第127話フィリアとフィリム
〜ナフスト王国上空〜
「フィリム、2人で襲撃なんか久しぶりだね」
フィリアは言った。
「そうだな、フィリア。ラグア様にお仕えしてから2人だけで任されたのははじめてではないか?」
フィリムも答えた。
「そんじゃはじめよっか?平和ボケしてるゴミ共に、ラグア様の恐ろしさを刻みこんであげる」
フィリアはそう言うと上空で妖精王を発動させる。
フィリアの妖精王、フィリムの精霊王は共に同時に出せる妖精、精霊の数は3体までだ。
だが、それは一度に使役できる限界と言うだけの話であってフィリア達が使役できる存在が3体だけと言う話ではない。
ゼブル・ガイウスとの戦いはセリーのサポートに回ったが、今回はサポートする必要はない。
補助系の力はこの際いらない。
補助系の存在は具現化しなくても補助効果を得られるのが、妖精王や精霊王のいいところだが、直接攻撃系だとそうはいかない。
「まあ、とりあえずこの子でいいか。召喚、デモンピクシー」
フィリアの前に真っ黒な妖精、デモンピクシーが召喚される。
「デモンピクシー、ナフスト王国を破壊して勇者をいぶり出せ」
フィリアはデモンピクシーに命令した。
デモンピクシーはフィリアの命令を聞くと、ナフスト王国に向き直り、上空にいくつもの黒い玉を展開させる。
デモンピクシーは悪魔の力を持つ妖精だ。
その力はラグアの七大罪で出せる悪魔達には遠く及ばないが、僅かながら地獄の力を借りる事ができる。
「……ヘルボムズ……」
デモンピクシーが呟いた瞬間いくつもの黒い玉がナフスト王国にぶつかる。
上空には轟音が響きわたる。
上空からナフスト王国はもはや地獄と化していた。
「うわー、助けてくれー」
「痛い痛い痛い、俺の足がぁぁ」
「どっから来やがった襲撃の気配なんてなかったのに」
ライナーと違いフィリアとフィリムは今回、自らの配下を一切動かしていない。
理由は簡単だ。
ナフスト王国への奇襲を成功させる為だ。
フィリアは長距離転移が使える。
まあ、正確には妖精王のスキルで使役できる者の中に長距離転移が使える存在がいるのだが、細かい事はいい。
皆さんも考えてみてほしい。
いきなり国の上空に転移してきたと思ったら十数秒後には攻撃がはじまっているのだ。
それでも勇者本人は気づいたかも知れないが、彼1人で国中に対する同時攻撃に対処する等できる訳がない。
まあ、この世界にはそれができる者達も少なからず存在するが、それはほんの一握りの存在だ。
事実、この国の勇者にはできなかった。
初撃の奇襲は成功。
だが、勇者はまだ出てこないか。
フィリアは命令する。
「デモンピクシーは次の指示があるまで、逃げ惑うゴミの掃除」
デモンピクシーは再び攻撃準備を開始する。
さて、私も次の手を打とうかな。
フィリアは再び妖精王を発動させるのだった。




