after22神星帝争奪戦4
マリアは主であるリーゼ同様に観客の歓声が鳴り止むのを待つ…
そして…
「さて、まずは私から神星帝争奪戦の流れについて説明する…今回の神星帝争奪戦は皆の新たな統率者を決めると同時に、全宇宙をあげた祭典だということを理解してもらいたい。全ての日程が終了するまで、約1ヶ月という時間がかかるが、それも致し方ないことであると理解してほしい。その間の観客、選手諸君の衣食住はこちらで世話することを約束しよう」
観客達はマリアの話を黙って聞く。
「そして、これは余談だが、祭典という趣向もある以上、当然のことながら様々な演目を用意している。こちらも楽しんでくれれば幸いだ」
今度は観客達はざわめく…
「さて、私が長々と話していても仕方ないだろう。諸君、その場で跪け。全宇宙の絶対の支配者にして、我らが唯一神…永天、ラグア・エルライド・イグロシアル様が今日という日に…この神星帝争奪戦に対し祝辞を述べられるっ!!」
マリアの言葉と共に観客達…そして参加者達同様に、その場に跪く。
〜
さて、マリアのお膳立て…
明らかにやりすぎだが、まあ、指示したのは確実にリーゼだろう。
俺はそんなことを思いながら壇上に上がる…
「さあ、顔を上げろ」
俺は言い放った。
観客、そして参加者が一斉に顔を上げて俺へと視線を向ける…
「さて、ほとんどのヤツは俺を見るのははじめてか?改めて俺はラグア・エルライド・イグロシアルだ。かつての主…神帝ラピロアを下して全宇宙を手中に収めたのは、かれこれもう1500万年以上前のことだ…」
全員が俺の話を緊張した面持ちで聞く…
かれこれ表舞台に出るのは相当久しぶりだ。
最後に出たのは…
ラルファの戴冠式の時だからそれこそ500万年も前の話である。
まあ、あの時は三代目神星帝であるルーグが僅か半年で勝手に引退したツケで出ざるおえなかったのだが…
ここで俺は話題を変える。
「話は変わるが、ここ最近…巷では永天神話なる物語が流行っていると聞く。実話を元に俺の腹心であり、片腕であり、一番の配下でもあるエリスが手がけたものだが、皆に問おう。目にしたことはあるか?」
全宇宙の面々から歓声が上がる。
答えはほぼ全員が当然だと言わんばかりだ。
どうやらあの小っ恥ずかしい映画は全宇宙に知れ渡っているようだ。
まあ、さすがにそんなことは威厳に関わるから絶対に言わないが…
「さて…なら話は早い。あの物語に出てくる…まあ、全て実話なんだが、奴らは配下である前に、俺と共に一時代を築いた仲間であり、戦友であり、家族だ」
再び大歓声…
永天神話のおかげかイグロシアル上層部も畏怖と同時に今やとんでもない人気があるのだ。
観客、そして参加者のテンションが最高潮になったことを確認すると、俺は締めに入る。
「さて、参加者の諸君よ。俺からの命令は一つだ。ここまで上がってこい!!そこのお前だっ!!未来の神星帝よ!!俺と共に新しい時代の続きを築こうじゃねーか!!お前が新たな家族として俺の隣に立つのを俺は楽しみにしている。そして観客諸君!!その歴史的瞬間を目に焼き付けるといい!!悠久の時を生きてきた俺達でさえ、こんな瞬間は滅多に見られるもんじゃねーからな?瞬きなんかしてる暇ねーぞ?今ここに…永天、ラグア・エルライド・イグロシアルの名の元に神星帝争奪戦の開会を宣言するっ!!」
割れんばかりの大歓声の中、俺は壇上を降りる。
演説なんてするのはいつ以来だか忘れちまったが、まあとりあえずは及第点だろう。
「さすがパパ。かっこよくて完璧な演説だったよ」
俺達専用に用意されているイグロシアル上層部専用VIPルームに戻った俺にリーゼはそう言ったのだった。




