第114話レティス神国
彼テオレーム・クリムゾンにとってエリローズの命令は絶対である。
それがどんな命令であろうとも…
数億年前にはじめて王級に至った時の事は今でも覚えている。
「エリローズ様。この不肖テオレーム、王級スキルを得るに至りました。全てはあなた様の為です。俺の王級スキル、虚無王はあなた様に献上する為にあります」
「そんなゴミはいりません。ステータスが見辛くなるだけです」
………。
その時テオレームは思った。
今の自分ではエリローズ様のお役に立つには程遠い。
あの時の悔しさ、情けなさは絶対に忘れない。
だが今は違う。
あれから時が経ち今では自分は神に至るまでに成長した。
テオレームは夢見るいつの日にかエリローズ様と肩を並べて戦える日を…
〜レティス神国上空〜
テオレームは眼下に広がるレティス神国を見下ろす。
まあ、現実はこんなもの。
下位魔王の処理などラグアの配下でも十分である。
テオレームにとってのそれは朝のゴミ出しを言いつけられたのと変わらない。
「いつになったらエリローズ様は…」
テオレームはその先の言葉を飲み込む。
全知全能であるエリローズ様の愚痴など自分ごときが言っていいはずがない。
そもそも思う事でさえあってはならない。
テオレームは気持ちを切り替える。
帝級スキル雷帝を発動させて国ごと灰にして終わらせよう。
テオレームは雷帝を発動させようとするが…。
その時上空に転移の気配がした。
「どちら様でしょうか?私の国に何かご用でしょうか?」
現れたのは純白の天使。
その見た目は絶世の美女であるがそんな事はテオレームには関係ない。
たぶんコイツがレティス・ラファエルだろう。
まあ、下位魔王の名前など正直どうでもいい。
テオレームは言う。
「お前には何の恨みもないが、俺の主人の命令だからな。死ね」
テオレームは帝級スキル、雷帝のライトニングバーストを放つ。
リリスを倒した技だ。
下位魔王ごときにはオーバーキルなぐらいだ。
ライトニングバーストがレティスに直撃した。
さて、後はこの国を灰すればそれで終わりだ。
帰ってエリローズ様を待とう。
そう思いライトニングバーストを今度はレティス神国に対して撃とうとするが…
レティスは全くの無傷である。
下位魔王ごときが雷帝のライトニングバーストを耐えた?
「いきなり攻撃してくるなんてひどい方ですね。まあ、予想してたよりかなり力は上の様ですが、ラグア一派の侵略に対する備えはできています。あなたも魔王ラグアの配下ですか?いえ、相手に尋ねる時は自分から名乗らないと失礼ですね。お初にお目にかかります。私はこの国の主、レティス・ラファエルと申します」
13魔王内序列第11位、天使唯一の魔王、レティス・ラファエルはそう名乗ったのだった。




