第950話白と青のグラデーション15
大きな動きもないまま、リーゼ達イグロシアルの精鋭達とアゼルメーテによる戦闘が繰り広げられる。
これまでの戦闘経過と言えばアゼルメーテがほんの僅かに神格エネルギーをすり減らしているが、そんなものは完全な誤差だ。
それでリーゼが勝つにはそれこそ何億年とは言わないが、数万年単位の時間を戦闘に注ぎ込むことになるだろう。
もっともそんな長期間の戦闘になることも、その間ジリ貧のアゼルメーテがなんの対策も打ってこないことはありえないから、そんな状況になることはないのだが…
だが、アゼルメーテはそんな消極的なリーゼの戦法にこう言わずにはいられなかった。
「貴様、勝つ気はないのか?」
と…
「あるに決まってるじゃん?それにその言葉はブーメランだよ?お前こそ見せてない力がわかってるだけでもわんさかあるよ?」
そう。
アゼルメーテは神玉の能力や領域纏いどころか、覚醒以外のアラウザルゴッドの能力やまともな概念すら見せていない。
もっともそれは覚醒と未来予知と天刃のトラップのコンビネーションを連発するリーゼもあまり変わらないが…
「出させてみろ…このままではこちらが少し不利か?」
「そうだね?さっき分体の方の戦況が動いたみたいで、なんか新しい妹が生まれたみたいだけど、どっちが勝ってもリーゼにアイツらの刃が届くことはない」
リゼル…ゴッズクローンと精神が融合してしまった自らの妹を名乗るものとミュラ達の戦いは先程はじまった。
正確に分析したわけではないからどちらが勝つとはなんとも言えないし、リーゼは正確に分析するつもりもないから端折るが、それはリーゼにとってどちらが勝っても問題はないからだ。
仮にリゼルが敗北したとしても、直接戦闘に参加していない指示待ちのこちらの戦力…
エリスとエリローズを除いた、イグロシアル最高戦力と準最高戦力の寄せ集めだけで十分に対処は可能だと踏んでいる。
唯一の懸念はミュンが持っているであろう力だが、それは大方予想がついている。
ここまでミュンにたどりつかれれば多少問題かも知れないが、それでも多少だし、それを使わずにここまでたどりつけるとも思えない。
どう転んでも自分達の優位は揺るがない。
リーゼはそう判断した。
「ふむ。ならば我もこのまま悠長なことをしているわけにはいかんか。天刃の概念か…はっきり言おう。お前の使い方はまだ甘い。見せてやる。概念融合、天刃」
アゼルメーテはそう言って天刃の概念融合を発動させる…




