表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王と竜王に育てられた少年は学園生活を無双するようです(web版)  作者: 熊乃げん骨
第15章 少年と群王と無限牢獄

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

377/384

第10話 異律体

異律体いりつたい……それがレギオンの正体なんですか?」


 ルイシャが尋ねると、妖精王ティターニアが頷く。

 無限牢獄である程度の特訓を受けたルイシャは、レギオンの正体についてティターニアから聞いていた。


「左様。この世界には『りつ』、つまり『ルール』が存在する。物は上から下に落ち、水の中では息ができず、死んだ者は生き返らない。言われなくても誰もが本能的に理解している当たり前の常識、それが『律』だ」

「はい」

「しかし世界にはそんな『律』から逸脱したり独自の『律』が加えられた場所が存在する。人はそれを『異界』と呼ぶ」

「異界……」


 ルイシャはその単語を知っていた。

 かつて海賊のシンディと共に訪れたオアフル島、そしてここ無限牢獄も独自のルールが設定されている異界なのだ。


「ここまで言えば分かるだろう。異律体は独自の『律』を持った生き物だ。世界のルールから外れた異分子とでも言おうか……とても珍しく、そして厄介な存在だ」

「なるほど……だからレギオンはあんな意味が分からないことができたんですね」


 レギオンの能力は魔法でも気功術でもない、異常なものであった。レギオンがその異律体という存在であるのならば、あの能力にも納得できる。


 しかし一番大事なのはその能力が何由来なのではなく、どうやったら攻略できるかだ。


「ティターニアさん。異律体を倒す方法はあるんですか?」

「当然だ。歯に歯を、律には律を。奴が理の外にいるのなら、違う理の中に引きずり込んでしまえばいい」

「違う理の中に……? そんなことできるんですか?」


 今まで考えたことのない対処法を提示され、ルイシャは混乱する。

 ティターニアはそんな教え子に優しく分かりやすく説明する。


「律は上書きできる。例えば絶対に壊れないという律を持った異律体がいたとする。しかしその能力は普段の世界でしか発動しない。どこかの異界に連れ込んでしまえば、そやつの律は上書きされ、異界の律のみが適用される。人より場所の律の方が優先されるからな」

「なるほど。つまりレギオンをどこかの異界に連れ込めば、その能力を無効化できるわけですね」


 ルイシャの回答に、ティターニアは頷く。

 攻略法を知ることができたルイシャであったが、問題はまだあった。


「でも異界なんてそうそうありませんよね? 少なくとも王都の近くにはなかったし、レギオンをそこまで連れて行くことができるかな?」

「簡単なことだ、ないのであれば作ればいい」

「作る? なにをですか?」

「決まっている。『異界』をご主人様が作るのだ」

「えぇ!?」


 ティターニアの言葉にルイシャは驚く。

 異界を作るなんてこと、自分にできるとはとても思えなかった。


「そんなことできるんですか……?」

「結界術の秘技に『異空結界』というものが存在する。それは自分の心を具現化し新たな世界を作るもの。その世界にはその世界固有の『律』が存在し、中に入れられた者はその『律』に従わなければならない。つまり異空結界は人が生み出した人工の『異界』ということになる」

「なるほど、その結界にレギオンを入れられたら、あいつの能力を無力化できるということですね。でも異空結界って難しい魔法なんですよね? どうやって覚えるんですか?」

「異空結界は自分の心を具現化する技。会得するにはまず自分の心を百年は見つめ直さないといけないな」

「百年!? そんな時間ありませんよ!」


 いくらここでは時間がゆっくり流れるとはいえ、百年もいることはできない。

 せっかくつかんだ攻略の糸口が消えてしまい、ルイシャは焦る。


「案ずるな。異空結界は自分で生み出す以外にも習得方法がある」

「え、そうなんですか?」

「ああ。異界の中に百年以上いれば、その異界は自分の心に焼き付く。つまりその異界と同じ様なものを作ることができるのだ」

「でもそれも百年以上かかるじゃないですか! そんな時間ないんですよ!」

「今から習得するのであれば、な。しかしお前は既にその条件を達成しているではないか」

「それはどういう……あ」


 ルイシャは喋っている途中で、その言葉の意味に気がつく。


「気づいたか。ご主人様は既に無限牢獄で百年以上過ごしている。既にその心にはこの空間が焼き付いているのだ。後はそれを具現化する特訓をすればいい」

「僕の心に……無限牢獄が」


 ルイシャは自分の胸に手を当てる。

 かつてルイシャはここに閉じ込められ、脱出できなくなった。その時はここにいい印象など覚えていなかった。

 しかしここにはもう思い出がたくさんある。彼が一番長く過ごしたのはこの空間であり、もはや故郷と呼んでも過言ではない場所になっていた。


 それと同じものが自分にも宿っていると考えると、なんだか少し、嬉しい気持ちになった。


「いくら心に焼き付いているとはいえ、それを具現化するのは容易ではない。残りの時間全て使って叩き込むぞ」

「はい! よろしくお願いします!」


 こうしてルイシャは勇者オーガの作った無限牢獄の中で、自分だけの無限牢獄を生み出す特訓をするのだった。


◇ ◇ ◇


「はあああああ!!」


 ルイシャの渾身の蹴りがレギオンの腹部に突き刺さる。

 レギオンは「うぷっ!?」と体をくの字に曲げながら吹き飛び地面を転がる。口からは血が流れ、服も汚れている。


「やはりあなたは異律体……厄介な存在ですが、この無限牢獄の中ではその能力は上書きされます」


 ルイシャは冷静に言い放つ。

 無限牢獄の主な律は『時間の流れを遅くする』という戦闘には役に立たない律だ。

 しかしその律はレギオンの異常な能力を上書きし、無効化してくれる。おかげでルイシャは今、レギオンと同じステージに立つことができた。


「ふふ……くくっ。まさか、異空結界こんなものまで使えるようになっているとは。流石に予想外ですよ」

「貴方の能力はもう無効化されました。大人しく観念して下さい」


 ルイシャはそう言うが、レギオンは諦めたようには見えない。

 まだなにかあるのかとルイシャは警戒する。


「確かに、ここでは私の能力『生贄の山羊(スケープゴート)』は使えないみたいです。ですが私がたくさんいるのは、私が異律体だからではありません。私は私であるゆえに、私なのです」


 レギオンの背後から、別のレギオンが現れる。

 異空結界の中だというのに、レギオンの数はどんどん増えていく。予想外の事態にルイシャは驚愕する。


「これはいったい……」

「少し昔話をしましょう。かつてこの大陸にはカールシープという羊がいました。くるくると巻いた角が特徴的な、可愛らしい羊です」


 突然レギオンは昔話を始める。

 ルイシャは困惑しながらもその話に耳を傾ける。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王と竜王に育てられた少年は学園生活を無双するようです1~3巻好評発売中!!
ltexgbljg9eui4v6wlg70ddlogy_u7a_8u_ci_2y


まりむそ公式サイト
書籍版「魔王と竜王に育てられた少年は学園生活を無双するようです 1」
著者:熊乃げん骨
レーベル:オーバーラップ文庫
 発売日:2020年12月25日
ISBN: 978-4-86554-800-6
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ