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第105話来訪者2


エリスのところを脅迫気味に追い出された伝令はそのままライナーの部屋へ向かった。


コンコン


扉を叩くが返事がない。


コンコン


再び叩くが返事がない。


「ライナー様ーっ」


伝令の男が大声で呼ぶがやはり返事はない。

さて、これは困った。

伝令の男は考える。

先程、魔王ラグア様の配下に加えてほしいと来訪者があった。

ここまではいい。

本来ならわざわざラグア様に会わせるまでもない。

適当な部隊長クラスに話を持っていけばそれで済む。

だが、その相手がリンガイア王国の勇者とその仲間ならそうゆう訳にはいかない。


ちなみに余談だが、ラグア達が勇者一行の接近に気づかなかったのはまず1つ目にその勇者、シュドレ・イロードが今のところラグアに対する戦闘の意思がなかった為、王級スキルを解放していなかった事だ。

2つ目にこれが一番の理由だが、人神ゼギウスの神の力を使った気配遮断による為だろう。

まあ、ラグアの場合どちらか一方なら接近に気づけただろうが、2つ重なってしまえばさすがのラグアでも難しい。


伝令が途方に暮れていると、声をかける人物がいた。

若そうな見た目の女だ。

ライナー様の秘書の人だろうか?


「あっ、ライナー様なら今はお休みだそうで、フィリア様と一緒にリース森林国に行ってますよ?帰ってくるのはまだ数日先ですね」


「でしたら、セリー様は…」


「セリー様も魔王ゴルド・シーマ様と海底都市で引き継ぎと今後の打ち合わせの為いらっしゃいませんね」


「なら、フィリム様は…」


伝令は最後の望みをかけて言うが…


「あのお方はこの国のどこかにいるとは思いますが、城にはここ数日帰っていないみたいですね。ラグア様か最高幹部の方々ならどこにいるかわかると思いますが…」


それはつまり、もう一度エリス様のところへ行けと?

この人は自分に死ねと言うのだろうか?


「どうやらエリス様のところにも行けない事情があるみたいですね。良ければお客様のお相手はワタシがしましょうか?最高幹部ではありませんが、これでも一応幹部の一人なんですよ」


見ると女の胸に剣を象ったエンブレムが金色に輝いている。

金色のエンブレムは幹部の証。

そして剣のエンブレムはライナーの配下の証。

四天王ができる前からの話だが、ラグアと直接口が聞ける最高幹部達はそれぞれのイメージを象った紋章を持っている。

ライナーは剣、セリーは杖、フィリアは妖精、フィリムは精霊。

ちなみに最高幹部達は背中から無数の触手を伸ばした人型のエンブレムをつけている。

エリスも同様である。


余談だが、ラグアの配下には最高幹部以外にも普通に幹部はいる。

そのほとんどはセリーやライナーの同期、約16年前エリスが捕虜にした100人の兵達…


だが、目の前の女はそれにしては若すぎる。

見た目は10代のそれだ。

女はこちらの疑問をわかってか言う。


「ワタシ達ハーフエルフは人間に比べて老化が遅いのですよ。申し遅れました、ワタシは魔王ラグア様配下、四天王ライナー様の副官、エミリーと申します。以後お見知り置きを」


「失礼しましたぁっ」


伝令の男は再び体を90度に折り曲げる事になった。



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