第15話 開戦
コジロウの凶刃がレーガスを襲ったその瞬間、即座に反応したのはルイシャ、シャロ、アイリスの三人だった。
(アイリスはここに残ってみんなを守って!!)
(かしこまりました、お任せください)
ルイシャはアイリスに目配せをしてクラスメイトを守るよう伝えると、シャロと共に駆け出す。
そしてシャロにハンドサインで合図を送る。
(僕があいつの相手をする)
(わかった、私は先生の救助を)
時間にして一秒にも満たない間にルイシャたちは必要な情報を交わし合う。
これは日頃から戦闘時に使える合図を決めていたからできる芸当だ。今までは授業中に内緒のお喋りをすることにしか使ってなかったが、むしろ日頃からそうして使っていたためスムーズに使うことができた。
ルイシャ達が猛スピードで向かう中、レーガスには更なる危機が迫っていた。
なんとコジロウが今度はレーガスの首元を狙い小刀を突き出してきたのだ。
いくらルイシャでも死者を蘇らせることは出来ない。
「くそっ……!」
ルイシャは歯噛みする。
このままでは自分が辿りつくより早くコジロウの刃が届いてしまう。
もはやこれまで。
ルイシャとシャロがそう思った瞬間、思わぬところから助け舟が入る。
「中位魔盾!!」
レーガスの首元に現れる魔法の盾。
透き通った青色のその盾はコジロウの小刀を「ガキンッ!」と火花を散らしながら受け止める。
「なに……!?」
驚くコジロウ。
それもそのはず。その防御魔法を唱えたのは他ならぬレーガスだったからだ。
自分の体を斬られて即座に魔法を唱えれる者など冒険者でも中々いない。
それを一介の教職者が出来るなど普通ではない。
「貴様、何者だ?」
「私は普通の先生ですよ。だけど……私の生徒は普通じゃないですよ?」
そう言って脂汗を流しながらもレーガスはニヤリと笑う。
そして次の瞬間、コジロウを恐ろしい寒気が襲う。
戦場で何回も経験した感覚……殺気だ。
その恐ろしい殺気を放つ人物が物凄い速度で迫ってくる。
それに気づいたコジロウは小刀に力を入れ魔法の盾を割ろうとする。
コジロウの常人離れした腕力に耐えきれず、盾には亀裂が入る。
しかし、その盾はルイシャが来る時間を十分に稼いでくれた。
「後は……お願いします」
「はい、任せてください」
レーガスの願いに応えるかの如くルイシャは現れる。
そして耳元に手を当て、そこにぶら下がるピアスに魔力を込めて最強の武器を呼び起こす。
「竜王剣っ!!」
ルイシャの呼びかけに応じ黄金の刀身がルイシャの手に握られる。
そして放たれるコジロウ目掛け放たれる必殺の一撃。
その攻撃の恐ろしさを感じ取ったコジロウはレーガスへの攻撃を中断し、ルイシャの一撃を小刀で受け止めようとする。
ルイシャの剣が振り下ろされる前に小刀で防御することに成功するコジロウだが、そんな物で受け止め切れる竜王剣ではない。
ルイシャの一撃は小刀に当たるや一瞬で小刀をバキッ!! と粉々に砕く。
「なっ!!」
あまりの威力に驚き後ろに回避するコジロウ。
砕けた刀身が頬をかすめ、一筋の血が頬を流れ落ちる。
コジロウはその血を指で拭うと、身も凍るような冷たい目でルイシャを見やる。
「私の正体を看破したことといい、君は何者だい……?」
「僕はただの生徒ですよ。先生を傷つけられて怒っているただの生徒……です」
そう言ってルイシャは竜王剣の切っ先をコジロウに向ける。
コジロウは面倒くさいことになったと言わんばかりに「はあ」とため息をつく。
「ガキを指導するだけの簡単な仕事だと思っていたのですが……しょうがない。サクッと殺してとんずらするとしましょう」
そう言って一瞬で地面に刺していた身の丈ほどの長い刀の元に移動し、刀を抜くとルイシャにその剣先を向けるのだった。





