第1003話神帝達の宴
「…負けるわけねーだろ。てめえはあの世から…いや、地獄の特等席から見上げてやがれ。俺が全宇宙を獲るところをな?」
敵ではあったが、宿敵と呼べるその存在の最後に俺は敬意を払ってそう言った。
いろいろあったがアイツは敵同士だったが…
俺がそんなことを考えていた時だ。
「権能の力が増した?…どうやら権能持ちを倒すと大幅に強化されるみたいだな。てか、空気読めよ。今はそうゆうアレじゃねーだろ?」
俺は呟いた。
転生してから長い間、戦い続けた宿敵…もはや戦友と呼んでもいい存在をようやく倒したのに、どうも神帝の因子ってヤツは空気を読んではくれないようだ。
「…まだ空気の読めないヤツがいるな?静かに感傷にも浸ってられないってどうなんだよ?なあ、チェルシー?」
俺は振り向きもしないで背後からいきなり不意打ちをかましてきたチェルシーを触手の一撃で弾き飛ばすと言った。
「これはこれは…まあ、今は殿下と呼んだ方がいいか?改めて名乗っておこう…我はチェルシー…偉大なる陛下の腹心にして、プリミティブゴッドの頂点なり…」
俺に弾かれたことを利用して距離をとったチェルシーはそう名乗りをあげた。
「まさかお前一人で来るとはな?ルービスメゾル無しで今の俺に勝てるとでも思っているのか?」
「陛下は今ごろ若様のところだ…さらに殿下…お言葉だが、殿下はまだ若い…。我等からしてみれば赤子も同然だ…陛下の右腕と呼ばれた我の力…存分にその身に受けるがいい…」
真っ赤な髪…そして自信に満ち溢れた虹色の瞳を怪しく光らせながらチェルシーは言った。
ルービスメゾルはラピロアと殺り合っているのか…
だからラピロアが来ないんだろうが…
そこら辺はこいつに言われるまでもないか。
まあ…
先手必勝…
権能を使うまでもない。
それが俺の結論だ。
「神帝の絶対領域っ!!」
「甘い…」
俺の神帝の絶対領域が発動した瞬間、チェルシーはその場から一瞬で消え失せる。
高速で移動したのなら、今の俺が目で追えないはずはないから、おそらく何か別の方法で移動したのだろう。
俺は神帝の絶対領域を解除する…
チェルシーはそう遠くまでは逃げてはいない。
なら肉弾戦で追撃だ。
その時だ。
「甘いぞ?殿下?騙し討ちみたいな真似をしてすまぬが、これもまた戦いだ」
完全にチェルシーに気をとられていた俺の背後にもう一体のプリミティブゴッド…
たしかウドラハークとか言ったか?
が現れる…
同時にチェルシーも俺の正面から襲いかかる…
ちっ…さすがに対処しきれねー。
権能でぶっ潰すか。
俺が権能を発動させようとした時だ。
「甘いのはお前だよ?パパの後ろをとって何しようとしてるのかなー?パパにおんぶなんかリーゼもしてもらったことないんだよ?抱っこはあるけどねー?」
聞き慣れたその声と共にウドラハークの気配は真横にぶっ飛んだ。




