第217話九天大戦8
ラグアは殺気を全開にする。
その瞬間、サウロスは理不尽とも言えるほどの力の差を理解する。
膝が笑っている。
九天とはこれほどの存在なのか?
他の仲間達など完全に腰が抜けて立っていられない状態だ。
戦意?
そんなものはこれを見れば消え失せる。
サウロスは言う。
「待てっ、今日は戦いに来たんじゃない。交渉に来たんだ」
サウロスの言葉に、肉片となってしまったケビン以外の仲間達は腰が抜けて立てない状況ながら驚く。
当然サウロス達は、九天、ラグア・エルライドを倒して弟子達を奪還しにきたのだ。
サウロスは思う。
いくらなんでもこんな化け物に挑む事…それは決して勇気とは言わない。
無謀と言う。
「交渉?いいぜ?今日の俺は寛大だからな」
ラグアのその言葉にサウロスは内心安堵するが、次の言葉で絶望に変わる。
「選べ、服従か死か?」
俺は口元に笑みを浮かべながら言った。
サウロスは思う。
こんなものは交渉でもなんでもない。
これではなんの為にここまできたのかわからない。
サウロスができるだけラグアの機嫌を損ねない様に発言しようとした時だ。
ラグアが何かに反応する。
「ちっ、新手か。悪いが話は後だな。あ、逃げようなんて思うなよ。ライナーっ」
その瞬間、あたかも今までそこにいたかの様に跪く男が現れる。
「はっ、ラグア様ここに」
「コイツらを監視しとけっ、逃げようとしたらサウロス以外は殺してもいいが、サウロスだけは生け捕りにしろ」
「はっ、仰せのままに」
俺はそのまま転移する。
場所はダミーエルライド王国の南側。
新手の数は多い。
索敵の反応を見る限り、3000万近くいる。
この数はちっとめんどくせーな。
セリーを呼ぶか。
俺は神託を使ってセリーを呼び出す。
「ラグア様、お呼びでしょうか?」
すぐにセリーが転移してきた。
「セリー、アンデット軍を使って雑魚を蹴散らせ」
「はっ」
セリーは帝級スキル、死霊帝を発動させると次々とアンデットの召喚をはじめる。
セリーのその姿を見て、敵の先頭の男が叫ぶ。
ん?ゼオンの幹部クラスか?
ただの雑魚にしか見えないぞ?
「俺は大魔王、ゼオン・ヴェルゾアス様配下、三魔王の1人ラディア…」
こんなのが幹部かよ。
つーか魔王かよ…
ゼオンを過大評価し過ぎたな。
俺がゼオンの評価を下方修正しているとまだ続きがあったらしい。
「…様の四天王の1人、ガルム様の八魔将の1人、マーリス様配下、6番隊隊長、オル…」
オルなんとか…がそこまで言いかけた時だ。
いきなりオルなんとかは爆散する。
「ただの下っ端ごときが、ラグア様と口を聞こうなど、身の程知らずにも程がある」
セリーは言った。
こうしておそらく、ただの下っ端の6番隊隊長のオルなんとか…の爆散を合図に、戦いははじまるのだった。




