅万象から出した瞬間に終わる。
マジで詰んだわ。
情報漏洩を防ぐ唯一の方法は、イグロシアルの勢力を、同盟の九天勢力を含め皆殺しにする事だが、そんな事をすれば今度は同盟諸国が疑心暗鬼になりクーデター…
それを処理すれば今度は属国や本国がクーデター…
結果、自分の国を自分で滅ぼす事になる。
「ラグア様、私頑張ったんでご褒美下さい。今日はパフェでも食べたいですね」
「自分で出せやっ!!つーか一回死ねよクソアマっ!!」
俺は全力でブチギレるのだった。




