第9話 奇跡の生還
「馬鹿な、驚異的な生命力のアルテミシアンデスワームが一撃で……!?」
アルテミシアンデスワームは頭部を切断されてもすぐに再生できるほど、生命力が高い。
それを一撃で倒してしまうなんてありえない。レギオンは想像以上の力を手に入れて戻ってきたルイシャを警戒する。
「……やはり君は凄まじいな。これを倒してしまうなんて」
「それでこそ小僧だ! よく帰ってきたな!」
「大将! ご無事でしたか!」
ルイシャのもとに駆け寄ってきたのはコジロウとバット、それとヴォルフであった。
三人ともルイシャの生存を信じていたが、やはり目で確認できると嬉しい。
「バットさんにコジロウさん! それにヴォルフも! みんなが食い止めててくれたんですね、ありがとうございます」
「この程度、ルイシャ殿が拙者にしてくれた恩に比べたら些細なことだ。して……アレはどうする? このモンスターを倒せたのはいいが、一番厄介なのは奴だ」
コジロウはレギオンを見る。
剣王のコジロウをしてもレギオンを倒す方法は検討もつかなかった。バットもそれは同じで、このまま戦っても勝機は薄いと思っていた。
しかしルイシャただ一人は違うようで、
「任せてください。あいつは僕が倒します」
そう力強く言い放つ。
それを聞いた三人はお互いを見合わせ頷くと、少年に勝負を託すことに決める。
「では任せた。王都は拙者たちが守るから安心して戦ってくれ」
「おうよ。ガレオン船に乗った気で戦ってこい!」
「大将、ご武運を!」
三人の強者に背中を押され、ルイシャはレギオンの前に立つ。
一日ぶりに向かい合う両者。その視線は交差し火花を散らす。
「心臓を破壊して戻ってきた人は初めてです。流石に首を取れば死んでくれますよね?」
「そうですね。そこまでされたら流石に死ぬと思います」
「ならば良かったです……では、もう一度死んで下さい!」
数百人のレギオンが現れ、一斉にルイシャに襲いかかる。
拳、蹴り、頭突き、肘打ち、あらゆる暴力がルイシャに降り注ぐが、ルイシャは避けることもせずそれらを全て体で受け止める。
攻撃を受けてもルイシャは平然な顔をしている。
むしろ攻撃をしかけたレギオンが痛そうに顔を歪める。
「硬い……っ!?」
「鬼の秘術、鬼鉄肌。貴方の攻撃はもう効きません……!」
ルイシャは硬質化した拳を振り回し、レギオンの群れを一斉に消し飛ばす。
すぐに第二波が襲ってくるが、それにも冷静に対処する。
「妖精魔法、妖精の吐息」
小さく呟いた瞬間、ルイシャを囲むように突風が巻き起こり、レギオンたちが宙に浮く。必死に抵抗するレギオンたちだが、まるでそれを嘲笑うかのように風は彼らを弄ぶ。
「更に……妖精魔法、灼熱の花冠!」
ルイシャが上に掲げると、巨大な炎の嵐が巻き起こり、レギオンたちを一瞬にして燃やし尽くす。
風と炎が乱れ舞うその風景は、とても幻想的であり、兵たちはその光景に見入ってしまう。そしてそれを見ていたシャロとアイリスは、その魔法の異様さに驚いていた。
「なにあの魔法、普通のと全然違う」
「魔力を練っていない……? いえ、違いますね、そもそも魔力を消費していません。あれは本当に魔法なのでしょうか?」
謎の魔法を操るルイシャ。
しかしその魔法を持ってしてもレギオンは倒すことができなかった。再び元気な姿をしたレギオンが現れ、ルイシャの前に立つ。
「面白い技を使いますが……残念。それでは私を倒すことはできません」
「はい、これで貴方を倒せないことは分かっています」
「……ん?」
ルイシャは両の手を合わせると、深く集中する。
すると凄まじい魔力が彼の体から吹き上がり、周囲の空間を満たしていく。
「この魔法はまさか……!」
その膨大な魔力から、レギオンはルイシャがなにをするかを察しそれを阻止しようと動き出す。
しかし彼がルイシャにたどり着くより先に、その魔法は完成する。
「――――まさかこの魔法を僕が使うことになるとは思いませんでした」
その魔法は、ルイシャが初めて経験したものといっても過言ではないもの。
ある意味彼ともっとも馴染みが深いと言って良い魔法。
その魔法こそが、レギオンを倒すことができる唯一の手段であった。
「異空結界、『無限牢獄』」
その名前を口にした瞬間、空間に満ちていた魔力が新しい世界を作り出す。
色に溢れていた景色が一変し、どこまでも白のみの世界が構築される。
ルイシャが二度捕らえられていたその世界には、ルイシャがとレギオンの二人だけが閉じ込められた。
断絶された世界の中で、ルイシャはレギオンに近づくと、その頬を思い切り殴り飛ばす。
「がっ!?」
殴られたレギオンは数度地面を転がった後、なんとか立ち上がる。
その口からは血が流れ、痛そうに顔を歪めている。
今までであればダメージを受けたらすぐに消え去っていたが、いつまでもその個体はそこにいる。おまけに今までより痛みも感じているように見える。
それを確認したルイシャは、無限牢獄がちゃんと相手の能力を封じ込めていることを確信する。
「覚悟しろレギオン。お前はここで……僕が倒す!」
「この、ガキが……っ!!」





